そこまでして言い換える?ニュース英訳者を悩ませる“Redundant!” --でも「台湾」は例外
とにかく繰り返しを避ける 英語の記事
英語は、とにかく、"redundant"がみっともないらしい。redundant(リダンダント)、つまり同じ言葉の繰り返しを、ものすごく嫌うのだ。
理屈でそれはわかっている。
しかし、「そこまで無理して言い換えるかー」というほどなのだ。どうも日本人が思う以上に、繰り返しは稚拙で、美しくないもののようだ。
日本語のニュース原稿は、かなり繰り返しがある。例えば・・・
と、何度も「バイデン大統領」を繰り返してもおかしくはない。
しかし、英語の記事となると・・・例えば・・・
US President Joe Bidenといったん言ったら、Biden said... 次は、He stressed..その次は、The US president emphasized...で、次は、えーっもうない、となっても、前の表現とは変える。またBidenでもいい。そしてその次は・・・と、とにかく同じ言葉の繰り返しを避ける。
これはまだ楽な方だ。
ニュースのキーワードで、何回もその言葉を使わねばならず、言い換えが難しくても、私たち日本人が書いた原稿をチェックをする英語ネイティブは、かなり無理をしてでも、言い換えようとする。
redundantを避けるためのエネルギーはものすごいものだと、いつもびっくりする。
内容の繰り返しもNG!
ニュース記事の内容も、英語はとにかく繰り返しを避ける。
テレビで言うならば、アナウンサーがスタジオで読んで映像に入る前の部分を「リード(lead)」と言うが、この「リード」は日本語では、例えば・・・
そして、その後、ニュースの本文に入ると・・・
などと続く。
つまり、「リード」とは、”本文の内容の大事なところをまとめたもの”で、“こういうニュースですよ”と最初に紹介する意味があるものだ。
しかし、英語では、「リード」で言ったことを、そのまま、もう一度本文で書くのはNG。これも、redundantだというのだ。
英語にすると一文で終わっちゃう!?
そうなると、上記の原稿を英訳すると・・・
・・・と、なってしまうのだ(笑)
日本語ではたくさん書いてあっても、英語で、繰り返しちゃいけない、となると、実は日本語原稿の中身があまりないことに気づき、書くことがなくなってしまう、ということも、しばしばだ。
センシティブな「台湾」は要注意!
このように、常にredundantを避けようと言い換えをしているのだが、要注意なものもある。
その一つが、台湾関連だ。
台湾関連の原稿も、ネイティブチェックでは、放っておくと、どんどんredundantを避けようと言い換えがされていってしまう。
①Taiwan→②the territory→③the island...
ちょっと待った!
確かに「台湾」は、国連でも国としては認められていない。
しかし、中国と台湾の話をしている時などに、台湾を、“the island"、つまり、“ひとつの島”扱いするのは、外交的な原則や、台湾の国際的地位への配慮などということだけでなく、人として、ちょっとあんまりでは、と思ってしまう。
それは、私が台湾の友人がいるから、とかそんな次元の問題ではない。
また、territoryも、the countryとは言えないので、間違えではないかもしれないが、特に中国と台湾の関係のニュースの中では、「中国の領土(territory)」とこちらがわざわざ言ってるように見えなくもない。
「台湾」は“redundant禁止“の例外に!
さまざまな矛盾が詰まった台湾問題。
そんなこんなで、台湾については例外に。
英語の記事でも、Taiwan, Taiwan, Taiwan's, ... of Taiwan,...などと、redundantに繰り返してもよいことにしたのだった。
英語としての“気持ち悪さ“より、優先すべきものがある時は、ある。
それにしても台湾を巡る問題、そして用語も、あまりにも複雑怪奇だ・・・
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AJ 😄
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