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読み切り短編小説集

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原稿用紙10枚以内で完結するあかいくつのオリジナル短編小説をまとめました。ジャンルは日常の物語やSF(少しだけ不思議な)物語が中心です。
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#恋愛

短編小説「カッフェー」

短編小説「カッフェー」

 恋人の沙織との喧嘩ほど精神と体力を減らすことはないな。同棲するあのワンルームから逃げるようにこのカフェに入店して1時間ほど経つのに、俺はまだイライラしている。
 イライラしている時は関係ないことにも苛立ってしまう。例えば、俺の席から通路を挟んで向かいの席にいる女子2人。歳は20代後半といったところか、チーズケーキを完食しておいて「私、ダイエットするって決めたの」じゃねぇよ。
 そして後ろの席の男

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短編小説「バスが来るまで」

短編小説「バスが来るまで」

 日中降り続いていた雪は夜になると止み、カラフルだった街を白くした。すっかり夜が馴染んだ街では、人々は電気も消していた。
 白くなった住宅街の道を幹太と美咲は歩く。二人の他には誰も見かけない。
 雪で道端は埋められてしまい、二人は道の真ん中を歩いた。会話もなく、ただ白い息だけが溶けていく。車も通らない、人影も無い。
 美咲は大きめのリュックを背負い、両手を上着のポケットに入れて歩く。幹太は手に持っ

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短編小説「こびりつく焦げ」

短編小説「こびりつく焦げ」

 秋は意外と寒かった。
日曜日の朝、世間の人々が活動し始めるのを少し遅らせる日に、三上優子は自分に覆い被さる布団を剥がし、ベッドから出ようとしたがすぐさま寒さに負けた。

ベッドから出たくない理由は他にもあった。

突然、ピンポーンと大音量が鳴り響いた。
スマホのアラームだ。優子はスマホの画面を確認し、アラームを消した。時刻は9時47分。
なぜ中途半端な時刻にアラームをセッ

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短編小説「あわない」

短編小説「あわない」

「大事な話がある。駅の地下改札前に来て」
 1ヶ月ぶりにナツキからLINEが届いた。
 もう分かっている。そういうことだ。

 20歳の冬、少し風邪気味だったがナツキからのメッセージを無視するわけにはいかず、俺は暖か過ぎる格好で駅へ向かった。

 ナツキとは3ヶ月前に付き合った。大学のサークルで出会い、ナツキから告白してくれた。ナツキと友達から恋人になるのに躊躇いは無かった。
 付き合ってから、上

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短編小説「君の知らない物語」

短編小説「君の知らない物語」

 俺たちは今日で高校1年生を終え、明日から高校2年生に進学する。そんな記念の日にクラスの男子15名で集まって打ち上げをすることとなった。
 実家が定食屋を営んでいる友達に会場を用意してもらい、定休日の夕方から開催することとなった。
 スーパーで焼きそばや鍋などに必要な食材を揃え、ジュースをたくさん買い込み、1年間の思い出を語り合う打ち上げを行った。
 県内全域から集まった同級生、入学当初はぎこちな

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