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戦争の今、「ひまわり」をもう一度

♩Lalala-la、la-lala- ・・・昨日から、頭の中でヘンリー・マンシーニのあの哀しくも美しいピアノとオーケストラのメロディーが流れ続けて止まらない。

1970年公開の名作映画「ひまわり」を、Amazon Primeで観た。

武装したロシア兵に抗議した女性


ロシアによるウクライナ侵攻以来、ウクライナの国花がひまわりであることは誰もがすっかり知るようになった。そして、ひまわりと言えば、侵攻開始当初ニュースで流れた以下の映像が衝撃的だった。

ある女性がロシア兵に近づき、力強く言う。「あなたたち、何しに来たの?ここで戦死したら、その上にひまわりの花が咲くように、この種をポケットに入れなさい」と。

当初この動画を見た人たちの中には、女性の勇気に驚き、ひまわりはウクライナの抵抗のシンボルだと思ったものの、女性のこの言葉の意味をすぐに理解しなかった人も多かったと思う。私もそのひとりだった。

あの、ひまわり畑がある場所


この場所は、キエフから南に約500kmの南部ヘルソン州。
まさに、映画「ひまわり」のひまわり畑が撮影されたとされる場所だったのだ。

そして、映画では、当時はソ連領だったウクライナの人たちが、出征後行方不明の夫を探しに来た、ソフィア・ローレン演じる主人公のジョバンナに、この場所はイタリア軍とソ連軍の激戦の地で、ひまわり畑の下には戦死した兵士たちが眠っていると言う。今回の女性の言葉は、まさにこれと関連していた。

「ひまわり」上映の広がり


そして今、日本各地で、この映画「ひまわり」を上映する動きが広がっているというニュースが立て続けにあった。

私自身は、確か学生の時に「名作とされる洋画は観とかないとな」程度の軽い動機で観て、恋愛映画として面白かった、というぐらいの認識だった。しかし、今この機会、やはりもう一度ちゃんと観てみたいと、ネットで鑑賞したのだった。


戦争と愛


皆さんもご覧になっただろうか。

映画自体は今の戦争と直接関係はなく、(ロケ地が実は)ウクライナ、ひまわり、そして戦争によって翻弄される普通の人々の愛の悲劇、という要素によって、今再注目されていると思うが、この映画を無理に今の戦争と結びつけて感傷的になる必要もないと思った。

なぜなら、とにかく一本の映画として、とても引き込まれたから。理屈を超えてとても切なくなった。ウクライナでも、中国大陸でもどこでもいい。現在でも、第何次大戦でも、何でもいい。人類の歴史は、戦争が起きるたびに、同じようなことが起き続け、これからも起き続けるのだろうと思うと、たまらなくなった。

ストーリーについて詳細に語らないが、快活で強そうで、キツい性格にすら見えるものの、純粋に一途に男性を愛したジョバンナ。夫との最後の出会いの前に、鏡の前に立ち、かつてデートでつけていたイヤリングをつけ、身だしなみを整えるシーンが見ていてせつなすぎた。

ストーリーとは関係なく、気になったのは・・・


少し脱線するが、話の内容とは関係なく気になった点もいくつかあった。

まず、この映画の公開は1970年。冷戦中だが、緊張が少し緩和した時だろうか。旧ソ連が撮影に協力したとの説明だった。

しかし、映像をよく見ると、共産主義国の風景を西側と対比して描こうとしているようにみえるものの、モスクワの街が(行ったことはないので言う資格はないが)やたら先進的で、道ゆく人もみな美しく着飾っていて、ジョバンナが探し当てた夫が暮らしていた家も、日本人が昔憧れたアメリカの家のように広く美しく、その後引っ越したモスクワ近郊のアパートのなんとモダンなこと・・・

田舎の家の描写では、道路が未舗装でぬかるんでいたりするものの、やたら部屋の中のセットが美しい。違和感を感じまくったが、これも西側へのロケ地提供、撮影協力の条件だったのかと、勝手に想像した。いや、実はこんな暮らしだったのだろうか。当時のソ連の生活をご存じの方がいたら、ぜひ聞いてみたい。

その他には、極寒のロシアの吹雪の中での戦闘シーンでは、画面の背後に、ずっと長い時間、赤い色の大きな旗が画面いっぱいに広がってたなびくような演出になっていた。共産主義国ソ連を強調したものだったのだと思うが、戦争における人間の愛のテーマ、というにはあまりに政治的な感じがして、どこか違和感を感じたのだが・・・変に画面を加工せず、純粋に映像からメッセージを感じてもらうようにすることは難しいと、あらためて思った。

北海道にて 撮影 AJ

テーマ曲の力


色々書いたが、一言。
とても心に残った映画だった。
そして、ヘンリー・マンシーニのあの曲も
大きな役割を果たしていると思った。
音楽の力は、やはり、すごい。

ちなみに、どうでもよい話だが、子供のころ電子オルガンで、この「ひまわり」のテーマを弾いたのを思い出した。その時は「ひまわりという名前なのに、なんか寂しい曲だなあ」程度の印象。子供ながらに、寂しそうな感じを出そうと一生懸命弾いた気がするが、この曲の良さや、映画のテーマなんて、当時の自分にはわかるはずもなかった。分かっていたら気持ちがわるいし(笑)

そして、今でも、戦争って、人間の愛って・・・よく分からなくなってくる。そして世界中みんなよく分からないから、何度も何度も同じ過ちを繰り返すのかもしれない、と少し思った。

映画「ひまわり」。

別に今のウクライナと関連付けなくても、
戦争と、それに翻弄される人間の愛情について
考えさせられる、心に残る作品だった。

まだの方は、一度、
観た方も、今もう一度ご覧になってみては
いかがでしょうか。

観終わった後、あのヘンリー・マンシーニのテーマ曲をしばらく口ずさむかも。


(注:表紙の写真は、北海道 撮影AJ)

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今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ😀

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