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生きています。 亮二の「猫日誌」をアップしようにも、前のブログから続きが探し出せない…
ぼくの同居人は秋出春世といった。「あきいではるよ」と読む。秋で春の世というのは、なんと…
村の外れにある、あばら屋同然の茅葺き屋根の家に、その老爺が住むようになったのはいつから…
ずっと昔、とても親しくしていた子が訪ねてきた。 彼はまるで、昨日会ったかのように、 「…
覚えているのは、夏の陽射しを浴びてまぶしく光る大樹の揺れる木の葉だった。あれはなんと謂…
ぼくを引き止める為だったのかも知れない。 彼は声を失い、子供のようになってしまった。 …
それは、昨日かも、今日かも、明後日かも知れない。つまりは、過去かも知れないし、現在かも知れないし、遠く未来の出来事かも知れない。あなたの隣の頁の、そのまた隣。もっともっと頁を繰った向こうの世界であったことかも知れない。なかったことかも知れない。 + 狭くて古いアパートの一室。ひとりの男が目を覚ました。既に陽は傾いている。晩春の午後四時過ぎである。といっても、半地下の彼の部屋は何時でも薄闇に包まれていた。ぼんやりした頭を振りながら、眠りに就いたのは何時頃だったろう
さて、再びお目文字致します。講師の山田です。今回は、ええ、会話についてお話ししたいと思…
妻が死んだ。 自殺だった。まさか彼女が自殺で死ぬとは思っていなかったので、ぼくは暫く…
はい、えーと。本日はひとり暮らしの方の為の料理教室と謂うことなのですが、見事に男性ばか…
彼の名は甲斐澤晅三といった。カイザワケンゾウ——字面からすると珍しく思われるかも知れな…
一杯の酒を求め 酒場を巡って彷徨う 酒を求めているのか 語る相手を求めているのか ぼくの手…
彼女は、彼が死ぬほど苛々しているのが判った。「死ぬほど」というのは適切な表現ではない、…
ひとりで這入ったカフェに、彼は居た。 カフェといっても、ビストロというか、洋食屋のような店だ。 給仕をする彼は白いシャツを着て、黒いエプロンをして、黒いズボンを穿いて、黒いビルケンシュトックのサンダルを履いている。背が高く、痩せていて、少し癖のある髪をしていた。 「ご注文はお決まりですか」 彼はすぐに答えられなかったわたしを見遣って、少し首を傾げた。 「あ、あの、お勧めは?」 「ランチでしたらキッシュ・パイのセットが人気です」 「じゃあ、それを……」 「どれが宜しいで