山田エズミ

活字中毒の成れの果て。読めるものであればなんでもいい。読めるものがなければ自分で書く。自給自足のエコライフ、と謂う訳でもない。

山田エズミ

活字中毒の成れの果て。読めるものであればなんでもいい。読めるものがなければ自分で書く。自給自足のエコライフ、と謂う訳でもない。

    マガジン

    • 散文枠

      まあ、適当なことを書き綴ったものであります。

    • 亮二枠

      ナナシというバンドをやっている木下亮二と、その周辺のエピソードを纏めました。

    • アタゴオル通信

      とびだしあつまる『どうぶつの森』に翻弄される日々を綴ったものです。

    • ハルミと武田枠

      幼なじみのハルミと武田、そのふたりと親しくする川上麻衣子の物語り。

    • その他枠

      創作系の、シリーズではないものを纏めました。

    最近の記事

    作文。

     外国のことはよく知らないが、日本の学校は早い時期から子供に文章を書かせる。所謂「作文」である。何かの催し、学芸会や遠足、課外授業などがあった折、その感想を原稿用紙に数枚ほど書かせる。教室で書かせることもあれば、宿題として出す場合もあるだろう。  宿題にすると、不正を働く惧れ(他人に書かせる、または誰かが書いたものを写す)があるので、教師は心した方がいい。  わたしは国語の成績はずっと良かったが、この作文が苦手だった。読書感想文ならいけるのだが、作文となると、己れの行動に何か

      • 秋の夜

         同居人の清世が窓を開けて、「木下さん、月がとてもきれいですよ」と声を掛けた。コンピューターに向かっていたので眼鏡を掛けていたから、そのままベランダへ出た。彼女は手にカメラを抱え、嬉しそうに空を見上げている。写真を撮ることが趣味なのだ。趣味があることはいい。  まん丸の大きな月が雲を脇へ従え、東の空に掛かっていた。 「大きな月だな」 「はっきりして、色も濃いです」  そう云って清世は空へレンズを向け、シャッターを切っている。玄人が使うようなカメラではない。月を撮ったところで豆

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        • 生活の糧

           ライブという言葉をご存じない方はあまりいらっしゃらないと思います。点々を取るとライフ、生活、人生といった意味になりますね。どちらも英語です。  で、ライブというのは生のことです。テレビを見ると、NHKなんかはたぶん今でも生中継と書いてあると思いますが、民放では画面の端っこにライブと書いてある。実況中継していますよ、って意味ですね。記者会見とか国会中継とか。国会の場合、中継とあるのに録画のことがあるんですよね。意味が判りません。  以前、ライブと云えば、ロックやポップスのコン

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          • 趣味

             此処に木下亮二という男がおります。他人には変わり者だとよく云われるのですが、本人はそう云われるのを非常に嫌うので云わない方がいいです。怒りゃしませんけどね、そんなことでは。  で、この男は趣味でバンドなんかやっている。趣味があるってのはいいですね。どんなに忙しいひとでも、ぽかっと時間が開いちゃうことがある。そうなると、趣味がないひとは時間を持て余しちゃう。なんにもすることがないなあ、閑だなあ、って、ごそごそポテトチップなんか喰っちゃう。で、太っちゃうんですね。よくありません

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            愛情物語

             食慾の秋と云うが、秋になったからと謂っていきなり食慾が増す訳ではない。これは作物の収穫時期が集中しているのと、涼しくなってくるので夏のように食べるのもしんどい、と謂うことがなくなるからであろう。  如何せん、わたしはもともと食慾旺盛な方ではないので、年間を通じてあまり食べない。年を喰ったらますます食が細った。それに伴い、あちこち衰えてきた。もう、衰えていないところはない、と謂うくらい衰えまくっている。衰え大王だ。  キング・オブ・衰弱。国民は息も絶えだえの蚊蜻蛉である。国旗

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            猫日誌 其の捌

             人生の壮年期に当たる四十代も終わり、とうとう五十才になった。中年と老年の境目になるのであろうか。気分的には既に爺いである。もともと若々しい部分が少なかった。少ないものがどんどん目減りして、今では若さなど欠片もない。  若さがないのに、若者相手にロックをやっている。まあ、観客は三十代が多いのだが。  バンドなどと謂う浮ついたことをやっていても、職場では部長である。そんな柄ではないのだが、名刺の肩書きはそうなっている。やっていることは転属されてから変わっていない。図書センターと

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            神の山

             海岸線の道は、夏の強い陽射しを浴びてぎらぎらと輝いている。陽炎の立つ向こうが目指す磯である。  お盆休みが重なって清世と出掛けることにしたが、もっと遠い処にすれば良かっただろうか。彼女は何処へゆきたいとは云わないので、適当に決めて仕舞った。今度からリストを作って、行きたい処に丸をつけてもらおうか。三角でもペケでもいいが。  颱風が去ったばかりなので風が強く、清世の差す黒い日傘は煽られて飛んでゆきそうだった。海辺で日傘を持って佇む女を見たことがある。あれは何処でだったか、と記

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            かわいいひと

            「髪の毛を乾かしましょうか」 「やっていただけるのですか」 「はい」 「では、お願い致します」 「結構多いですね」 「そうか?」 「髪質もしっかりしていますから、禿げることはないと思いますよ」 「そりゃ良かった」 「禿げても似合いそうですけど」 「あ、そう」 「でも白髪にはなりそうですね」 「それはどうでもいいけどな」 「そうなんですか」 「なんか社長見てたら、白髪も悪くない気がしてきた」 「社長の髪は、本当にきれいですよね」 「顔も可愛いよな」 「可愛いというか、きれいです

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            ひとりのひとつ

             職場の後輩である武田宏治君は、非常に真面目で勤勉で、見た目も宜しく、非の打ちどころがない青年である。敢えて非を挙げるのならば、まだ若いので収入がさほどでもなく、同居人が居ることであろうか。  その同居人は女性ではなく、つまりは男性で、だからと謂って彼は同性愛者ではなく、寧ろ保護者的立場で共に暮らしているのである。このような献身的態度を示せる二十代の男を、普通に行動していてなんの努力もせずに見出せると思っているのならば、それは夢見がちにもほどがあるし、愚の骨頂と云っても間違い

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            猫日誌 其の柒

             二年前に実家を譲り受け移り住んでから、妻と能く散歩するようになった。アパート暮らしの時はふたりで出掛けると謂ったら買い物くらいで、それも車が多かった。彼女もわたしと同じ職場で働いていおり、忙しくしていたので致し方ない。  前の居住地は近隣の治安が悪い、と謂う評判だったが、住んでみるとそんなことはなかった。  まあ、少し離れた東一区は、洒落にならないほど危険な処ではあったが。なにしろ知人がやっているバンドのボーカリストが、午日中に暴漢に襲われたくらいである。そのボーカリストは

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            春よはるよ

             ぼくの同居人は秋出春世といった。「あきいではるよ」と読む。秋で春の世というのは、なんとも本人の捻くれた性格通りの名前だ、とつくづく思う。今はぼくと同じ沼里姓なのだが。  言葉遣いは乱暴だけれども、面倒見のいいおひと好しの男で、可愛いかわいい彼女が居る二十三才の青年だ。身長一六〇センチ、体重四十七キロ。伸ばした髪が揃っていないのは、自分で切っている所為である。因みに靴のサイズは二十四センチだ。  はっきり云って、男としては小さい。が、態度はでかい。同じ年なのだが、ぼくの方が数

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            「木下さん、動物好きだよね」 「種類に依るけど、まあ、だいたい好きだな」 「兎は?」 「触ったことはないけど、嫌いじゃないよ」 「飼う気ない?」 「ない」 「返事が早いなあ」 「当たり前だろ、うちには猫が居る」 「それは知ってるけど、ケージに入れておけば大丈夫だよ」 「飼わない。なんでそんなことを云いだすんだ」 「学校で兎が生まれたこと、云ったよね」 「ああ、母親が踏みつけて殺すから、飼育係が育ててるんだったな」 「うん。でもさあ、三匹居るんだけど、先生が農家にやるって云うん

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            猫についての覚え書き

             コメとマルが死んで了った。二十二才と十九才だったので、猫としては長生きだが、それがなんだと謂うのだろう。そんなことを人間が身罷った際に、平気で云うだろうか。葬儀に列席して、 「この度は御愁傷様でした。でも、お宅のお爺ちゃん、九十五年も生きたんですもの。もう充分じゃない? 介護も大変だったみたいだし、楽になったでしょ」  と云うか?  肚の中で思っている奴は幾らでも居るだろうが、ことほど迄に明白地に云う奴が居たとしたら、面の皮が鉄で出来ている上に鉄条網が巻かれているのだろう。

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            金魚

             夏祭りで妻の清世が金魚すくいをしてきて、二匹の金魚を飼うことになった。わたしが一緒だったらそんなことはさせないが、近所の子供たちと行ったので止めることは出来なかった。  我が家には猫が七匹居る。庭には通りすがりの野良猫と鴉が居るのだ。  野良猫に来るなとは云えないし、鴉とは非常に親しい仲である。何処で飼うつもりなのだ。冷蔵庫にでも入れておくのか。  考えた末、猫が立ち入らない洗面所に水槽を置くことにした。昔住んでいたアパートでは到底、出来ないことである。  金魚は黒い出目金

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            おりおりに

             子供の頃から動物は好きだったが、動物が家庭に居るようになったのは、妻の清世と暮らしだして猫を飼ったのがはじめてである。近所の飼い犬やそこらを歩いている猫と話したことはあったものの、深いつき合いはなかったのだ。  犬や猫と「話す」と謂うのがひとには奇異に思えるらしく、親にこの子は馬鹿なのではなかろうかと心配されていたらしい。そんなことなど知りもしないので、犬猫どころか、昆虫にまで話し掛けていた。  二、三才の頃だったろうか。夏に庭へ出ると、あちこちに薄茶色の小さな山が出来てい

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            夏の風物詩

             夏の風物詩と謂えば花火である。家庭でやるささやかなものであれ、祭りで上げられる大きなものであれ、子供も大人も虚心を忘れて没頭する。そうした事ごとに親しんだことはあまりないが、否定する気は毛頭ない。楽しいことを否定するなど、有りうべからざる心根ではないか。  楽しいことにも寄りけりであるが、余程の弔事がない限り、花火くらいは認められよう。線香と同じ感覚で、死者を送る手立てとして扱われる場合もある。  近くの海水浴場で花火大会が行われており、庭に居るとくぐもった低い音が聞こえて

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