シズマズ先生制作秘話【#つくるのはたのしい】

先日、『シズマズ先生はしずまない』という掌編小説を書きました。
タイトルにあるように、その制作秘話(といっても秘話というほどの話はない)を語ってみようと思います。

頑張って書きましたので、未読の方は一度どうぞ。3500字くらいです。

こちらは、ポプラ社主催のコンテスト「#こんな学校あったらいいな」の参加のために書いたものです。普段、私は「ショートショート」とうたって作品を書くことが多いのですけど、オチらしいオチがなく、長さも比較的長いものに関しては「掌編小説」と書いた方がしっくりくるので、そちらを使っています。

そんなこの作品ですが、noteで「#つくるのはたのしい」というタグが最近でき、制作秘話を語るという形が流行っていたので、私ものっかってみたわけです。

完成までを大まかな流れでいうとこんな感じでした。

①募集要項をなんとなく読んで、イメージを膨らませる。(7月半ばから)

②きちんと使えるネタを決める。(8月入ったくらい)

③ひととおり形にしてみる。(8月8日とか)

④募集要項を再読して悩む。(8月9日)

⑤ひととおり形にするPart2。(8月13日)

⑥友人たちに読んでほしいって頼む。(8月13日)

⑦ダメ出しと修正の山。(8月14日)

⑧何度も読み返して完成。アップする。(8月15日)

⑨気が付いたときにはこっそり直す。(8月31日まで)

最初から募集要項はちゃんと読みましょう、とか突っ込みどころの多い形になっています。今回、いつもと一番違ったのは、出す前に人に読んでもらったことです。
後程、詳しく書きますが、イツメンのみんな(あきらとさんるみ姉さんこげちゃ丸さんあらしろひなこさん)に事前に読んでもらったわけです。人に読んでもらうなんて当たり前でしょ……とか言わないでください。半端物の私なんかが途中のものを出すのは、やはり恥ずかしいものです。

でも、この作品に関しては、ネタを思いついた段階で、ある程度恰好のついたものになりそうだな、と思えたこと。同時進行しているコンテスト、「#また乾杯しよう」が、やたらと良作揃いで、プレッシャーを感じていたこと。などがあって、私も、もうひと段階上のものを作りたい。と、そう思ったのです。


さて。では順番に行きましょう。

①募集要項をなんとなく読んで、イメージを膨らませる。(7月半ばから)

コンテストの存在は、公式から発表があったその日にすぐ確認しました。

楽しそうだなと思ったので、何か書いて参加しよう、ということは心に決めるわけです。

そして、このツイートから何となく伝わるように、実は私は、最初「ミステリ」で書こうと考えていました。知っている人は知っていると思いますが、私の作ったキャラクターに「奥平進次郎」というおとぼけ探偵がいまして、このキャラクターと小学生で、謎解きがさせたかったのです。

夏だし、氷を使って、溶けてしまったためになくなった……というトリックでいきたい。くらいまでは考えたんですが、いかんせんうまくいかない。しっかりしたトリックまではなくとも、恰好はつけたい。でも凶器が氷でスプラッタじゃ、さすがに小学生向けには書きづらい(少年探偵団がありなら、ありかもしれませんけど)。

そんな感じで思い悩む日が続いていました。


②きちんと使えるネタを決める。(8月入ったくらい)

――そのまま悩むこと2週間。

結局、形になったアイディアは出てこず、代わりにコロッと出てきたのが、この「シズマズ先生」というアイディアでした。最初に出てきたのは、最後のセリフ。「シズマズ先生だから、しずまないのさ」これです。

先生にあだ名をつけるのは小学校ではよくあること。プールを絡めることができそうだから夏っぽい。ついでに「シズム先生」のくだりなんかも思いつく。恋愛を絡めて、最後はシズマズ先生を見直して終わる形でどうだろう。これならいける。


……と思って、だだっと書いたのがこちらです。

③ひととおり形にしてみる。(8月8日とか)

見ればわかりますが、これは1200字程度。
最初はかなり短かったのです。

あと大きな違いは、相手の先生の名前が、まだヤマダ先生になっています。結局はタナカ先生になりますが、これは「シズマズ」と「ヤマダ」って濁点多くない? と思ったせい。ヒロセ先生っていうのも考えましたが、「せ」が2回ならぶんですよね。

一度はこのまま出そうかとも思っていました。オチも小ネタも最終形とほぼ同じですからね。

でも、待てよと。慌てるこじきはなんとやらだぞ……と、思ってそこで募集要項をまた読みかえすわけです。


④募集要項を再読して悩む。(8月9日)

そんな感じでここにきて、やっとちゃんと募集要項を読む私。

「読者は小学生が対象」であること。
「4000文字以内を目安に」投稿してほしい。

改めて読むと、この2つの部分が特に引っ掛かる。

小学生を読者としていることは、最初に読んだときにもなんとなく意識はしていました。では、完成したものは、きちんと小学生向けになっているのだろうか? 漢字や表現は適切だろうか。

そして、ふたつめ。『4000文字以内を目安に』……というのはどうとらえたらよいのだろうか。入賞作品は「挿絵つきの文集にする」とあります。大賞1本、編集部賞3~5本、佳作は本数未定ですが、ひとつの形になるイメージがもともとあるのであれば、あまり短かすぎない方が良いだろう、という結論に私はたどり着くわけです。

4000文字とは言わなくても3000文字くらいのものにしたい。
すると、まだ2000字増やさないといけない。

これは何もなしには形にできないぞ。
そう思って私は柄にもなくプロットを書き始めます。


⑤ひととおり形にするPart2。(8月13日)

普段、私はほとんどプロットを書きません。

そんなに長いものを書いていないからですね。でも、今回は1000字で書いたものを3000字にしなければならない。一度完成させたものを伸ばすのであれば、さすがに何かないと形にできない。そんなわけで、いい加減なものですがプロットを書きました。

この前まで、『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』を読んでいたおかげで、3幕構成です。
簡単に説明すると、起承転結という4つに分ける形ではなく、間に「プロップポイント(転換点)」を2つ挟んで、起承結とでもいうべき3つの部分にわける方法です。

だいたい文字数をイメージして、このくらいでいけば3000字に届く。とあたりをつけてから書き始めました。

この段階で、最初の1000字と大きく違うのは、中間部分です。主人公「僕」がシズマズ先生をくっつけようと決意するのが、第1プロップポイント。その後、それを行動に移し苦悩する部分が、まるっと加えられた形になります。


そうやってあたりをつけて、四苦八苦。
文字数的には結構うまくいって、一通り形になりました。

それがこれです。

第2稿です。形としては、かなり完成形に近くなりましたが、まだ「ヤマダ先生」ですし、【作戦1】は「落語作戦」でした。


⑥友人たちに読んでほしいって頼む。(8月13日)

そして、ここで悩んだ挙句、やはり誰かに読んでほしいという思いがつのるわけです。

上記したように、現在同時進行中のコンテスト、「#また乾杯しよう」が、あまりにも良作揃いで、いい加減なものを出すと本当にただ出しただけになってしまう。もちろん何も思い浮かばなくて、とりあえず出しておけっというなら別ですが、今回は結構いい形になりそうなネタがある。

これは大事にいきたいと、皆様に声をかけた次第です。
持つべきものは友と言いますが、イツメンのみんな(あきらとさんるみ姉さんこげちゃ丸さんあらしろひなこさん)、いつも本当にありがとうございます。

今回は本当に助けられました。指摘として、ここがダメと言われるだけじゃなくても、話しているうちに自分自身で気がつくことも沢山ありました。壁打ちとはよく言ったものです。


⑦ダメ出しと修正の山。(8月14日)

というわけで、私がもらった指摘事項をあげますね。はいドーン。

・漢字の開き加減が途中で変わっている。
・表現が大人っぽすぎる部分がある。
・最初、シズマズ先生が女性だと思って戸惑った。
・タクヤが一か所タクマになっている。
・「部の悪さ」「さっする」「さいわい~」などの表現が子供っぽくない。
・小学校なら「歴史」の授業ではなく「社会」。
・シズマス先生がヤマダ先生を好きなのが周知の事実かどうか。
・授業数が少ない→現在の話?コロナは?→プールやってるけどどうなの?
・主人公の名前があった方がよい。
・落語作戦がわかりにくい。会話わかりやすく。
・シズマズ先生の本名がシマズというのはどうだろう。
・シズマズ先生の年齢があった方が良い。
・先生同士のやりとりも表情や、子供らしい比喩を使うとよいかも。
・ヤマダ先生の豹変を主人公が最初から察しない方が、読者に寄り添っていて良いかも。
・プールサイドの心境はもっとハラハラさせる。
・おぼれることは命にかかわるので、深刻さが伝わるように。
・タクヤを助けた「お礼」というのは変。
・「シズマズ」は発音しづらいので変えたほうがいい。
・小学校は普通給食。先生は一緒に食べるはず。
・シズマズ先生は最後までヒーローがいい。

いくつあるんだこれ……あ、20個ですね。取り入れたものも、取入れなかったものもあるんですけど、結構大きいもので言うと、

・作戦1にあたる落語作戦がわかりづらい。
・シズマズ先生の名前はシマズ。
・小学校は普通給食。先生は一緒に食べるはず。

といったところじゃないでしょうか。
これを受けて、落語は「映画」に、先生の名前もついて、給食問題は月1おべんとうDAYで解決。一つ一つは大きくないものの、ここを直すとここが立たないとか。そういう細かな調整が次々に発生。

ちなみに、名前が「シマズ」だと、ヒジをついてこちらを見つめるイケメンを連想する。という意見もありましたが、ネーミングの面白さを優先させていただきました。給食のくだりとか、歴史のくだりとか、最初気が付いていなかったんですよね。ほんと気が付かされた部分はすごく多くて、自分一人では到底ここまでたどりつけなかったでしょう。

ダメだし壁打ちに付き合っていただいたみんな。
本当にありがとう。


⑧何度も読み返して完成。アップする。(8月15日)

読みましたよ何度も。まあそれはいつなんどきでも、必須の作業なんでしょうけれど。ここが気になる……ここが変……読むたびに、少しなおして少し戻して。

ただ、もう今日(8月15日)あげようというのは決めていました。
分量が3500字と少なくないため、読んでくれる人にとっても時間のある時にあげたかったからです。日曜の夜と土曜の夜なら、土曜の夜でしょう。

そう決めていたものの、上げるときは怖かったですね。何度か今日はやめようかと思いました。昔は毎回、怖いなって思いながら上げていましたが、最近はとんとそんな感覚は感じたことがなかったので、とても新鮮でした。


頑張って書いたので、報われてくれることに越したことはありませんが、何事もなくても、こうして二つも記事を書くことができ、貴重な体験をすることができました。

これが創作の喜び……というわけで、「#つくるのはたのしい」ということですね。何事も頑張ってやってみることはたのしく、いいことですね。何か聞きたいこと等々ありましたら、お気軽にどうぞ。

また次も頑張ります。
とりあえず「#また乾杯しよう」を書かないと……

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