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チョコレートはチョコレート、図書館は図書館 『ポニイテイル』★60★

ブラウニー図書館は見上げるとひっくり返ってしまうくらいの、おそろしく高い、こげ茶色の建物です。それはまるで巨大な板チョコのおばけみたいです。1年くらい前でしょうか、ある日いきなり学校のとなりに現れました。あどちゃんと一緒に、一度だけおそるおそる近くまで偵察に行ったのですが、チョコレートみたいにつるりとしたカベがぐるりと建物をとりかこむばかりで、入り口はどこにも見あたりませんでした。ただ正面に「ブラウニー図書館」という、新しい図書館にしてはやけに古い看板がかかっているばかりです。中に誰かがいるようすもなく、しばらく木の影でかくれて見ていたのですが、中に入ろうとする人も出てくる人もいませんでした。誰も出入りできない板チョコみたいな図書館。なんともブキミではありませんか!

ブラウニー図書館はあいかわらず背が高くて、カベはおいしそうなチョコレートのようでした。日曜日の午後だというのに、図書館の周りにはやっぱり人が誰もいませんでした。プーコはゆっくりと、カベに顔を近づけました。鼻をつけてみるとひんやりとして、目をとじて感じると、カベからかすかに甘いにおいがただよってきます。

「おいしそう……」

プーコは図書館のカベをなめるなんて汚いことしちゃっていいのか迷ったけれど、舌をちょっとだけ出して、チョコレート色のカベの、一番きれいそうに見える部分を、ペロっとなめてみました。

絵の具であまり使わない色をまぜあわせると、こんな味ができるかもしれません。

「マズーーーイ!」

チョコレートみたいだからって、チョコレートの味がするわけじゃない。チョコレートはチョコレート、図書館は図書館だということがよくわかりました。
そのときです。

何かロープみたいなものがビューっとプーコの体にぐるんぐるんと巻きついてきたのです! そのロープみたいなものは、プーコの体を空中にぐーんと引き上げました。

地面がみるみる遠くなっていきます。
目の前に町全体の景色がひろがります。学校の高さなんかあっという間に通りすぎてしまいました。ロープはプーコを巻きつけたまま、どんどんスピードを上げて高く高くのぼっていきます。

「キャーッ!」

プーコはなんと、ブラウニー図書館のてっぺんの屋上まで引き上げられてしまいました。

「はぁ、はぁ、はぁ!」

今ので寿命が何年縮まったことでしょう。ただでさえ、両手とも生命線がうすいのが気になっているのに……。

「プーコさん、いらっしゃい」

背中のほうで声がしました。ふりむくとロープがあって、その先がピョンピョンとはねていました。そのロープは太さといい、形といい……

「ゾウの、ハナ?」
「ブラウニー図書館へようこそ。今日は何を調べにいらしたの?」

ハナがしゃべってる! 頭の中に直接響く声は、とても美しく、やさしそうな女性の声でした。ハナの声だけど、ハナ声じゃない。きれいな楽器が奏でられているような気さえしました。

「今日は何をおさがし?」

うねうねとうねっているロープ。

「はっ!」

プーコはあせりました。10秒以内に答えないと、ここから突き落とされてしまうルールかもしれない。思いつきでも何でもいいからいわなくちゃ。

「わ、わたしは、うーんと、ペガサスについて調べたくて来ました。ペガサスの本を探しています」
「それだけのために来たの?」
「ええと、あとは……ユニコーンの角のありかとか」
「わかりました。なら、11階ね」

ハナがするすると伸びてきて、プーコは、またたく間にふたたびぐるぐる巻きにされ、屋上にあった入り口から、ブラウニー図書館の内部へ吸い込まれてしまいました。


『ポニイテイル』★61★につづく

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