山内美貴

あいみょんが好き/貴方解剖純愛歌~死ね~/インスパイア小説/音楽を小説に/青春・恋愛/

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  • 【インスパイア小説】貴方解剖純愛歌~死ね~

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貴方解剖純愛歌~死ね~#21(最終話)【インスパイア小説】

僕はスマホのアラームの音で目を覚ました。ベッドが硬かったのか枕の高さが合っていなかったのか、首や腰が痛い。 少しかび臭い部屋の匂いを入れ変えたくて、窓を開け放ち新鮮な空気を部屋へ入れた。もう11月にも関わらず、Tシャツで丁度いい気持ちの良い風が、体を通り過ぎた。雲一つない晴天にのぞく太陽の光は、皮膚に当たると日本の夏を感じさせた。   着替えを済ませ遅い朝食を摂るために街に出た。黄色や青、ピンクなどカラフルな色使いの家の壁が、通りにずらりと並んでいる。歩いていると所々に壁画

    • 貴方解剖純愛歌~死ね~#20【インスパイア小説】

      店を出てすぐタクシーを捕まえて、陽葵の自宅へと急ぐ。陽葵が遠くへ行ってしまう。初めてそのことを意識した。嫌だ。このまま会えなくなるなんて。 僕は気づくのがいつも遅い。失ってから初めてその大切さに気づかされる。僕はずっと手にしたままだった手紙に視線を落とした。封を開ける。シンプルな便せんにはびっしりと陽葵の手書きの文章が書かれていた。                * * * 蒼へ こんなふうにお別れする形になってごめんなさい。この手紙を受け取ってくれてる時には、もう私は

      • 貴方解剖純愛歌~死ね~#19【インスパイア小説】

        僕は眠れぬ夜を過ごしそのまま朝を迎え、訳が分からないまま病院へと急いだ。 何で急に?あんなに楽しみにしていたのに。考えられるのはやはり容態が急変したということだけだった。遊園地で陽葵が倒れた時のことをまた思い出す。 病院に着くと陽葵の病室へ直行した。だが、部屋は綺麗に整理され、陽葵はそこにいなかった。僕は部屋を出て受付へ駆けこんだ。 「すみません、山井陽葵さんは病室を移動されたんでしょうか?」 「山井陽葵さんですね。確認しますので席にお掛けいただき少々お待ちください」 僕

        • 貴方解剖純愛歌~死ね~#18【インスパイア小説】

          陽葵のご両親を説得するのは容易ではなかった。それは当たり前だ。少しずつ病状が悪化している娘の容態を第一に考えれば、海外に行く許可を出すなんて簡単に出来るわけがない。それでも諦めず説得をし、何度も頭を下げ続けた。陽葵も一緒になって必死に両親に訴えかけた。 おそらく病気になってから初めてであろう、陽葵の熱い思いを目の当たりにし、ご両親は徐々に反対の声を弱めていった。そして遂にはメキシコ行きを承諾してくれた。 条件として出されたのは、メキシコから戻ってきたらすぐにでも手術を受け

        貴方解剖純愛歌~死ね~#21(最終話)【インスパイア小説】

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        • 【インスパイア小説】貴方解剖純愛歌~死ね~
          21本

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          貴方解剖純愛歌~死ね~#17【インスパイア小説】

          連続して日本列島を横断していた台風も落ち着きを見せ、過ごしやすい気温が秋の到来を感じさせていた。 僕は情報カフェテリアでゼミの資料を作成していた。机の上に置いていたスマホのバイブが鳴る。LINEを開くと春香ちゃんからだった。 **《今大学いる?》 *《情報カフェテリアで作業してる》 **《これから少し時間ある?話したいことあって》 *《了解。ラウンジ集合にする?》 **《出来れば外がいいかな?》 その後正門で落ち合った僕らは【Buzz】に来ていた。 「新くん今日

          貴方解剖純愛歌~死ね~#17【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#16【インスパイア小説】

          「おーす。なんだ一人飯かよ」 学食で昼食をとっていると、向かいの席に新がご飯のプレートを持って現れた。 「大学来てたんなら連絡のひとつでもよこしなさいよ?」 後ろから遅れて竜馬がやってきた。席に着くなり生姜焼きを頬張りながら箸をこちらに向けてくる。 「最近蒼から連絡ないし、グループLINEもリアクションないじゃん」 「たまたまだよ。最近忙しくて」 「ははーん、さては美青ちゃんのことで頭がいっぱいかな?」 「は?森川さんは関係ないって」 「蒼くん、僕らの情報網を舐めてもら

          貴方解剖純愛歌~死ね~#16【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#15【インスパイア小説】

          意識を失った陽葵は救急車で病院へ運ばれた。完全に頭が真っ白になっていた僕は、救急隊員に聞かれたこともよく覚えておらず、気づけば陽葵のリュックを抱え、病室の前のソファに座りうなだれていた。 どれくらい時間が経っただろう。周りに窓がなかったせいで、昼か夜なのかもわからなかった。 頭は混乱し続けているが、これだけはわかる。きっと僕のせいだ。無理にジェットコースターに誘ったせいで陽葵は倒れてしまった。それが貧血なのか、最初から体調が良くなかったのか。もしくは、もっと以前から何かの

          貴方解剖純愛歌~死ね~#15【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#14【インスパイア小説】

          「ったく、なんで日曜の休みに蒼とこんなところ来なくちゃいけないの」 待ち合わせ場所に着いて早々、陽葵は愚痴をこぼした。はしゃいでる子供連れの家族やカップル、中高生のグループなど、周りには様々な人たちが、皆笑顔でエントランスに向けて歩いていた。 「申し訳ない。こんなこと頼めるのは陽葵だけだったから」 先日中庭で森川さんに頼まれたのは、一つじゃなく二つだった。一つはいつもは我慢しているスイーツを食べに行きたいということだった。 森川さんに連れられ、何語で書かれてるかもよく

          貴方解剖純愛歌~死ね~#14【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#13【インスパイア小説】

          夏休みはスーパーのアルバイトと、妹たちの面倒を見ることの繰り返しで、毎日があっという間に過ぎていった。連日の猛暑でテレビのニュースでは、海水浴場で水着姿の人たちが映し出される様子が、毎日のように流れている。 家事を一通り終えて部屋で涼んでいると、スマホが鳴った。竜馬から、【Buzz】にいるから集合、との誘いだった。僕はスタンプで返事をすると、素早く着替えを済ませ数分後には家を出た。 【Buzz】に入ると、客は奥のテーブル席に座る竜馬と新だけだった。 「いらっしゃいま……な

          貴方解剖純愛歌~死ね~#13【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#12【インスパイア小説】

          みんなと合流する手前で陽葵に止められ、背中から下ろした。まだ少し足を引きずるように歩きだす。 「大丈夫?」 「さっきよりだいぶ痛みも引いたから大丈夫。ありがとうおぶってくれて」 そう言ってまた陽葵は歩き出した。スマホの薄明かりでは、陽葵がどんな表情をしてるかぼんやりとしかわからなかった。 スタート地点に戻ると、竜馬たちはすっかり酔いが醒めたと言って、コテージに戻って飲みなおすことになった。しばらくカードゲームをしたり、大学にまつわる噂話をしたりして盛り上がり、そのまま宴は深

          貴方解剖純愛歌~死ね~#12【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#11【インスパイア小説】

          「おい竜馬、スマホの光じゃよく見えないから、こっちに懐中電灯向けてくれよ」 目の前の暗がりから新の声が聞こえる。 「新お前さっきのことまだ怒ってるの?」 竜馬がこちらを向いたのか、目の中に急にピカっと懐中電灯の光が射し込み、眩しくて思わず目を瞑った。 「別に俺だけ話聞いてもらえなかったからって、怒ってなんかないよ。そんなことより、ほんとに肝試しなんかやるのかよ。コテージに戻ってゲームでもしようぜ」 「いいや、お前がほんとにビビりじゃないか、ちゃんと確かめないとな」 きっ

          貴方解剖純愛歌~死ね~#11【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#10【インスパイア小説】

          心配していた天候にも恵まれ、僕らを乗せた車はキャンプ場へ向けて快調にアスファルトを走らせていた。運転は僕が担当し、新が変に気を回したせいというべきか、おかげというべきか、助手席には森川さんが座っている。 先日は自然に打ち解けられていたはずなのに、振出しに戻ったかのようにまた緊張して、なかなか話しかけられずにいる自分が情けない。普段慣れてない車の運転に加えて、隣が気になり手に力が入ってしまい、先程から肩が凝ってしょうがなかった。 ミラー越しに後ろを確認する。二列目に座る竜馬

          貴方解剖純愛歌~死ね~#10【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#9【インスパイア小説】

          前期の講義もほぼなくなった昼過ぎ、僕はバイトまでの時間をクーラーの効いたラウンジで潰していた。隣に座る竜馬はジャンプを読み、向かいの新はノートパソコンを開いて画面とにらめっこしながらうーん、うーんと唸り声をあげている。 「なあ、この時期だとやっぱ海の近くでキャンプがいいかねー?それともひっそりと森の奥で、流行のグランピングのほうが女子勢は喜ぶか?って聞いてるお二人さん?」 リアクションのない僕ら二人を見かねて、新がパソコンの画面ごとこちらに向ける。 「おーい、蒼くん聞こえ

          貴方解剖純愛歌~死ね~#9【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#8【インスパイア小説】

          家に着くころにはすっかり日が沈み、辺りは街灯の薄明かりに照らされていた。近くで蛙の鳴き声が聞こえる。街灯の周りには光に吸い寄せられた数匹の羽虫が舞っている。自転車を玄関の脇へ止めると、ポケットから家の鍵を取り出した。 「片づけるからここで少し待ってて」 「何その女の子みたいなセリフ。別に気にしないからいいよ」 と陽葵がついて来ようとする。慌てて待てのポーズで陽葵を制止させる。 「俺が気にするの。すぐ戻るから待ってて」 玄関ドアの前で陽葵を待たせ、靴を脱いで家に上がると勢い

          貴方解剖純愛歌~死ね~#8【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#7【インスパイア小説】

          【Buzz】で勉強会という名目で飲んだ日以来、僕らは授業の空き時間には自然と食堂やラウンジで集まるようになっていった。 しばらくジメジメとした日々が続いていたが、今日は久しぶりに青空が広がっている。僕は一日の講義が終わり、帰る前にラウンジに寄ってみた。いつものメンバーは誰もおらず、しばらく待ってみたが結局誰も来なかったので、中庭テラスでのんびり羽を伸ばしていた。日差しが気持ちよく、ずっといたらうたた寝してしまいそうだ。周りには演劇サークルなのかセリフの練習をしてる人たちや、

          貴方解剖純愛歌~死ね~#7【インスパイア小説】

          貴方解剖純愛歌~死ね~#6【インスパイア小説】

          一旦竜馬たちと別れ、僕は一人落ち着かない気持ちで講義を受けていた。なんとか断る理由を探し出そうとしたが、一向にいい案は出て来ず、無情に時間は過ぎていった。 仕方なく教室を出ると【Buzz】に向かって歩き始めた。実際のところネガティブな気持ちだけじゃなく、これから森川さんと同じ時間を過ごせるということに、高揚してる部分ももちろんあった。だけど、うまく話せる自信なんて一ミリもなければ、いつも通りの自分でいられる気も全くしない。そもそも高校の時から一度もまともに話せた試しなんてな

          貴方解剖純愛歌~死ね~#6【インスパイア小説】