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あかいくつ
2024年3月11日 14:32
恋人の沙織との喧嘩ほど精神と体力を減らすことはないな。同棲するあのワンルームから逃げるようにこのカフェに入店して1時間ほど経つのに、俺はまだイライラしている。 イライラしている時は関係ないことにも苛立ってしまう。例えば、俺の席から通路を挟んで向かいの席にいる女子2人。歳は20代後半といったところか、チーズケーキを完食しておいて「私、ダイエットするって決めたの」じゃねぇよ。 そして後ろの席の男
2024年3月11日 14:18
日中降り続いていた雪は夜になると止み、カラフルだった街を白くした。すっかり夜が馴染んだ街では、人々は電気も消していた。 白くなった住宅街の道を幹太と美咲は歩く。二人の他には誰も見かけない。 雪で道端は埋められてしまい、二人は道の真ん中を歩いた。会話もなく、ただ白い息だけが溶けていく。車も通らない、人影も無い。 美咲は大きめのリュックを背負い、両手を上着のポケットに入れて歩く。幹太は手に持っ
2024年3月11日 13:00
秋は意外と寒かった。 日曜日の朝、世間の人々が活動し始めるのを少し遅らせる日に、三上優子は自分に覆い被さる布団を剥がし、ベッドから出ようとしたがすぐさま寒さに負けた。 ベッドから出たくない理由は他にもあった。 突然、ピンポーンと大音量が鳴り響いた。 スマホのアラームだ。優子はスマホの画面を確認し、アラームを消した。時刻は9時47分。 なぜ中途半端な時刻にアラームをセッ
2024年3月9日 18:31
「大事な話がある。駅の地下改札前に来て」 1ヶ月ぶりにナツキからLINEが届いた。 もう分かっている。そういうことだ。 20歳の冬、少し風邪気味だったがナツキからのメッセージを無視するわけにはいかず、俺は暖か過ぎる格好で駅へ向かった。 ナツキとは3ヶ月前に付き合った。大学のサークルで出会い、ナツキから告白してくれた。ナツキと友達から恋人になるのに躊躇いは無かった。 付き合ってから、上
2024年3月9日 18:21
俺たちは今日で高校1年生を終え、明日から高校2年生に進学する。そんな記念の日にクラスの男子15名で集まって打ち上げをすることとなった。 実家が定食屋を営んでいる友達に会場を用意してもらい、定休日の夕方から開催することとなった。 スーパーで焼きそばや鍋などに必要な食材を揃え、ジュースをたくさん買い込み、1年間の思い出を語り合う打ち上げを行った。 県内全域から集まった同級生、入学当初はぎこちな