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小説:おかしな旅は終わらない遊び

青い空を突き破ると、そこには星が存在する、さらにその先のずっと先には真っ暗な宇宙がある
音は振動しないから届かない、涙を流しても重力がないからポロポロ飛んでいくそうだ
宇宙…それじゃあ、ここは宇宙だ
私はずっとずっと宇宙空間を彷徨っている
 
いつものように宇宙空間を彷徨う私に不思議なモノが見えた…気がする
真っ暗ではない、微かに何かが見える、何かが見えるなんてずっとなかった
声を出そうとした、もしかしたら声が届くかもしれないと思ったから
「   」「   」「   」
宇宙空間を彷徨い続けていたから人の言葉を忘れてしまった…?
言葉だけじゃない、自分の声がどんなものか忘れてしまったみたい…
言葉はこれでいいのかな?私の声はこんな声だった?
微かに見えていたモノの周りがまた濃くなる
待って…!やっぱり私は独りなの!?
見えていたはずのモノが…消えてしまった
泣いた、宇宙人の私は大声で泣いた
宇宙人はどこにいっても仲間は出来ない!
普通のみんなと違い過ぎる、だから宇宙人なんだ!
 
ふわふわ、私は宇宙空間のどこかを彷徨っている
ふらふら、彷徨うには自分の意思はいらない
プカプカ、ただその場に流れるよう、少しも逆らわない
 
「みーつけた」
…なんで音が聞こえるの?なんではっきりと人が見えるの?それより、この人は誰?
「誰だと思う?僕はただの僕だよ」
私の声が届くの!?聞こえるの!?見えるの!?宇宙人の私のことが!!
「そりゃあ声なんだから届くさ。聞こえるし、見えるに決まっているよ」
とても久しぶりに聴こえた誰かの声は全然懐かしくない、初めて聞く声
とても久しぶりに見た人は普通だった、私以外はもっと眩しくて特別な存在なのに
「僕から見えるキミもそうだよ。初めましてだし、まったく普通だし」
私は普通じゃない、だって宇宙人だもん、声は届かないし、真っ暗な宇宙にしか住めない、
それにね、泣いても涙は拭いてもらう前に飛んでいっちゃうんだから。
「それは面白い。でもどうして僕には見えたの?声が聞こえたの?僕はどうしてキミに会った時に『見つけた』と言ったと思う?」
キミのことは何にも知らないよ。でも私は宇宙人、不思議でおかしくて、…誰にも…自分でも何を考えているか…分からない…すごくヘンテコな存在!分かる!?私は普通じゃない!!
 
そう言い切って泣いた。自分を宇宙人だと説明したことが悲しくて、ヘンテコな自分が恥ずかしくて、それをどう見ても普通の相手に伝えることが、たまらなく情けなかった。
「もう1つ質問。どうして今、キミの涙は飛んでいかないで、拭くことが出来るの?」
宇宙人の涙はあちこちに飛んでいくのに、この人が全部拭いてくれた。
「普通の僕は案外普通のキミを見つけた、普通に話しているし、普通に見えているよ、あと普通に涙も拭いた」
間違いなくさっきまではあんなに真っ暗な宇宙空間を独りで彷徨っていたのに、今では真逆なことが起きている。ここまで普通を連呼されて、まだ宇宙人と主張し続けられる私じゃない。
それにこれは私がずっと昔に望んだ特別な…普通のことだらけだ。
人が見えるということ、言葉が届くということ、一緒に時を過ごすこと、そして流した涙を拭いてもらうことまで。
「そんな顔しないで。僕はキミを見つけられてよかったと思っているよ」
「それはどうして?」
「だって『かくれんぼ』は仲間を見つける遊びでしょ?さあ次の鬼はキミだ」
「かくれんぼ?」
「ちゃんと『仲間』を見つけて?あんまり遅いとさっきのキミみたいに泣いているかも。はい、スタート!!」
「なかま?あ!えっと…もっと…仲間の…話…仲間のことを私に教えてほしい!」
「だいじょーぶ!キミも『自分ですべてを見つける』またね!」
 
私の宇宙人物語はかくれんぼの鬼に見つかり突然終わった。今では私も真っ暗な宇宙空間で自分を特別な宇宙人だと主張する子を見つけては、かくれんぼに誘っているの
みんな前の私みたいに隠れるのが上手くて探すのに一苦労すると思う?残念、ハズレ
誰かに会いたい、話したい、泣いている、寂しいよ、ヘンテコな自分、そういったテレパシーをもつ子を見つけるのは今の私にとって難しいものじゃないから
 
今日もテレパシーを辿り、迷子の貴方を見つけた
こうして仲間と出逢えたら、みんなでかくれんぼを楽しもう
たとえ自分をヘンテコな宇宙人と呼ぶ貴方だって大好きで大切な仲間なんだから

*愛音*

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