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Yコンビネーター流のユーザー獲得・成長戦略

閲覧いただき有難うございます、10日間に渡ってお届けするY Combinatorに関するnoteも今日で2日目。元ウルトラマン隊員CEOの三好真です、皆さんもY Combinatorに関しては聞いたことがある人も多いかもしれません。Y Combinatorとはシリコンバレーにある有名なスタートアップアクセラレーターであり、2005年より開始したStartupの支援事業も今では数多くの有名企業を輩出するに至っております。例えば、2009年冬に同組織を卒業したバケーションレンタルサービス「Airbnb」の創業者であるBrian CheskyやJoe Gebbia、Nathan Blecharczykや2009年夏に同組織を卒業したオンライン支払い処理のシステムプロバイダー「Stripe」の生みの親である2人の兄弟のJohn CollisonとPatrick Collisonなどが挙げられる。他にもDropboxやReddit、Coinbase, Docker, Twitch, Flexportなど日本人起業家なら知っていそうな有名企業が並んでいる。今日はAirbnbでGrowth StrategyのリードしたGustaf AlstromerによるY Combinatorの講義から「ユーザー獲得・成長戦略」について触れていきたい。

Facebookにとっての成長予測と実際の成長速度の違いとは

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なぜ「Growth=成長」が重要なのか、GustafによるとStartup=Growthである。これは4月11日にポストしたYコンビネーターが実践する投資されるStartupアイデアの作り方でも触れている内容である。Growth=成長のポテンシャルが低い事業はStartupではないと言う考え方である、つまりただの小規模事業者ということだ。例えば、FacebookのGrowth Story=成長ストーリーについて触れてみたい。同社はGrowth専門のデータサイエンティストを用意、Growthに対する将来予測を初期時点から描いていた企業である。同社における2006年時点でのFacebookユーザー数は3億人程度であり、当時同社チームが2015年に描いていた予測ユーザー数はたったの4億人程度であった。しかしながら、同社のユーザー数は予想に反して大きく跳ね上がり2009年から2010年にはすでに5億人に達する勢いであった。ではなぜここまで大きく跳ね上がる様な成長を達成できたのか、それは2007-8年に導入した「Translation=翻訳」システムの導入である。今ではFacebookにおいて当たり前の機能になっているが当時は普通ではなかった。また、Translation機能導入後に同社のデータサイエンティストが出した2015年時の予測ユーザー数は7億人程度であった一方、この予測も良い方向へ外れることになる。次の成長期は2010-11年である。それは「Mobile=スマホ」であり、2010年までは大多数の人がFacebookをPCで閲覧していたユーザー層を大きく変えたことにより、2014年には12億人ユーザーを突破する。そこで、同社のデータサイエンティストは2015年には13億人ユーザーほどになるだろうと試算することになるがそれも外れることになる。なぜならば同社が2014年に導入した「Internet.org=インターネット接続ができない人へ機会を与える」により、2015年には15億人ユーザーを超えることになった。

ここから読み取れるのはFacebookはプロダクトマーケットフィット(顧客の課題を満足させる製品であるプロダクト、サービスを提供し、それが適切な市場に受け入れられている状態のこと。)を成功させることにより、常に成長を続けてきたということである。

FaceookとAirbnbなどのプロダクトマーケットフィットとは

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Gustaf Alstromerは講義の中でAirbnb, Facebook, Gusto, Lyft, Checkr, Stripeのプロダクトマーケットフィットに関して触れており、各社の①「Metric that represent value=時間単位における価値提供の基準」や②「Ideal frequency=理想的な価値提供の頻度」について下記に記述する。
1. Airbnb:①Bookings / Stays=予約/宿泊数、②Annual=年間利用数
2. Facebook:①Active users=日常的に利用しているユーザー数、②Daily/Monthly=各日・月単位のアクティブな利用数
3. Gusto:①Running employee payroll=従業員の給与計算数、②By-weekly/Monthly=各週・月単位での給与計算数
4. Lyft:①Rides=乗車数、②Weekly/Monthly=各週・月単位での乗車数
5. Checkr:①Background checks=採用候補者のキャリアチェック数、②Daily/Hourly=各日・時間単位のキャリアチェック数
6. Stripe:①Transactions=プラットフォーム上での取引数、②Daily/Hourly=各日・時間単位の取引数

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また、Measuring retention=ユーザー維持に関して触れていきたい。良いプロダクトのRetention事例としては1週目に75%のユーザーを保持、2週目には53%、8週目には40%、12週目には35%、15週目には40%であり、チャートにすると2週目からはフラットな流れになる。一方、悪いプロダクトのRetention事例としては1週目に75%のユーザーを保持、2週目には50%、8週目には18%、12週目には9%、15週目には0%でありチャートでは下降し続けることになる。Shopify(オンラインストア作成サービスでは世界シェアNo.1)を例にとってみると、Customer Retention(登録したユーザーの保持率)は1ヶ月後には50%、24ヶ月後には10%程度にしかならない。しかしながら、24ヶ月後には少なからず10%程度が維持された上で成長していくことはデータとして出ており、下降するカーブを予測しつつプロダクトマーケットフィットし続けることが求められる。

Gustaf Alstromerは「Three ways to grow at scale=大規模に成長させる3つの方法」についても触れている。第一に「Product Growth / Growth Engineering」であり、データサイエンティストやマーケターがテクノロジーを利用してGrowth Strategy=成長戦略を描くということである。第二に「Performance Marketing」であり、GoogleやFacebook Marketingを利用して、データドリブンによりカイゼンを繰り返しながら最適な効果を出していくことである。第三に「Brand Marketing」であり、直接ユーザーからのフィードバックを受けることや分析してカイゼンすることに関しては3つの中で最も難しいとされる。彼によると「Brand Marketing」は最初に行わず、「Product Growth / Growth Engineering」や「Performance Marketing」から行うべきであるという。実際、私が運営してきたプロダクトでも直接ユーザーからフィードバックを受けてカイゼンするということに関しては限界を感じることが多い。一時的に要望として受け取ることは可能であるが、その要望自体が大多数の要望とは限らない。カイゼンに関する要望の数を直接大きく集めることができれば状況は変わるだろう。

弊社の投資先においても、これからユーザー獲得・成長戦略を考えるべきフィットネス系の会社がある。この記事でまとめると、「Product Growth / Growth Engineering」を通して成長戦略を描きつつ、企業体力を温存するために的確な「Performance Marketing」をFacebookやInstagramにおいて行い、企業規模を拡大する中で「Brand Marketing」として直接の顧客の声をサービス内容に反映していくことによりユーザーの獲得や保持を行ってもらいたい。当然ながら、プロダクトマーケットフィットが大事であり、描いた戦略以上に答えを出すためにはFacebookの様に時代の流れと需要を見極めて経営判断を下すことも求められる。

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