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デザイン思考に必要なマインドセット - Will(行動意志)

みなさん、こんにちは。
産総研デザインスクール事務局長・最高学習責任者の小島です。

「あなたが死ぬまでにやり遂げたいことは何ですか?」と問われたら、どのように答えますか?


マインドセットって何?

KESIKI Inc.のnoteで、さよなら、さよなら、デザイン思考

マインドセットを有しない、プロセスとしてのデザイン思考は楽しかったで終わってしまいがちです

KESIKI Inc.のnote

と述べています。

みなさん、マインドセットって何でしょうか。
後輩から「○○さん、マインドセットってなんですか?」と質問されたとき、どのように答えますか?

マインドセットとは、各個人がこれまでの学習や経験によって形成された
・価値観
・信念
・思い込み
・考え方の癖
・態度
の集合体です。

そう言われてもピンときませんね。
ちょっと日常の場面で考えてみましょう。
みなさん、日々の仕事、営業や経理や技術開発などを行っていると思います。部署が違う人と会話すると「あっ、この人こういうモノの見方するのか」とちょっとした驚きを感じる時があると思います。
例えば、同じ料理を食べたときに
営業:「おいしい!これって誰に一番受けるかな?」
経理:「おいしい!これの原価っていくら?」
技術開発:「おいしい!タンパク質の凝固温度って何度だっけ?」(←産総研の研究者との飲み会あるある)
と「おいしい!」の次に湧いてくる言葉が違ってくることがあります。
このように、マインドセットには「考えた方の癖」が含まれます。一種の職業病ですね。

私は学部教育では物理学を専攻していたのですが、物事を観察するときに対称性を美しいと感じたり(価値観)、異なる2つの事象間に共通性を見つけ出そうとしたり(考え方の癖)、物事の結果には原因が必ずあるはず(信念)を、いつの間にか刷り込まれています。
大学院ではシステム工学を専攻したため、全ての事物・現象に構造と入出力を見ようとする癖がついてしまっています。

私(物理学・システム工学)のマインドセット
・価値観:対称性は美しい
・信念・思い込み:結果には原因がかならずある
・考え方の癖:入力と出力、状態を見出したい
といったところでしょうか。

余談ですが、物理学者のマインドセットを面白く紹介した本があります。

これらのマインドセットは、周りが同じマインドセットを持っている、環境が一定の場合、素早く仕事を処理するには有効に働きます。しかし、この素早く仕事をこなすという目的と一定環境という条件が破綻したときには、混乱、不安、衝突を起こします。

デザイン思考に必要なマインドセット

マインドセットとは何かは説明しました。では、デザイン思考、思考、デザインとは何でしょうか?深掘りしていきましょう。

思考とは、

何らかの目標達成や問題解決のために行う一連の情報処理を指し、思考する対象の意味を理解しながら進められる認知的な行動。

wikipedia

です。

デザインとは※、
私は、ハーバート・A・サイモン(アメリカ合衆国の政治学者・認知心理学者・経営学者・情報科学者。1978年にノーベル経済学賞を受賞。)の記述

Engineers are not the only professional designers. Everyone designs who devises courses of action aimed at changing existing situations into preferred ones.

しかしエンジニアだけが決して唯一の専門的なデザイナーではあるわけではない。現状の状態をより好ましいものに変えるべく行為の道筋を考案するものは、誰でもデザイン活動をしている。

Chapter 5 The Science of Design: Creating the Artificial - The Sciences of the Artificial
システムの科学 - 第5章 デザインの科学:人工物の創造

を良く引用します。つまり、デザインとは、「現状をより好ましい状態に変える計画と行為」である。

同様の解釈をMIMIGURIの小田裕和氏がしています。

さて、いよいよデザイン思考です。デザイン思考とは、
「職業デザイナーが目標達成や問題解決のために行う一連の認知的な行動」となります。
職業デザイナーには、現状をよくしたい依頼人がいます。そのため、問題を抱えている人を特定し(もしかしたら、本当に問題を抱えている人は、依頼人が考えている人では無いかもしれません)、その人を観測し、痛み(不便さや不安)、利得(便利さや安心)に共感することからスタートします。

デザイン思考に必要なマインドセットとしては、
・問題を抱えている顧客を観察、共感する(共感)
・素早くやって、素早く失敗する(試行)
・失敗から学び進む(学習)
・必ずよりよい状態に到達できる(楽観)
といったところでしょうか。

※じつは学問的にはデザインの定義は時代背景に合わせて色々な定義が提唱されています。
というか、新概念を開発し、対象の説明可能性・利用性を拡げていくのが学問なので。
以下、デザイン研究の専門的部分になりますので、読み飛ばして頂いてもOKです。が、デザイン思考、デザイン研究を概観するには有益です。

まずデザインを研究の系譜が良くまとまっているのでご紹介します。
九州大学芸術工学研究院・デザイン基礎学研究センター

つづいて、デザイン思考の歴史となっていますが、デザイン思考と言う言葉が生まれる前のデザインに関する研究をまとめてあるので参考になると思います。


ポスト・デザイン思考:全てはあなたから始まる

さて、産総研デザインスクールでの学びの対象者は、主に研究・開発や新規事業探索に関わる人達です。職業デザイナーではありません。BTC人材の育成を提唱しているTakuramの田川欣哉氏とお話しする機会がありました。

その対話の中で、「最終的にコトを成し遂げるのは、相手に完全憑依できるか、自身が起点になっている場合です。」とありました。

デザイン思考は「まずは顧客への共感」と言われます。
決してこれを批判するのではなく、コトを成すには、別のモードが存在するということです。
それは、先の「自身が起点になっているモード」です。
分かっているようで自分の不安・痛みに向き合うのは辛い作業になります。
しかし、自身への共感をまずは行うことで、他者への共感※も敏感になれると思いませんか?
他者への共感から始めるデザイン思考に対し、自身への共感から始めるデザイン思考に「○○思考」と新たな言葉を割り当てることが出来ていないので、ここではポスト・デザイン思考と呼ぶことにします。
※共感にも情動的共感と認知的共感がありますが、その解説は別の機会に。

デザイン思考に関する2つのモードに関しては、ジマタロさんのnoteでも整理されています。

ポスト・デザイン思考では、Will(行動意志)が重要であると考えています。

I will 動詞

のように、Willの後には動詞がきます。つまり、Willは「絶対○○する」という自身の行動意志を表しています。問題を捉えるときに、As-Is/To-Be分析があります。現状(As-Is)と、どうありたいか(To-Be)を言語化します。この差分を問題と捉えます。差分である問題への取り組み行動として、行動意志であるWillが自身に沸き起こってくることが重要です。パーパスとの違いは、自身の行動まで言語化するところです。パーパスは目指すべき方向性なので、パーパス=ありたい姿(To-Be)に対応します。
産総研デザインスクールでは、このWillを言語化することを大切にし、支援を行っています。
産総研デザインスクールでの私のWillは、こちらで紹介しています。

この連休の後半で自身と向き合い、Willを探究してみては如何でしょうか。
探究の起点となる問いをお裾分けします。

・私を最高の気分にさせてくれる3つのことは?
・私を不安にさせる3つのことは?
・今までの私の人生で、特別自分を誇りに思える3つのことは?
・納得できる人生を生きるために、私にとって大切なことは?
・私にとってよい人生とは?
・世界は私にとってどのような存在?
・私は世界にとってどのような存在?
最後に
・私が死ぬまでにやり遂げたいことは何?

社会との接点を見つけることはできましたか?
Willの重要な要素は、個人的な自己実現ではなく、社会的な自己実現であることです。社会的な自己実現と組織のビジョンの双方を考えることで、研究・開発の新テーマ設定や自社が取り組むべき社会課題が見つかるのではないでしょうか。

他にどのような問いがあるのかな?と思った方は、産総研デザインスクールの説明会やシンポジウムに参加ください。


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