7/2
4:04起床。
天気は曇り。
まだ「昨日」かもしれない。
もう「今日」かもしれない。
僕は、
檻の中にいる。
I am in prison.
囚人は僕。
看守も僕。
「いつになったら、出られますか?」
囚人であるところの僕は、訴える。
「それは、僕の立場では答えられない」
看守であるところの僕は、はぐらかす。
ううう、と檻の中でうめく僕(囚人)を、
くくく、と檻の外で見下ろす僕(看守)。
どちらも本物で、
どちらも偽物だ。
なぜなら僕は、
どちらの僕も孕んでいる。
僕(囚人)は、孤独だ。
檻の中にいるのは、僕1人だけ。
ぱさぱさのパンをかじり、
冷めたスープを啜る他は、
鉄格子の窓から見える空を、眺めるだけ。
けれど僕は、
こう思っている。
ずっと、ここにいられたらいいのに。
僕(看守)は、自由だ。
自分がいるのは、檻の外。
終業すれば、塀の外にさえ出られる。
だれの遠慮もいらない。
これは、プリズン・ブレイクじゃない。
けれど僕は、
こう思っている。
僕も、収監されたいよ。
さて。
僕(囚人)も、
僕(看守)も、
どちらも孕んでいる僕は、
どちらの意見を聞き入れるのか。
……。
……。
僕(囚人)は理想。理想の、環境。
僕(看守)は現実。現実の、環境。
逆じゃないかって?
でも、
今の僕に当てはまるのは、これなんだ。
外に出るのが怖い。
人に会うのが怖い。
昨日は、
最後まで教室にいられなかった。
きっかけはあった。
それについては伏せておくけど、
それを境に、
教室中の笑い、焦り、嘆き……。
その全てが、
僕にとってノイズになってしまった。
頭痛がする。
吐き気がする。
足が震えてくる。
途中で退室させてもらって、
頓服をたらふく飲んでみても、
なかなか治まってくれなかった。
結局、
15時になる前に、僕は帰った。
フローリングの床にばたりと倒れこみ、
頬でその冷たさを感じながら、
僕は、自責の念にかられていた。
また、逃げてしまった。
1つの不安は、
多くの不安を、次々に引き連れてくる。
Q.こんな状態で、働きに出て大丈夫?
A.いや、学校と職場は違うよ。
学校では上手くいかなくても、
職場では案外やっていけるかもしれない。
Q.職場っていうのは、
何かあっても、逃げちゃいけないんだよ?
A.僕が応募するのは、全部障がい者枠の求人だよ。
自分の特性をオープンにした上で働くから、
もし何かあっても、配慮してもらえるんだよ
Q.でもね、それに甘えるのは――。
僕は、檻の中にいる。
けれど、
いつかは、塀の外に出なくちゃいけない。
塀の外では、
何者でもない僕が、
何者になるために、
手を振りながら、待っている。
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