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【トルコ旅行記】 次の旅はイスタンブールにしよう

今年の夏も日本は猛暑日が続いた。「今年の夏は一人でトルコに行こうかしら。」薄いピンク色のカーディガンをまだ羽織っていた頃であっただろうか。私がふと思いつきで言ったことが、現実になった。とは言え、私に一人で行く勇気がある筈もなく、大学の友人3人とツアーで行くことになるのだが。


 7月24日。夜中にカタールでトランジットをして、ようやくイスタンブールに到着した。成田からカタールまで7時間、カタールからイスタンブールまで5〜6時間かかったと思う。長時間のフライトで顔や足は浮腫んでいて、私の肩や腰は悲鳴をあげていた。しかし、そんなことは御構い無しに旅というのは始まるのである。


 私たちのツアーは「トルコハイライト10日間」を売りにしていて、イスタンブール・イズミール・コンヤ・カッパドキアの4都市を旅する。ツアーは私たちの他に、親子3人で来ている家族と、新婚夫婦2組、専門学校に通う女の子、70 代くらいの女性が参加していた。


 到着してすぐにバスでブルーモスクへ向かった。ブルーモスクはイスタンブールを代表するモスクであり、オスマン帝国時代に建設されたものだ。その名の通り、モスクはドームの部分が薄っすらと青がかっている。晴れている時にはそれこそ空の青さに負けてしまうのだが、それも奥ゆかしくて良い。これまでヨーロッパに行ったことが無かった私は、モスクが目に入った瞬間にその美しさに魅了され、酷く興奮したものである。正直、現地に行くまでトルコの歴史や建造物にはさっぱり興味が無かった。この時ばかりは世界史の勉強を後回しにしていた高校生の時の“私”を憎んだものだ。


 モスクは半球型をした建物が中央にあり、ロウソクのような細い塔(ミナレット)が4本その周りにあって、その延長線上に同じ塔が2本だけある。オリオン座のような形で配置していると言ったら分かりやすいだろうか。ガイドのトルコ人曰く、この2本の塔が離れて建てられているのは、遠くから見たと時にモスクが大きく見えるようにということらしい。確かに、オリオン座もリゲルが無いだけで、ひと周りもふた回りも小さく見えるだろうと納得した。

 神聖な場所なので、観光客もストールで顔の周りを覆い、靴を脱いで裸足にならなければならない。ガイドに言われるがまま、私たちも裸足になってストールを首に巻いた。モスクの中に入ると、朱色と青を基調としたタイルに目を奪われた。壁から高さ40メートルの天井に到るまで、細かい模様が施されているのである。幾何学模様が描かれているように見えるのだが、よく見るとチューリップや杉の木の模様も描かれていた。そして、何だか少し酸っぱい臭いが鼻につく。観光客が汗をかいたままの足でモスクに入って来てしまうため、匂いが絨毯に染み付いてしまうからだと、悲しそうにガイドが話していた。そう聞いて周りを見渡すと、私たちのように団体で来ているアジア人観光客がほとんどだった。モスクを出ようとした時、お祈りをしているトルコ人を見かけたが、写真は撮らないでおいた。


 それから夕食をとった。確か、メニューはタイのフライとポテト、ライ麦パンだったと思う。世界三大料理の一つの「トルコ料理」を楽しみにしていたものの、最初の料理の感想は“まずまず”であった。
「これ、日本でも食べられるじゃん。」
と思ったのが素直な感想である。タイのフライはほんのりと塩っけがあって、なんだか懐かしいような味がする。ガイドに話を聞くとトルコは日本と緯度が近く、栽培される果物や野菜、取れる魚が似ているらしい。


 アヤソフィアを後にして、バス停まで向かう。イスタンブールの路地は細く曲がりくねっていて急だ。道路はコンクリートではなくレンガであるから、少しの段差で何度も躓きそうになった。トルコ人はタバコを吸うのが好きなのだろうか。Tシャツにサングラスをかけた若い男性から、白いワンピースを着て杖を突いている貴婦人まで、皆タバコを手にしていた。私はタバコというのがどうも苦手である。タバコの臭いが染み付いたスーツを着るサラリーマンが電車で座ってしまったのなら、たちまち私は息を殺すか泣く泣く次の駅で車両を移るしかない。しかし、トルコのタバコの臭いは気にならなかった。むしろ、透き通ったような青い空と、海を照らす太陽にちょっとしたアクセントを加えてくれた。

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 路地を抜けると、急に景色が開けてエーゲ海を一望できる。先ほどのタバコの匂いは消えて、海風が運んで来た塩の匂いがした。トルコのタクシーは鮮やかなヤマブキ色をしているのだが、それと青のコントラストがまた良いのである。


 ホテルに着く頃には20時を回っていた。イスタンブールは日が沈むのが遅く、ちょうど夕焼けで空が柔らかいオレンジ色に染まっていた頃だった。橙色の絵の具をほんの少し、それにたっぷり水を混ぜたような優しい空の色と、遠くに見えるブルーモスクの色が美しい。トルコ旅行1日目を飾るにふさわしい光景であった。

 そう言えば、さっきガイドは日本と緯度が同じと言っていたけど、日が沈むのはまた別の話なのだろうか。余計なことは頭の隅に置いて、その日はすっかり満足してすぐに眠りについてしまった。

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