見上げてごらん、“真昼”の星も(天の光はすべて星/フレドリック・ブラウン)

わたしが欲しいもの――それは宇宙だった。そしてわたしはそれを手に入れるために戦った。

――本文より抜粋

「天の光はすべて星」の邦題は、以前は、「星に憑かれた男」だったらしい。


事実、この物語の主人公――マックス・アンドルーズは、自らを「星に憑かれた男」と称している。その一生を、星に捧げてきた男。でも僕は、現在の邦題の方が好きだ。


たしかに彼は、星に憑かれていたのかもしれない。でも、彼が星に対して――宇宙に対して抱いていたのは、恐れなんかじゃなかった。それらを手中に収めたいという憧れだった。


そんな彼に敬意を表すなら、「星に憑かれた男」じゃなくて、「天の光はすべて星」の方が、ずっといい。

人間は、一人一人をとりあげたら臆病者かもしれない。けれども全体としてみると、それくらいがちょうどいい励ましになるんじゃないか?

――本文より抜粋

僕はマックスから、勇気をたくさんもらった気がする。


僕は、元来臆病者だ。近所に出かけることすら、ままならないときもある。でも、そんなときは、パートナーの力を借りるようにしている。


何もかもを、たった一人でやろうとしなくていいんだ。僕は、この本を読み終わったあとに思った。僕だけじゃできないことも、パートナーと一緒ならできる。パートナーだけじゃできないことがあったら、僕も一緒にやればいい。それを、恥だと思わなくていい。


2人一緒なら、どんなこともできる気がする。それこそ、宇宙にだって、行けるのかもしれない……。

星は人間がやってくるのを待ってるし、人間は必ず行ってそれを自分のものにすることにきまっているんだ。(中略)人類はいよいよ強く、いよいよ賢くなって、ついには神様になる。

――本文より抜粋

僕は、神さまになりたくないし(なれないし)、誰のものでもない星を植民地にしたいとは思えないけど、月には行ってみたいな。いつでも、どこでも――地球にいる限り――見上げれば、すぐそこにある月には。行けるかな。僕が生きている内に、行けるかな。

このちっぽけな世界から、誰もかも脱出したくてうずうずしている。(中略)それは芸術となり、宗教となり、苦行となり、占星術となり、舞踊となり、飲酒となり、詩となり、狂気となった。

――本文より抜粋

僕にも、できるかな。ちっぽけだと思っている世界の外へ、出ていくことができるのかな。僕の――僕だけの方法で。もちろん、大切な人を連れて。


月へ。

3/4更新

天の光はすべて星/フレドリック・ブラウン(1953年)

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