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未来のために持続可能ではない現状を理解する

『持続可能性』という言葉は広く浸透し、SDGsが多くの分野で語られています。しかし、現状が持続可能でない現実は十分に認識されていません。例えば、世界人口を考慮すれば、持続可能でない農業は数億人単位の餓死者を生む可能性がありますが、豊かな日本で餓死者が出ると考える人は少ないです。しかし、化石燃料が使えなくなることは、化学肥料が存在しなかった江戸時代末期の人口水準に戻るまで、餓死者が発生する可能性があることを意味しています。

 私は環境学と資源経済学の専門家として、長年にわたりアフリカ諸国で再生可能エネルギーの導入やアグロフォレストリー事業に従事してきました。この経験から、日本の総合商社やエネルギー関連企業の経営者たちと意見を交わす機会も多くありました。

 彼らの多くは約30年前に、環境事業ではなく、当時の重要産業に入社しており、地球環境問題に対する理解が著しく欠如しています。そのため、彼らが発信する情報が完全に的外れであることも少なくありません。それにもかかわらず、多くの人々はその情報を無批判に受け入れてしまう傾向があります。

 日本経済は長年、資源の大量消費を前提とした成長モデルに依存してきました。化石燃料の大量消費や大量生産を促進する政策が続く中で、地球規模の環境問題が深刻化しています。

 持続可能な未来を実現するには、まずこれらの問題を正確に理解し、現状に即した解決策を模索することが不可欠です。具体的には、再生可能エネルギーの導入、資源の循環利用、地域コミュニティの活性化が求められます。しかし、国内には再生可能エネルギーを導入するための適切な土地が限られているため、資源輸入国として、資源産出国からのサプライチェーン全体を通じて環境負荷を軽減する必要があります。

 この問題解決には、企業だけでなく、政府、学術機関、一般消費者も積極的に関与する必要があります。私たち一人ひとりが、持続可能性への理解を深め、環境負荷を増大させる誤った取り組みを見逃さないための知識を身につけることが重要です。

 1997年の京都議定書採択時点で、この基礎知識は日本国民に真剣に受け止められるべきでした。しかし、四半世紀にわたる的外れな環境政策の結果、多くの日本国民はいまだに基礎知識を欠いています。この無知を自覚し、改善することが、持続可能な未来への第一歩です。

武智倫太郎

【以上、原稿のタイトル、著者名込みで、1000文字以内です】

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