見出し画像

ぼくは、何にもなれない

ひどい夢を見た。


ぼくは、人ごみの中にいた。


ショッピングモールか何かだったと思う。


ふと前を見ると、ぼくを生んだ人間がいた。


ぼくは逃げた。


すぐに気付いたあいつらも、執拗に追ってくる。


撒いては見つかり、撒いては見つかり。


目が覚めて、夢だったことに気付いたとき、安心したけど。


そのまま横になっていると、突然、あるイメージが脳裏によぎった。


だれかはわからない。


ぼくに向かって、腕をふり上げる様。


実際にそれを見たように、ぼくの体はびくっとした。


冷たい汗が滲み出るのがわかった。


昨日の朝の話。


どうして、あんな夢を見た上に、嫌なイメージまで見てしまったのだろう。


前夜に、カフェインを摂りすぎたせいだろうか。


歯を強く食いしばっている自分に気付く。


結局のところ、ぼくは逃げられないのだ。


そんなことばかり考える。


複数人に会った翌日は、自分が定まらないでいる。


自分は、どこにいるのか。


どこにもいなくても、いいんじゃないか。


ぼくを知らない人しかいない場所に行きたい。


けれど、どんな場所にせよ、長くとどまっていれば、ぼくを知る人は少しずつ増えていくんだろう。


だから、どこにも行けない。


逃げられない。


そんな風に思う。


悲しい、がわからない。


寂しい、もわからない。


どんなものだったっけ。


涙は出てくるけど、悲しさとも寂しさとも違うような。


どうしよう、今日はボランティアの参加日なのに。


それとも、また休んでしまおうか。


人に会いたくない。


生きたいもしにたいも、何もかも失せた。


今現在の感情がわからない。


ぼくは、何にもなれない。

この記事が参加している募集

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 「サポートしたい」と思っていただけたら、うれしいです。 いただいたサポートは、サンプルロースター(焙煎機)の購入資金に充てる予定です。