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夏の終わりが悲しい理由

夏になると、必ず海に行く。
波の音と、海の家の屋台のやきそば、
それと、日焼け止めの匂い。
何も変わらない。

食べたいものも、聞こえる波の音も、
少し焼ける肌の色も、飲み干したいメロンソーダも
全部、子供の時と同じだ。

戻らないといけない場所を思うほど、
いつまで経っても追いつかない心があって
どうしようもない虚しさを夏に感じる。

何も変わっていないからこそ、悲しくて
何も変われないからこそ、もどかしい。

夏の終わりはなぜか、
聞こえないはずの音も、声も、感情も、
全てが着飾ることなく、偽ることなく、
裸になり、無邪気になる。

波がありのままのリズムで波打つように、
川は、いつも静かだが、時々身勝手に荒れるように、
自然が正直だから、人の心も正直になって、
いつにも増して、素直で、子供だ。

このまま、この場所にいて、
時の流れに置いて行かれて、
誰にも知られず、今の私の肩書を、
全部捨てたって良い。子供のままでいい。

それができないから、私は
やっぱり大人であり、26歳だ。



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夏の思い出

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