【連載小説】「緑にゆれる」Vol.15 第二章
カケルは、椅子の背もたれに寄りかかって黙って話を聞いている。
「働いていたときは、同じ方向を向いていた気がするのに、今は同じ空間にいても別の方を向いている気がする」
結婚して五年間は、子どもができなかった。正確に言えば、できないようにしていた。ディンクスを楽しみたい、という気持ちの方が強かったのだ。恋人の雰囲気を残しながら、一緒に生活をする。今よりずっと身軽で、ほんのり幸せだったころを思い出す。
「それ、やばいな」
突然、ぽつりと言ったカケルの言葉に、どきんとし