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ぬるい白湯だけが、体になじんで

夕方になるころには、ずいぶんくたびれた。


ゆっくり血の気が引いて、足からは力が抜けていく。


こういうときは、頭痛もする。


ので、まだ外にいたぼくは、少し焦った。


すぐに帰ったけど、自宅は自宅で、まだやることはあった。


鎮痛剤も、飲む気になれない。


あれをして、これをして。


頭が回らない。


天候のせいもあるだろう。


まだ始まっていない頭痛が、けれど近付いてくるのを感じる。


横になっても、だれも咎めないのに。


でも、もう夕方だったから。


横になったら、きっと眠ってしまうから。


眠ってしまったら、夜に苦しむことになるから。


白湯をすすって、頭の中にあるものを、すべてポメラにぶちまけた。


「ぶちまけた」が一番しっくり来たほど、見返せば、とりとめのないことばばかりだった。


もう読み返すことはないだろうそれを、ぼくは消した。


隣に立つマンション、窓際にいるぼくにとっては目の前、外廊下の灯りが並んでいるのが見えた。


すりガラスとレースのカーテンに濾されて、それは、奇妙に整頓された星座だった。


なにかを書く度に、頭を抱えた。文字通り。


絞めつけられているのに、揺さぶられもいるような。そんな頭が、重苦しい。


キーボードを打っているのに、その感覚が、体の芯までは、伝わっていないような。


上手くもない、たとえ話しかできない。


ぼくは、なるべく頭の使わない作業だけ済ませて、あとはぼんやりしていた。


だから、あとのことは、よく覚えていない。


いつものことかもしれないけど。


ぬるくなった白湯だけが、体になじんでいた。

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