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環境問題を理解するために必要なプラスチックの基礎知識 (3)

環境問題から考えるプラスチック、ゴム、シリコーンの違い

 100円均一ショップに行くと、ゴムなのかプラスチックなのか微妙な鍋敷きや耐熱手袋などの製品を見かけることがありますが、皆さんはそれらがシリコーン製だと知っていましたか? シリコーンはゴムのような性質を持つものもありますが、例えば、テフロン加工のフライパンを傷つけないためのシャモジのような、少し硬めのゴムのようにも、柔らかめのプラスチックのようにも見える製品も、実は耐熱シリコーン製です。

 余談ですが、テフロン加工の『テフロン』も、テフロン樹脂と呼ばれるフッ素樹脂なんです。樹脂って凄いですよね。…っていうか、凄くなくなくないですか?

 さて、話を元に戻すと、シリコーンには『シリコーンオイル』のような液体状のものもあります。いずれもシリコン(Si)を基盤とした化合物ですが、半導体で使われるシリコンは『シリコーン(silicone)』ではなく、元素としての『シリコン(silicon)』です。

さまざまな樹脂の特性

 樹脂の観点から見ると、『プラスチック』、『ゴム』、『シリコーン』は、いずれもポリマー(高分子化合物)ですが、それぞれ異なる特性を持ち、用途が異なります。これらの違いは、主に分子構造や物理的性質、化学的な加工方法に由来します。

1.プラスチック(樹脂)
 プラスチックは一般的に合成樹脂として知られ、熱可塑性樹脂(熱で柔らかくなり、冷却すると硬くなる)や熱硬化性樹脂(硬化後は再加熱しても形が変わらない)があります。プラスチックの基本構造は、石油由来のモノマーが重合してできたポリマー鎖です。

熱可塑性樹脂:ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)などが代表例です。これらは繰り返し加熱・冷却によって成形が可能です。製品例としては、食品容器、パイプ、フィルムなどがあります。

熱硬化性樹脂:フェノール樹脂やエポキシ樹脂などがあり、一度硬化すると再加熱で変形しない特性を持ち、電気絶縁材料や接着剤として広く使用されています。

2.ゴム(エラストマー)
 ゴムは弾性を持つ高分子材料で、天然ゴムと合成ゴムに分類されます。ゴムはエラストマーとも呼ばれ、その特徴的な性質は『弾性(伸縮性)』です。

天然ゴム:天然ゴムはラテックス(樹液)から生成され、ポリイソプレンの繰り返し単位で構成されています。加硫(硫黄を加えて硬化)処理により、強度と耐久性が向上します。

合成ゴム:合成ゴムには、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)やニトリルゴム(NBR)などがあり、耐油性や耐熱性など、使用目的に応じてさまざまな性能を持つように設計されています。ゴムの特性としては、引っ張っても元に戻る弾性や衝撃吸収性が特徴です。

3.シリコーン(シリコーン樹脂)
 シリコーンは、ポリシロキサン(Si-O-Si骨格)をベースとした独自の化学構造を持つ高分子です。プラスチックやゴムと異なる点は、主鎖がシリコンと酸素で構成され、炭素鎖に依存していないことです。

シリコーンの弾性:シリコーン樹脂は、ある程度の弾性を持つエラストマーとして使用されることが多いですが、ゴムと比較して耐熱性や耐寒性、化学的安定性に優れています。たとえば、シリコーンゴムは広い温度範囲で弾力性を維持し、電気絶縁性や撥水性を備えています。

シリコーンの樹脂特性:シリコーン樹脂は、耐熱性、耐候性に優れているため、家電のシーリング材や医療用のインプラント、さらには食品グレードの製品にも使用されています。プラスチックに比べてより柔軟で加工し易い一方、長寿命であることも特徴です。

樹脂の観点での比較

・プラスチックは分子鎖が比較的硬く、加工し易いですが、弾性に乏しいため、主に硬い製品に利用されます。成形後は強度や剛性が必要な用途に適しています。

・ゴムは弾性を持つため、衝撃吸収材や伸縮性のある製品に適しており、特にタイヤやガスケットなど、変形が頻繁に起こる用途に使用されます。

・シリコーンは、ゴムのような弾性とプラスチックの耐久性を兼ね備えており、温度や化学薬品に対する耐性も強いため、特に過酷な環境下での使用が求められる場面で重宝されます。

環境問題から見たプラスチック、ゴム、シリコーン

 現代社会で広く利用されているプラスチック、ゴム、シリコーンは、それぞれが持つ優れた特性により、私たちの日常生活に欠かせないものとなっていますが、これらの材料には環境問題の側面もあります。特に持続可能な開発や廃棄物管理の観点から、それぞれの材料がどのような影響を及ぼしているのかを考えることが重要です。

プラスチックの環境問題

 プラスチックは、その耐久性の高さと分解されにくい特性が、逆に環境への深刻な影響を及ぼす原因となっています。特に、使い捨てプラスチック製品が廃棄されると、自然環境での分解には数十年から数百年かかり、その間に海洋プラスチックごみやマイクロプラスチックの問題が顕著化しています。海洋に漂うプラスチックは、紫外線の影響で光分解が進むことがありますが、海底に沈んだプラスチックは光が届かず、分解がほとんど進まないため、数百年以上残存する可能性があります。

 海底では、酸素や光が不足し、気温が低いため、プラスチックの分解速度がさらに遅くなります。このため、海底に沈んだプラスチックは、実質的に千年単位で残る可能性があり、物理的に崩壊してマイクロプラスチック化することはあっても、完全に分解されることは極めて困難です。

 また、プラスチックの製造過程においては、石油を原料とし、多量の二酸化炭素(CO₂)を排出します。このため、プラスチックは気候変動にも直接的な影響を与える素材です。このような問題に対処するため、バイオプラスチックや再利用プラスチックの開発が進められていますが、それらの素材も分解速度や製造過程でのエネルギー消費において、依然として多くの課題を抱えています。

ゴムの環境影響

 ゴムに関しても、天然ゴムと合成ゴムの両方が環境問題に関連しています。天然ゴムの生産は主に熱帯地域で行われており、森林伐採による生態系の破壊が問題視されています。一方、合成ゴムはプラスチックと同様に石油由来の材料であり、その製造過程や廃棄時における環境負荷が大きいです。さらに、ゴム製品は分解されにくく、廃棄後は埋立地での長期間の存在や、ゴム粒子が自然環境に流出することで問題が発生します。

シリコーンの環境への影響

 シリコーンはプラスチックやゴムと比べると、環境への影響が比較的少ないとされています。シリコーンは耐久性が高く、長期間にわたって劣化しにくいため、使用回数が多い製品に適しています。また、シリコーンは高温でも安定し、他の樹脂よりも燃焼時に有害物質を発生させにくいことも利点です。しかし、シリコーンも完全に無害ではなく、廃棄されたシリコーン製品が埋立地に蓄積されることで、長期的な環境負荷が懸念されています。さらに、シリコーンの製造には化学処理が伴い、その過程でのエネルギー消費や化学物質の使用も問題視されています。

結論

 プラスチック、ゴム、シリコーンはいずれも私たちの生活を支える重要な材料ですが、それぞれが環境に対して異なる形で影響を及ぼしています。プラスチックの使い捨て文化やゴムの製造・廃棄における環境負荷、シリコーンの製造工程における課題など、多くの問題が未解決のままです。今後は、これらの材料の代替技術の開発やリサイクルの強化、持続可能な製造プロセスの導入が求められています。持続可能な未来を実現するために、これらの問題に対する意識を高め、具体的な行動を起こすことが重要です。

天然資源由来 樹脂(プラスチック製品をつくるための原料)の 種類別生産量(2017年)

 ちなみに、レジ袋やストローに使われているプラスチックは、日本全体のプラスチック消費量の0.1%にも満たない量です。リサイクルされていない廃プラスチックに限ったとしても、その量は1.2%に満たないとされています。

 さらに、レジ袋を廃止してマイバッグに切り替えたとしても、生ごみをどのように処理するのでしょうか? 腐敗しかけた生ごみをそのまま持ってゴミ捨て場まで運ぶのは現実的ではありませんよね。少量の生ごみであれば、結局のところレジ袋を使って捨てることになるでしょう。つまり、エコバッグ運動やレジ袋の有料化は、実際にはほとんど意味がないと言えます。寧ろ、不要なエコバッグやマイバッグを生産するために消費されるエネルギーの方が、環境に対する負荷が大きい可能性があります。

 レジ袋有料化政策は、完全な政策の失策であり、この制度を導入した小泉進次郎元環境相も、その失敗を認めています。しかし、実際にはこの政策は小泉元環境相の就任前から方針が決定しており、彼自身も『自分が決めたわけではない』と発言しています。

 それでも、小泉元環境相はこの制度の実施に関与していたため、その結果について批判を受けています。また、彼は責任転嫁とも取れる形で、この政策の発案者が原田義昭元環境相であると指摘しました。しかし、この言い訳が通用しないのは、小泉元環境相には就任後に法案を廃案にするか、制度の見直しを指示する権限があったからです。自分が推進した法案を他人のものだと発言することは、政治家としての資質に問題があると言えるでしょう。

 小泉進次郎は、大喜利のネタとして絶好のコメディアンのように受け止められており、『レジ袋』や『進次郎構文』は大人気です。しかし、彼の発言や行動が話題になる一方で、彼が環境相時代にプラスチック問題に対して何をすべきだったかという具体的な指摘を見つけることは困難です。

 そこで、私が考える具体案をここに示します。彼が環境相として指示すべきだったことは、経産省や文科省と連携して、バイオマスや生分解性プラスチックの研究予算を増やすことでした。環境省は『脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業』として年間35億円以上の予算を持っていますが、それ以外にも研究開発費を柔軟に活用することは可能でした。

脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業

 さらに、日本はバイオプラスチックを製造するための炭水化物、脂質、蛋白質が不足しているため、外務省と協力してアフリカ諸国の農業開発予算を拡大し、アフリカの飢餓問題を解決しつつ、日本のバイオマス資源確保と、バイオプラスチック原料の製造技術の海外移転を実現することができたはずです。

 大量のバイオマス資源を日本に輸入して国内でバイオプラスチックの最終製品を作ることは、物流にかかるエネルギーが無駄になるだけでなく、日本にはバイオマスを保管する十分な場所がなく、植物検疫の手間も非常に大きな問題となります。

 しかし、アフリカ諸国でバイオマス資源から高純度のバイオエタノールを製造し、蛋白質や脂質を抽出してから日本に輸入すれば、物流にかかるエネルギーを最小化できるうえ、植物検疫も不要になり、バイオマス資源が害虫やカビ、病原菌を媒介する可能性も排除できます。

 さらに、日本には閉鎖された石油精製所が多数存在しており、これらの施設にバイオマス原料を備蓄し、蒸留設備を改造することで、問題なく処理することが可能でした。

 日本が必要とするバイオマス資源の全量くらい、私のモザンビークの会社でも供給可能です(笑)

武智倫太郎

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