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ミナオ枠

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幼い頃から親父に虐待され、高校時代は女に翻弄され、やっと穏やかな日々を迎えたと思ったらハタチで死んでしまい、幽霊になった水尾健司とその周辺のエピソードを纏めました。
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記事一覧

我が善き片羽

 ケンジ君が亡くなり、不思議なことに幽霊となって戻ってきて、ずっと一緒に居られるかと思っ…

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君に花束を 5

 來河池の困惑  隣に越してきた水尾健司という男は、どうにも攫みどころがなく、他人に説明…

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君に花束を 4

 小山の印象  閑古鳥が啼いていた映画研究会に、新入部員がおれを含めて五人入った。鴨が葱…

君に花束を 3

 エミとふたりの男  夏休みを間近に迎えた或る日、電車に乗っていたら気分が悪くなってきた…

君に花束を 2

 今井の気持ち  大学に入って半年もしない夏休みに、水尾は高校の時からつき合っていた女と…

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君に花束を

 水尾と母  母が精神的に駄目になってしまった小学四年の終わり頃から、家のことをすべてや…

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さよなら、バイバイ。

「あんたはもう、おれに会わない方がいい」  真夏の公園のベンチに腰掛け、隣に座った菊代にそう云った。  彼女は不思議そうにおれを見つめ、「どうして?」と訊ねてきた。どうしてと問われても、なんとなくそう思っただけで理由まで決めていなかったので、少し考えてしまった。よく考えてみれば、おれはアキの寄越す女たちの背景をまったく知らなかったのだ。  断片的な情報としては、「若手サラリーマン相手のコンパ仲間」くらいしか把握していなかったのである。断片的も何もない。それしか記憶になかった。

幽霊

 水尾が死んだ時、自分も死んでしまおうかと思った。が、おれの気持ちが通じたのか、彼は幽霊…

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よしなしごと

 高校二年くらいの頃から胃が悪くなった。  友人の今井に云わせると、「あんな生活してるか…

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人物裏話——水尾とエミの会話篇。

「何がいいんだ」 「えーとね、ミルクティー」 「そんだけか、喰いもんは」 「高いからいいよ…

人物裏話——今井の親篇。

 中学一年の夏休みに、今井の親が海へ連れて行った時のこと。 「数見、お茶持ってきたわよ。…

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人物裏話——高校教師篇。

「加納先生、おたくのミズオとうちの今井は随分仲が良いですね」 「ミズオじゃなくてミナオで…

高校時代

 高校に入って、同じクラスに妙な雰囲気の男が居た。ぼさぼさの頭をして、長い前髪で顔の半分…

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人物裏話——水尾と今井の会話篇、4。

「おれの前から二度と居なくなるなよ」 「それは……」 「何も考えずに答えろ」 「判った、約束する」 「いいか、今度消えたらぶっ飛ばすからな」 「消えたらそんなこと出来ないんじゃねえの」 「挙げ足を取るな」 「はいはい」 「返事は一回」 「はい」 「幽霊なんだから死ぬことはないだろうけど、ミナオは粗忽だからなあ」 「粗忽ってなんだよ」 「粗忽だろ。親父が殴らなくても痣だらけだったじゃねえか。今でもあるのか」 「服を脱がすな」 「ちょっと見るだけだから」 「脱ぐとなくなるかも知れ