見出し画像

期待を軽々と超える街/夏のイタリア・アマルフィ

iPhoneのホーム画面をいちばん左までスライドすると出てくる画面(いま調べたらウィジェット?であってる?)の最上部が、ランダムで写真が表示されるものになっている。これ、たぶん「○年前の今日周辺の日」に撮られたものが優先的に表示されるよね?毎夏、8月のお盆の時期はどこかしらに旅行に行っていたので、すごく懐かしい写真がたくさん出てくる。今日の1枚は、5年前(5年前!)のイタリア旅行の写真。写真ってすごいよね、思い出が、その写真を皮切りに次々と心に現れる。


ローマからはじめて、ナポリ、カプリ島、アマルフィ、フィレンツェ、ヴェネツィアと、1週間ほどでまわりにまわった日々。その年はイタリアでもまれな少雨な夏だったようで、ほんとに灼熱ななか、どこにいってもあるジェラートと水飲み場に助けられてあるき回ったこと、よく覚えている。

ローマの遺跡も、ヴァチカンの大聖堂も、フィレンツェの教会も、ヴェネツィアの街並みも、ぜんぶぜんぶすばらしかったんだけど、いま振り返ってやっぱりあそこは夢だったんじゃないかな、といちばん思うのは、アマルフィとカプリ島。なんというか、完璧すぎたのだ。女の子の(という表現は性差別的かもしれないけれど自分がついこないだまで女の子だったので使っちゃおう)夢というか、期待というか、イタリアの夏、南ヨーロッパの夏に求めるものが、詰め込まれていた。すべてそろっていた。まじで。

あまあまですこしほろ苦い老舗のバールのレモンケーキ、積んであるオレンジをその場で絞ってフレッシュなジュースにしてくれる陽気なおじちゃんのジューススタンド、4畳くらいのお店の中にファンタジーを詰め込んだみたいな手漉き紙のお店(タロット柄のレターセット!)、さくさくのイカのフリットとレモンクリームのパスタ、しゃりしゃりなフルーツのソルベとミルキーなジェラート、お魚柄のカラフルな陶器たち、マンドリンを模したガラスの瓶に入れられたリモンチェッロ、赤や青の糸で刺繍や縁取りがされたリネンのエプロンやテーブルクロス、いたるところにある細くて急な階段と、そのうえにまるでガーランドにように吊るされて風になびく洗濯物、ベスパに2人乗りする若いカップルたち、レストランで食事するおじいちゃんとおばあちゃん、のんびり昼寝するねこ、、、

この完璧さ。非の打ちようのなさ。
どこをみても、なにを食べても、誰にあっても、小さな脳みそが期待していた「南イタリアの夏」を、軽々とこえてくる。さらに追加して、この街の人はみな、ことごとくフレンドリーなのである。かわいいジャポネーゼが来たわねとお皿をおまけしてくれるおばちゃんに、通り過ぎればBella!とさけんでくれるおじさん、そのドレスとても美しいわと声をかけてくれる若い女の子…

これだけの街なのだ。よそから人が大量に来ること、そしてその人達がこの街に特有の文化に憧れを持っていること、そしてその人達が落とす大量のお金で(良きにつけ悪しきにつけ)おそらくはこの街の経済が回っていること。住んでいる人、そしてこの街で働く人はみな、きっと生まれたときからその文化のなかにいて、これらを深く理解しているのだろう。

国の持つ文化を守ること。街の持つ魅力を最大限に活かすこと。そしてそれらをもとに、観光をとても大きな一つの産業として扱い、成立させていること。
この国に訪れたいと願う人が後をたたない理由は、とても明確だな、と思う。

画像1


この記事が参加している募集

ほめられてのびるタイプです