ぼくの記憶は、本に紐付いている。
檸檬の匂いのするお冷だった。たまにある。ぼくは、大学構内にあった生協のカフェを思い出す。お冷のピッチャーに、くし形に切られた檸檬が入っていた。昨日行った喫茶には、ピッチャーはなかったし、檸檬からこぼれた種も入っていなかったけど。檸檬の匂いがすると、いつも、そんなお冷を思い出す。
初めて行く喫茶だった。存在自体は、大学のころから知っていた。でもあのころは、まだコーヒーが飲めなかったから、憧れだけがあった。(なんなら、一年前の今日も飲めなかった。)何年ごしに飲んだコーヒーは、酸