マガジンのカバー画像

論文の要約

24
アート系の論文の要約、学術的意義を自分でまとめています。
運営しているクリエイター

#建築

【要約】ハイリンヒ・リュッツエラー(川上実訳)「装飾ーヨーロッパ美術とイスラム美術の比較ー」『芸術と装飾』(山本正男監修)pp6-19(1986)

【要約】ハイリンヒ・リュッツエラー(川上実訳)「装飾ーヨーロッパ美術とイスラム美術の比較ー」『芸術と装飾』(山本正男監修)pp6-19(1986)

【要約】

本稿ではヨーロッパとイスラムにおける聖堂などの建築に施された装飾を分析することによって、西洋や中東といった「装飾」の捉え方の違いを明らかにすることを目的としている。ヨーロッパにおいては「装飾」とは、ある物に対して付加的なものであるということが一般的な理解である。
しかしイスラム文様などにみられる装飾は、西洋的な概念に囚われず装飾が建築を覆い隠すように支配している。このような装飾に対する

もっとみる

【要約と学術的意義】アドルフ・ロース(伊藤哲夫訳)『装飾と犯罪―建築・文化論集―』

(1)要約
アドルフ・ロース(1870-1933)の『装飾と犯罪』を中心に、素材と技術、それに伴った目的を重要視する建築論をはじめ当時のウィーンやヨーロッパの街並みや建築文化の傾向、また彼の交友関係である芸術家たちとの交流の文章やエッセイが23項収められている。
ロースは『装飾と犯罪』において、装飾表現について強い批判を行う。例えば、パプア人における顔面の刺青は自分を飾りたいという欲求の表現である

もっとみる

【要約と学術的意義】阿部美由起「ゴーフリット・ゼンパーの素材概念」『美學』第51巻4号(204号)2001年3月31日刊行

(1)要約
本稿では、19世紀の建築家ゴーフリット・ゼンパー(1803-1879)の素材概念についての考察を行なっている。ゼンパーの建築思想において、素材は非常に重要な要素として位置を占めていている。例えば、「目的に応じた素材と技術」によってできる建築や芸術が彼にとって理想のものとしているのだ。

このゼンパーの素材を重要視する視点は、美術史家アロイス・リーグルらによって「唯物論的」であると言われ

もっとみる

【要約と学術的意義】浅井麻帆「1890年代後半のウィーン分離派とゴーフリット・ゼンパー」

(1)要約

本稿では、1890年後半に建築家オットー・ヴァーグナーをはじめとしたウィーン分離派が、1850−70年代に活躍した建築家ゴーフリット・ゼンパーからどのように影響を受けていたか考察するものである。
筆者は、ヴァーグナーの名言「建築の唯一の主人は必要(芸術は必要のみに従う)」は、もともゼンパーからの発言だったということを指摘し、ヴァーグナが所属したグループの分離派がどのように影響を受けて

もっとみる