『ラベンダー畑と私の旅』/掌編小説・ショートショート
私は数時間の旅を終えて到着した。
はじめて訪れる、きれいな土地だった。
一面に広がるラベンダー畑。
この時期にして正解だ。
鮮やかな紫が美しく私を癒してくれる。
私は背が高い。
高い靴も履いていないのだけれど、どうしても目立ってしまう。
今日もまた、すれ違う子供たちが驚いて逃げていった。
「お花を踏まないように気を付けて」
つい鋭い声を出してしまう。
気を取り直してラベンダーの香りを楽しむ。
ひざを曲げて中腰になると丁度いい高さだ。
良い香り。花は素晴らしい。
目をすべて閉じて、きれいな空気と吹き抜ける風を感じていると、サイレンの音が近づいてきた。
時間切れ。
やはりまた、目立ってしまったようだ。
私は黒い盾を持った機動隊の群れに囲まれた。彼らはこちらに大きなスピーカーを向けて、銀河系地球法の条文を読み上げている。もう何度も聞き飽きている警告だった。
もっと、このきれいな花たちを眺めていたかったのに。
私は長く息をついて立ち上がると、ゆっくりと後ろに下がって、敵意のないことを示しながら宇宙船へと戻った。
次はヒマワリという花を見たかった。
行き先をホッカイドウという場所に設定して、私はまた旅立った。
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