見出し画像

【ココロノマルシェ回答】子供が万引き=家族の問題を一手に引き受けて起こした事件。未来に向けた関係性を築くチャンス!

こんにちは。
ライフストーリー インタビュアー/心理カウンセラーの 真中愛です。


今日は「ココロノマルシェ」に寄せられたお悩みに回答します。

↑ ココロノマルシェへの投稿はこちらから


子どもが万引をしてしまいました
R さん

4月に小5になった娘が、万引で補導されました。
警察の方には温かく接してあげてください、と言われたのですが、夫婦揃ってキツく当たってしまいました。
お店の方にも謝罪、買取をし、娘にも謝らせました。

ここ最近、お菓子等もたくさん持っていたと夫からは聞いていたのですが、娘はお友達からもらった、と言っていたので、多少疑問に思っても深く追求せずにいた矢先の事でした。

私としては、とてもショックで。
心の状態が不安定です。
娘の問題は本人のものだし、これも私にも娘にも良い経験とも思っています。
しかし、この感情の処理ができません。
娘との向き合い方や、自分の気持ちとの向き合い方について、何かアドバイスいただけると幸いです。

これ読んでると…すごく他人軸ですね(汗)
一喝お願いします。


Rさんこんにちは、はじめまして。
「ココロノマルシェ」へのご相談ありがとうございます。
真中愛が回答させていただきますね。


まずは、Rさんご自身の体調や心の状態は大丈夫でしょうか?
ということをお聞きしたいです。
お子さんが万引きで補導される、というのは相当に大きなショックを受けた出来事だったことは想像に難くありません。
どうぞ心身ともに無理をなさらずに、今はどんな状態のご自身であっても責めたり否定したりしないでください。
「私はこう考えていて、今こういう感情を抱えているんだな」
「私がんばってる、すごい!」
と、自分のことをひたすら受け入れてあげてください。


文末に
「すごく他人軸ですね(汗)」
とRさんは書かれていますが、文章を読んだ印象として、私はRさんが他人軸だとは全く思いませんでした。
むしろ、起こった問題や自分の状態を客観視できる、自分軸を確立されている方だと思いました。
「一喝お願いします」
とおっしゃるRさんが感じているのは「他人軸」ではなく、おそらく「他人に頼る」ということに対する抵抗感ではないでしょうか。

だとすれば、今回娘さんが問題を起こした理由が早速ひとつ見えてきたのかもしれませんね。
「なんでも自分ひとりで解決するのではなく、人に頼る」ということをRさんにしてほしいと、娘さんは伝えたかったのかもしれません。


今回の問題のことを、ぜひ周囲の信頼できる人たちに相談してみてください。
公的な機関やスクールカウンセラーさんに相談してみるのも有効だと思います。
Rさんご自身の心の安定や気持ちの整理のためにカウンセリングを受けてみるのもおすすめです。
「私が助けを求めれば、たくさんの人が手を差し伸べてくれる」
「多くの人の手を借りて、問題が解決に向かう」
Rさんにとってきっとそのような体験ができるのではないかと思います。


ただ、人に相談するときにも自分で問題と向き合うときにも、必ず意識しておいていただきたい大切なことがふたつあります。

ひとつは
『誰も悪くない』
ということです。

もちろん万引きは犯罪なのでその部分においては悪いことです。
だからこそご両親の最初の反応が
「夫婦揃ってキツく当たってしまいました」
というのは至極当然のことです。
いちど娘さんを厳しく叱り、
「お店の方にも謝罪、買取をし、娘にも謝らせました」
ということであれば、娘さんもきっとそのことに対して反省とともに納得して受け入れていると思うので、もう充分なのではないかな、と思います。

ここからは、きっぱりと切り替えが必要です。

《万引きを引き起こした問題を解決すること》

これが、Rさんご両親、そして娘さん自身も望んでいる、これから取り組む目標ですよね。
これから問題と向き合ってゆくうえで、折に触れてこの目標とともに『誰も悪くない』に立ち返るようにしてみてください。

万引きという問題がなぜ引き起こされたのか?
という視点で考えるとき、娘さんが悪いとか、娘さんを育てたRさんご両親が悪いとか、友だちや学校や地域社会が悪いとかいう議論は、まったく意味を持ちません。
「誰が悪いのか」という発想で取り組むと犯人探しに終始することになり、根本的な問題解決から遠ざかることになります。


もうひとつは、もし
『万引きという犯罪を起こした娘を矯正させよう(させなければ)』
という気持ちが少しでもあるとしたら、これも同じように、問題解決からは遠ざかる考え方だということです。

子どもが犯罪を犯す、ということの根本理由はふたつあると私は考えています。
ひとつは「SOS」。
もうひとつは、「両親(家族)を助けるために、身を挺して悪役を買って出た」。

だとするならば、そこに子どもを「矯正させる」理由があるでしょうか。


▽△▽△


娘さんの性格や普段のご両親との関係性や現在の状態などが分からないので、ここからは私の憶測と心理学的な一般論を中心にお話を進めさせていただきますね。

順を追って、まずは「SOS」の観点から見ていこうと思います。


子どもというのは、ありのままの自分を両親に愛してもらいたい、という欲求の塊です。
そのためにはとにもかくにも両親に自分を「見て」もらいたいわけです。
このときに「イマイチ見てもらえていない」「もっと見てもらいたい」と感じると、その子なりのいろいろな方法を使って両親が「見て」くれるための振る舞いをするようになります。
ある子は、両親の言いつけをよく守るいい子になることで。
ある子は、がんばって優等生になることで周囲からの評価を得ることで。
ある子は、正しさを主張するリーダーとなることで。
ある子は、争いに勝って強さを示すことで。
ある子は、周りを笑わせて楽しい雰囲気をつくることで。
などなど。

しかし、ここで大きな問題が起こります。
両親の視線や意識を獲得するにはどうしても両親の価値観や好みに沿わなけらばならず、それが「ありのままの自分」とかけ離れてしまう、という事態を生んでしまいます。
そうなると両親がいくら自分を見てくれていても、振る舞いに対しての理解と愛情を示してもらっても、「ありのままの自分」を見て、愛してもらっている、という実感は持ちにくいのですね。
同時に「ありのままの自分」と「振る舞う自分」の乖離に自らが苦しむようにもなります。
この乖離は本人が自覚している場合としていない場合と両方ありますが、どちらにしても、子どもが自分の力でどうにかするには手に負えないくらいまで大きく育ってしまうことが、特に現代では非常に多いと感じます。

そうなると、「私を見て」の行動をエスカレートされることで、両親や大人に自分の苦しみに気づいて助けてもらう、つまりSOSを発信するよりほかなくなってきます。
それが犯罪行為であったり、自傷行為であったり、いじめの問題だったりにつながることが多いのではないかと私は思っています。


ただここで、両親は「私はここまでこの子を追い詰めたのだ」と必要以上に自分を責めることはありません。
そこには両親それぞれの性質や価値観、抱えている問題だけではなく、夫婦の関係性、親子の関係性、子ども自身が課題として抱える問題やその子の性質(愛情深い、こだわりが強いなど)、家族が全体として抱えている問題、家族間それぞれの相性など、さまざまな要素が関係していて、一概に親が原因だと言えるものではないからです。
ひとつ言えるとしたら、
「万引きというSOSを私の両親はちゃんと気づいて、受け取ってくれる」
という信頼を、娘さんがRさんご両親に寄せていたからこそ、今回の問題が起こったのではないかということです。

そしてこのことは、もうひとつの観点である
「両親(家族)を助けるために、身を挺して悪役を買って出た」
にもつながっています。


では、具体的にそれはどういうことなのでしょうか。
その基本的な考え方の解説は、唐突ですが根本師匠のこちらの記事に譲りたい(助けを求めたい笑)と思います。

家族の5つの役割 ~組織・グループの問題解決に役立つ視点~

この記事をもとにすると、今回娘さんは「4.ヒール(問題児)」となり、万引きという事件を起こしたと言えます。
もし娘さんがSOSを必要としていたならば、万引き事件が起こった時点でRさん自身、Rさんの旦那さまもまた、何らかの(意識的、無意識的)SOSを必要としていた可能性がとても高いということです。
娘さんは万引きをすることで、自分のみならず両親のSOSの肩代わりまで一手に引き受けてくれた、と言えるかもしれません。

このSOS発信を通して、Rさん家族の個人それぞれが、Rさん家族が全体として、現在抱えている問題解決のためにお互いに向き合い、一緒に取り組んでゆくこと。
それこそが、娘さんが今回万引きをした理由なのではないかと思います。


▽△▽△


「子供が万引き=チャンス」というのは若干カチンとくるタイトルだったかもしれませんが、ここまででその意図に少しでも納得していただけていればいいなと思います。

娘さんは今小5ということで、思春期の手前、(Rさんの文面の雰囲気からはおそらく賢くて能力の高いお嬢さんなのだろうということを感じますので)もしかしたらもう自己内面的な思春期に入っているかもしれませんね。
そうなると、今ここで家族の問題と向き合い、関係性を再構築するチャンスが訪れたということは、Rさん家族にとってますます大きな意味を持つのではないでしょうか。

娘さんが身を挺して起こした万引き問題の解決をベースとして、これからどのように娘さんと向き合ってゆくか、そしてRさんご自身、旦那さま、家族全体としてどのように向き合ってゆくのか。
その参考にしていただけるようなお話ができればと思います。


先ほどもお伝えしましたが、目標は

《万引きを引き起こした問題を解決すること》

ですよね。

目標達成のためのキーワードは、
「対等性」と「信頼」
です。

娘さんのことを「まだまだ善悪の分からない子ども」ではなく、「今回ヒール役となり、家族のSOS発信を一手に引き受けてくれた仲間」として見てあげてください。
そんな大役を自ら引き受けるまでに成長したのだ、それだけの度量のある子なのだ、と信頼してあげてください。

また、普段、あるいは今回の事件が起こった背景において、Rさんと旦那さまはどの役割につく傾向があったでしょうか?
どんな役割であれ、 “グループの中でそれぞれの役割を「愛をもって担っている」” とするならば、そこに上下関係はなく、三者は対等なはずですよね。
娘さんを、ご自身を、そして旦那さまを、ともに問題解決に向かう「対等な」仲間として「信頼」することを意識してみてください。


娘さんはどうして万引きをしようと思ったのか。
実際に万引きという問題行動を起こした背景には、何があったのか。

娘さんに話を聞く中で、娘さんの意見や考えや思いを「矯正」するのではなく、三人で話し合ってその背景にある問題を紐解いてゆく、というイメージを持つといいかもしれません。
「娘がそう思う背景には、家族間のこのような関係性があったかもしれない」
「学校や友だちとの関係に、無理や我慢があったのかもしれない」
「娘が自分のつらさを話せる雰囲気が、家庭になかったかもしれない」

そこから、
「ああ、私も家の中でつい我慢しちゃうことあるな」
「自分もいつも、つらさを感じても見て見ぬふりをしているかもな」
などと、娘さんが感じていた問題を家族のそれぞれが「自分の問題」として見ることができるのですね。

そうして感じられたことを、相手を「信頼」してぜひシェアしてみてください。
「私はこう思う傾向があるんだよね」
「あ、それ分かる」
「自分には分からないけれど、こうしたら、我慢を減らしてゆくことができるんじゃないんだろうか」
「ぜんぶは無理だけれど、伝えたいことはもっと伝えるようにするのがいいのかもね」
「それはもしかして家の中だけではなく、学校や職場でも有効な方法かもしれないね」

そんな話し合いができる家族の関係になったなら、娘さんが起こした万引き事件を恩恵とさえ感じられるようになるのではないでしょうか。


そして、今このタイミングで「対等性と信頼」を親から得られるということは、これから思春期に突入し、自立してゆく娘さんにとって、これほど心強く、ありがたく、誇らしいことはないと思います。
生きていくうえでの大きな自信や力になることは間違いありません。
娘さんの人生全体においても、ものすごく大きなギフトを与えてあげられるチャンスだと思うのです。

同時に、今回の問題の解決を通してそんなギフトをふたり揃って娘さんに与えてあげられるときには、Rさん夫婦の関係性も今よりさらに良いものになっているのは間違いないのではないでしょうか。


最後に余談になるのですが、現在の「我が家の場合」のシェアを少々。笑

公立高校1年の息子は去年、受験勉強に意味を見いだせず、散々の内面的葛藤を抱えながらも一切の受験勉強を放棄したうえで、合格確実の高校を受験して進学しました。
今、高校に通うことに意味を見いだせず、辞める辞めないと再び葛藤しています。
問題を先送りしたので当然の結果だよね~、と思うのですが、最終的に彼は自分で問題を解決できる、という信頼のもと、思春期男子ならではの理屈っぽい愚痴や文句を聞いたりそれぞれの意見を話し合ったりしています。

そして無視できないのが、この問題先送り、私自身に当てはめても絶賛進行中の問題なのですね。汗
そろそろ本腰入れて向き合うか、ということで、そういう対話を通じてそれぞれの問題に対峙するきっかけやヤル気や勇気を与え合っているところです(具体的な話はあまりしていませんが、旦那も新年度から仕事上でなんやかんや起こっているみたいです)。

こんなふうに時にはそれぞれの個別の問題がリンクしながら、時にはRさんのように家族全体の問題として否が応でも取り組まざるを得ない事件に立ち向かいながら、その時々で役割を変えつつ、ともに苦しみや喜びを得ながらなんやかんや乗り越えつつ生きてゆくのが家族の醍醐味なのかなあと思います。

問題を起こさない、失敗しない子を育てることはおそらく不可能ですが、問題が起きたり失敗したときに、対等性と信頼をベースにともに解決に向かうことのできる関係性を育てることは可能ですし、その関係は将来に向けてどんどん深まり、広がってゆく感じがしますよね。


Rさん家族に万引き事件の恩恵が訪れるよう、心から応援しています。


お読みいただきありがとうございました!

※ 万引きに関してこちらでも回答していますので、よろしければ参考になさってみてください。
【ココロノマルシェ回答】自ら罪を犯してまで望んだことと、そこにあるふたつの物語とは?


■真中 愛【ライフストーリー インタビュー/カウンセリング】

ご感想・お問い合わせ


⇓ そのほかの回答はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?