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家族に伝える経済シリーズ(42):株式市場の光と影 ー キャピタルゲインとインカムゲインの現実

昔、石川英輔(注)さんという作家が『2050年は江戸時代』という小説を書いていた。
あまり知られていない作品やけど、なんだか現実味がある話に思えてくるな。
その小説の中では、未曾有の大災害によって日本が後進国化するという未来が描かれている。
食糧危機が起きて人口が激減し、多くの人が命を落として、江戸時代のような生活に戻る……というストーリーや。
もしかすると、石川さんの予言(?)が当たるかもしれん、なんて思うことがある。

儲ける基本 ー 安く買って高く売る

さて、本題に戻ろう。補助金の話が出たけど、普通に儲けようと思ったら、「安く仕入れて、高く売る」という基本が必要なんや。これは金融経済でも同じことやね。
例えば、企業の株式価格はその企業の経営状況や、社会の景気、政治的な状況など、いろんな要素で変動する。
その動きを見ながら、安く株を買って高く売れば利益が出る。それをキャピタルゲインという。前回、この仕組みについて少し触れたな。
株取引をする人たちは、こうして利益を得ることを狙っている。

株式のもう一つの魅力 ー インカムゲイン

実は株式にはもう一つの魅力がある。それがインカムゲインや。
インカムゲインは、株を持つことで企業から配当を受け取る仕組みやね。これは比較的長期で株を所有して、毎年の配当を期待するというスタイルや。
例えば、株を買う目的が「利益を得ること」だけではなく、その企業を応援したいから、という人もおるかもしれん。
そういう投資家は珍しいかもしれんけど、「社会を支えるための投資」って意味では素晴らしい考え方やね。

投資と投機の違い

インカムゲインを目的とする場合、株を短期で売り買いすることはあまりない。だから、これは「投資」の意味合いが強い。
本来、株式や株式会社のあり方は、こうした長期的な視点で企業を支え、利益を分け合う形が理想やった。でも、最近の金融経済ではそうとも限らん。
短期間で大きな利益を狙う「キャピタルゲイン」に注目が集まりがちや。
株式を安く買って高く売ることで儲けることが、今では株式市場の中心的な活動になっていると言える。

株の売買で大儲けをする人たち――あるいは大損をする人たち――は、いわゆるトレーダーと呼ばれる人々や。
昔は「株式相場師」なんて呼び方もあったけど、今はそんな言い方はあまりせんかもしれんな(笑)。
彼らの活動が市場に与える影響も大きいけれど、その一方で、本来の「投資」としての株式の役割は薄れているように感じる。
短期的な利益ばかりを追い求めるのではなく、もう少し長期的な視点で企業を支える投資が増えるとええな、と思うこともある。


(注)「石川英輔(いしかわ えいすけ)」
日本の作家、SF小説や歴史小説の分野で活躍した人物。特に江戸時代をテーマにした作品を多く執筆し、未来の視点から過去を捉えた独自のスタイルが特徴的。代表作に『大江戸神仙伝』や『SF西遊記』などがある。また、江戸時代の庶民生活や文化を描写したエッセイも執筆しており、現代の視点で江戸文化を再評価する内容が多い。

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