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第50回 アンタッチャブル(1987 米)

 さて、BL的映画鑑賞もついに50回の大台に達してしまいました。ショーン・コネリー追悼企画と重なったのは何かの宿命やもしれません。

 いずれにしても生半可な作品は選べないとあれこれ悩んだ結果、別に主演作でなくてもいいだろうという結論に行き着きました。脇で光るのも役者としてはとても大切な事です。

 というわけで、当時低迷していたコネリーが返り咲く契機となったギャング映画の傑作『アンタッチャブル』でお送りします。

 ロバート・デ・ニーロがアル・カポネを演じ、これを当時無名だったケビン・コスナー演じる財務省捜査官エリオット・ネスとやたら豪華なキャストの愉快な仲間達が逮捕せんと奮闘するという、アメリカではお約束のストーリーです。

 監督は『ミッションインポッシブル』でお馴染みのブライアン・デ・パルマ。印象的なシーンも多く、実に完成度の高い仕上がりになっています。

 そして音楽は毎度お馴染みモリコーネ。レオーネは既にこの世の人ではありませんが、OPから飛ばしまくってレオーネが嫉妬しそうな出来です。果たしてアカデミー賞にノミネートされました。

 コネリーはネスを補佐するベテラン警官という役どころで、髪の毛の代わりに得たダンディズムと男気で映画をきっちり締め、この演技が買われてアカデミー助演男優賞を獲得しました。

 『007』のヒットと裏腹に、それまでのキャリアを通して大きな賞とは無縁だったコネリーにとってまさに記念すべき一本であります。

 そして、正義のために奮闘する男達の絆は当然BLになってしまうのです。一応ネスの奥さんは出てきますが、居ても居なくても同じです。淀川先生の格言「男だけの映画に外れなし」です。

アンタッチャブルを観よう!

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真面目に解説

ギャング映画は時代劇
 我が国の時代劇は各種のお約束があります。やはりあの人はああいうキャラクターであるというのが決まっているわけです。

 例えば忠臣蔵などという物は一定以上の年齢なら誰もがストーリーを知っていて、またお約束のエピソードがいくつもちりばめられています。

 従って、お約束をどう処理するかが作り手の技量であり、技量の差がもろに出る誤魔化しが利かない難しいテーマとも言えます。

 ギャング映画も全く同じ構図になっています。伝説のギャングやその周辺の人物は何度も物語のテーマになり、既にキャラクターが確立しているのです。

 アル・カポネをエリオット・ネスが追い詰めるというストーリーはその最たる例であり、我が国でいう所の忠臣蔵に近い位置づけにあります。

 しかし、既にギャング映画の金字塔である『暗黒街の顔役』のリメイクたる『スカーフェイス』でその片鱗を見せていたデ・パルマの手腕、そして豪華キャストとモリコーネサウンドが合わさればもう安心というわけです。

 完成度もさることながら、取り締まる側が主役なので本質的に勧善懲悪ものであり、ギャング映画の入門編としてはまず最適の一本です。

 ギャング映画を観たことがない人は『ゴッドファーザー』の前にこっちから見ることをお勧めします。


禁酒法とシカゴ

 時代を同じくする『ワンスアポンアタイムインアメリカ』の回でも説明したかもしれませんが、当時アメリカでは禁酒法というアホな法律が制定されて酒が大っぴらに飲めませんでした。

 そこでギャングが酒の密輸や密造に乗り出すのは当然の流れで、果たしてギャングは巨万の利益を得て始末に負えなくなり、アメリカは20世紀前半というのに世紀末状態でした。

 本作のラスボスであるアル・カポネの仕切るシカゴはまさに最前線。カラスの鳴かない日はあっても銃撃戦の無い日はないという惨状でした。

 こうなったのにはそれなりの理由があります。第一にカポネが非常にやり手であった事。もう一つは、シカゴという街の地理的な条件です。

 第一にヤクザ者というのは土地の住人に寄生して利益を得る物なので、それなりに大きな町が有利です。その点シカゴはニューヨークに次ぐアメリカきっての大都市であり、ギャングにとっては都合の良い土地でした。

 更に言えば五大湖工業地帯の中心地であり、また港湾都市でもあります。こういう荒っぽい街が有利です。日本のヤクザだってそうです。神戸、横浜、広島、ヤクザのビッグネームの出る町はいずれも大きな港を抱えています。

 そして、禁酒法というビジネスチャンスも追い風でした。五大湖超しにカナダに面しているシカゴは酒の密輸がやりやすいのです。本作もほとんどカナディアンウイスキーの奪い合いの様相になっています。

 しかし、やはり決め手になったのはカポネという大物の存在であったわけです。


アル・カポネというギャング

 ここで気を付けたいのは、カポネはあくまでギャングであってマフィアではないという事です。

 以前『ゴッドファーザー』でも説明しましたが、マフィアとはあくまでシチリア系の犯罪組織を指す言葉であり、カポネはイタリア系ではありましたがシチリア系ではなかったのです。

 シチリア系ではないので若い頃は苦労をしたようですが、同じくシチリア会ではないジョニー・トーリオという大物に誘われてニューヨークからシカゴに移って頭角を現し、トーリオの後を引き継いでボスになってシカゴを支配するようになりました。

 マフィアの経歴は往々にして謎に包まれているものですが、この辺の話はリアリティがあります。というのも、人種が付いて回るのは日本のヤクザも同じだからです。

 在日コリアンが日本のヤクザには非常に多いわけですが、在日コリアンの中でも北か南かでそれぞれ溝があり、日本人も当然いるので組織のパワーバランスに影響を及ぼすのだそうです。

 これが関西になると済州島も一大派閥になり、もう面倒臭くて手に負えないとある元ヤクザの老人が以前私に話してくれました。

 演じるのはロバート・デ・ニーロ。恰幅が良くて髪の薄いカポネを演じる為にご存知デ・ニーロ・アプローチを行い、太って顔を剃って撮影に臨みました。

 恐ろしいのは他の仕事の関係上丸々太るわけにいかないので、顔だけ太ったという事です。有名な逸話ですが、どうやって顔だけ太ったのかは寡聞にして知りません。けど、デ・ニーロならそのくらいはやるだろうと思わせるのが大したものです。

 作中のカポネは本物同様派手好きで、贅沢三昧の暮らしをしながら新聞記者を侍らせ、あまり面白くないジョークを飛ばしてご機嫌です。

 そしてギャングですので、粗悪な密造酒をバーに押し売りして買わない店を爆破したりと東映ヤクザ映画でもそう見ない外道ぶりを見せます。まさにシカゴは世紀末です。

 そんなカポネもネス達の捜査で年貢を納める運びになり、最初こそ刑務所中を買収してエンジョイしていましたが、こうなると所詮ギャングは落ち目なので段々その権勢も衰えていきます。

 そして何回か刑務所を移ってあの名高いアルカトラズ刑務所に移された頃にはコカイン中毒と脳梅毒ですっかり腑抜けになり、他の囚人に襲撃される有様で、出所後もどんどん梅毒は悪くなり、晩年は哀れであったそうです。まあ、ギャングの末路はこんなものです。


エリオット・ネスの虚実

 そんなカポネに立ち向かうのが財務省から派遣されてきた捜査官のエリオット・ネスです。カポネを逮捕しようと手段を択ばず奮闘するのが本作の主軸となっています。

 本作のネスは家族思いで仲間思い、カポネ逮捕の為なら手段を選ばない割に敵を殺すのには躊躇いを見せる人間臭い、実に難しいキャラクター造形になっています。

 ケビン・コスナーはパッとしない下積み時代を過ごしていましたが、この抜擢で一気にスターに上り詰めました。要はコスナー自身がネス同様気苦労の絶えない中年だったのがこの演技に生きたのです。

 本作に限らずカポネの映画はエリオット・ネスと仲間たちをどう描くかが鍵になってきます。禁酒法と脱税の線からカポネを追い詰めていくわけですが、この過程に作り手の腕が問われるのです。

 本物は映画に出るほど立派な人物でもなければ、チームはおつきの運転手が死んだ程度で銃撃戦さえ行わず、そもそもネスが集めた証拠はカポネの逮捕に寄与しなかったという説さえあります。しかもアル中でした。

 しかし、ネスは自伝『アンタッチャブル』で自身の活躍を盛りまくって書き、そのおかげでこうした作品が多数作られるに至ったのです。

 この自伝の出版直前にネスは亡くなりましたが、一つ確かな事は、この自伝の儲けで生前に作った義理の悪い借金は完済できたという事です。


アイリッシュマンは腐らない
 ネスはカポネを逮捕しようと息巻きますが、シカゴの街は警察は言うに及ばず、市長や検事までカポネに買収されているので全くはかどりません。

 そこでネスは独自のルートで人を集めて捜査チームを作り、誰言うとなくこのチームが『アンタッチャブル』と呼ばれるようになるのです。

 本物はその名前と裏腹に買収された者もいたようですが、物語ではこのメンバーを魅力的に描くことが必要になります。

 本作でネスが最初に声をかけたのが、捜査が上手く行かず不貞腐れていたところにたまたま出会ったベテラン警官のジム・マローン(ショーン・コネリー)でした。

 マローンはシカゴで唯一腐っていない警官を自称する武骨漢ですが、シカゴの街の状況に絶望し、ネス同様不貞腐れ気味でしたが、ネスの情熱にほだされてカポネ逮捕に協力することを決意して「おやっさん」のポジションに収まります。

 警察の裏も表も知り尽くしており、面倒見が良くてやる時はやる、晩年のコネリーの為にあるような役です。というよりも、この役がコネリーの晩年を決定付けたというべきでしょう。

 コネリーはボンドを降りて以降は髪の毛同様仕事も減る一方の苦しい時期でした。『007 美しき獲物たち』でデビューしたばかりのドルフ・ラングレンと抱き合わせでマネージメントされていたというのですから大概です。

 しかし、この演技で逆転ホームランを決めてこうして汚れのバイが追悼特集と称してホモだホモだと書き立てるほどになるのですから世の中何が幸いするのか分かりません。

 マローンがアイルランド系である事が前面に押し出されるのに要注目です。アメリカの警官はアイルランド系が非常に多いのです。

 これはアメリカのアイルランド移民は比較的遅くに始まったため、危険な仕事しか残っていなかった事、そしてアイルランド人が血の気が多くて義理人情に生きている警官向きの人種である事に由来します。

 スコットランド独立を唱えていた手前複雑だったと思いますが、そういう意味でもマローンはコネリーにとってはまり役だったのです。


イタリア系の悲哀
 ネスはマローンに人手集めの助言を求めますが、シカゴ市警は上は署長のドーセット(リチャード・ブラッドフォード)から下は名無しの巡査までカポネとズブズブなのでとてもじゃありませんが使い物になりません。

 そこで、マローンは警察学校で新人を捕まえて来るというアイデアを出し、スカウトしたのが生意気で射撃の上手い「アクション担当」ジョージ・ストーンです。

 演じるのはアンディ・ガルシア。コスナー同様本作が出世作になり、『ゴッドファーザー PART III』でカポネ側に転じてからは悪役俳優で通っていますが、最初はこんな二枚目の正義漢からスタートしたのです。

 若いので女性とゲイがキャーキャー言いそうなイケメンで、アクション方面で大いに身体を張ります。

 そして、ストーンは当時のアメリカで差別されていたイタリア系であり、そのことに負い目を感じています。

 イタリア系アメリカ人がギャングになってしまう原因はひとえにアメリカでの地位の低さにあります。

 というのは、遅くアメリカに来るようになったのはアイルランド系と同じですが、イタリア人は職人肌で教育熱心ではなく、アイルランド人と違って英語に暗い為です。

 地位としては黒人以上ユダヤ人未満といったところで差別も根強く、その反面同族意識は強いので、いきおいグレて悪の道に走りやすくなるというわけです。

 しかし、そんなちょい悪ストーンの向こう気の強さを程度の差こそあれ差別を受けて来たであろうマローンはネス共々気に入り、晴れてチーム入りを果たすのです。


やべー奴が美味しい
 さて、とりあえず三人になった一行はマローンの情報を基に早速密造酒の押収に向かいますが、三人ではちょっと心細いですよね。

 そこで、ネスのオフィスに居たネスのお目付け役兼補佐の会計士、オスカー・ウォレス(チャールズ・マーティン・スミス)を数合わせで連れていきます。

 スミスというと代表作の『アメリカン・グラフィティ』を筆頭にコメディタッチな役が多く、本作でもそのエッセンスを発揮しますが、一応非常に優秀な会計士です。

 こういう大人しそうな男がいざ喧嘩となるとネジが外れていて強かったりするのですが、まさにウォレスはそういう男で、カポネを脱税の線から逮捕しようと頭脳方面でチームを助ける一方で銃撃戦でもノリノリで先頭に立っちゃうのです。

 案外一番おいしい役ではないかと私は思います。そして、私の知り合いの会計士はどいつもこいつも頭は良いのにどこか変わり者なので、ウォレスのキャラクターは実態に沿っているとも言えましょう。

 この人は実際にカポネを税の面から追い詰めたフランク・J・ウィルスンという人物がモデルになっています。

 ネスはカポネ逮捕後にFBIに売り込んで失敗してしばらく転落人生を歩みましたが、ウィルスンは順調に出世し、シークレットサービスの長官まで上り詰めました。

 かくして特攻野郎Aチームや石原軍団並みに無駄にキャラが立った面々がカポネを少しずつ追い詰めていくのです。


シカゴ版石原軍団
 こういう面々ですのでアクション方面も派手で、そしてやる事が大変に乱暴です。そういう意味でも石原軍団並です。ホモ臭いのも含めて。

 とくに有名なのが終盤の駅での銃撃戦です。本当は列車で銃撃戦をさせたかったそうですが、予算が行き詰まって駅で我慢したそうですが、そこはデ・パルマですから見事な物です。

 モリコーネサウンドに乗せて『戦艦ポチョムキン』のオデッサの大階段のシーンをオマージュした銃撃戦は必見です。特にストーンが格好良すぎます。そりゃあソダーバーグに気に入られるのは当然です。

 最初の山場であるカナダ国境での銃撃戦も相当です。ウォレスが大暴れしちゃうのが実にいい味出しています。アクション面でも4人全員に均等に見せ場が用意されているのが気持ちの良い所です。


シカゴ・タイプライター
 この時代のギャングが過激だった要因の一つが、銃器の進歩です。これ以前は拳銃とショットガンが関の山でしたが、この時代になると新兵器のマシンガンが登場します。

 俗に「トミーガン」と呼ばれるトンプソン・サブマシンガンが当時のギャングの象徴です。ギャング映画では丸い50連発のマガジンを付けたこいつを必ず目にするはずです。

 当然本作でもギャング側も警察側もこいつで盛大にドンパチやってくれます。コルトSAAなくして西部劇が成立しないように、トンプソンなくしてギャング映画は成立しえないのです。

 特にカポネはこの銃がお気に入りで、手下に持たせてジャンジャンバリバリ撃ちまくった事から『シカゴ・タイプライター』とも呼ばれます。

 今ではこの手のサブマシンガンはアメリカでも規制が厳しく、ギャングの喧嘩で使われる事は少なくなっています。酒は禁止だったくせに銃は野放しだった辺りに当時のアメリカの"病巣"が見て取れます。


カポネと愉快な仲間たち

 カポネ側もネス達の荒っぽい妥協のない捜査に焦ります。カポネはホテルで番記者にジョークを飛ばして虚勢を張りつつも、長々と野球のたとえ話をしてへまをした手下をバットで殴り殺したりと追い詰められていきます。こういうのがデ・ニーロは大得意なのです。

 余談ですが、イタリアはヨーロッパで一番野球が盛んな国です。これはアメリカで一山当てたギャングが晩年にイタリアに里帰りして広めた事に端を発します。ヤクザと野球の癒着は日本の専売特許ではないのです。

 カポネは対抗策として、手下で実在の人物でもある殺し屋フランク・ニッティを差し向けて抵抗します。

 演じるのは日本の映画にやたら出ていたビリー・ドラゴ。最初はガルシアがニッティ役の予定でしたが、ガルシアの演技力が買われてストーンに回され、この役が回ってきました。

 憎たらしい、悪知恵の働くいかにもな殺し屋です。結果としてこの役がドラゴの出世の契機となったので、やたらと出世する人の多い映画です。

 ちなみに本作ではネスに殺されてしまいますが、本物はカポネが収監された後に後継者になり、刑務所に入るのが嫌で自殺を遂げました。まあ、ギャングの末路なんてそんなものです。

BL的に解説

ゲイと奥さん
 ネスは一応妻子が居ます。奥さんは本作がデビューのパトリシア・クラークソン。本物は仕事とアルコールに熱中して家庭はまるでダメだったそうですが、本作では凄く奥さんを大切にしていて、独身者ばかりの他のメンバー結婚の素晴らしさなんて説いたりしちゃうのです。

 ここで注目したいのは、偽装結婚にしろ、結婚後に目覚めたにしろ、ゲイには案外愛妻家が多いという事です。

 偽装結婚したゲイがむしろ唯一の信頼のおける女性として奥さんを溺愛するケースが多いのは以前も説明したと思います。ゲイにマザコンが多いと言われるのも根っこは同じです。

 後から目覚めた場合はどうか?一人の女性をひたすら愛せる情熱を持った男が、男同士という新境地に到達したらどうなるか?そりゃあのめり込むわけです。

 奥さんも自分が愛されていることを実感している一方、そんなに愛してくれる亭主が男もイケるとはまさか考えないわけで、二丁目には結構そういう夜の二重生活に耽る人は結構いるのです。

 大体本作でネスの妻子はカポネの手下に脅されて早々に身柄をかわしてしまい、あまりストーリーに影響を及ぼしません。あくまでこの映画は男と男のせめぎあいだけで完結しているのです。

 これがやっぱり出世作になった、たれ目のエロいパトリシア・クラークソンも所詮コンドームなのです。


アンタッチャブル(意味深)

 アンタッチャブルの他の面々も怪しいものです。出会って日も浅いというのに仲が良くてホモホモし過ぎます。しかもネス以外は皆独身です。若いストーンはともかく、あとの二人があの歳で独身というのは当時の価値感から言えばホモと疑われても文句は言えません。

 密造酒の押収を皆で葉巻を吸ってお祝いしたりしていましたが、あれもなかなかホモ臭い友情の深め方です。

 あの後お互いの股間の葉巻を吸ったり吸われたりしていたとしても驚きません。人間死の恐怖に直面すると性欲が高まるそうですし。

 大体アイルランド系やイタリア系であること自体がもう私の手にかかれば十分な証拠なのです。

 最初にアメリカに移民したのはイギリスのピューリタン、つまりプロテスタントですが、アイルランドやイタリアはカトリックなのです。

 同じキリスト教とは言え、カトリックとプロテスタントは事実上の別物であり、まして古い世代の溝の深さは想像を絶するものです。ほんの半世紀前も前までカトリックであるというだけでアメリカではちょくちょく肩身の狭い思いをせねばならなかったくらいです。

 そして、カトリックというのは少なくとも教義の上では堅物です。「女は家庭に入って亭主に尽くすべし」というホモソーシャルそのものの女性観を持ち、「ホモは死刑」と法律に定めるほどホモのホモ嫌いが蔓延しているわけです。

 その上移民は貧しく、差別されます。マローンはおそらく移民一世であり、想像を絶する艱難辛苦を経験しているはずです。ストーンは二世ですがイタリア系への差別は年々厳しくなり、ギャングの暗躍でこれがピークになります、

 どっちも少年時代に掘られていてもおかしくない境遇というわけです。警察も移民の少年の尻の事などまともに取り合ってくれません。むしろセカンドレイプの危険さえあります。

 アルフレードはカットを命じられるでしょうが、神父様に相談するのはもっと危険なのは言うまでもありません。なんなら神父様に掘られてます。

 何物にも染まらない彼らは畏敬の念を込めて『アンタッチャブル』と呼ばれたという事になっていますが、あるいは虹色に染まっていたので周りが気味悪がってそう呼ばれていたとしても、私は全く驚きません。


マローン×ネス
 コネリーは総攻めですし、立場上はネスがボスですが、実質的主従関係はマローンが主なのでこのカップリングになります。

 マローンとネスが初めて出会った時、ネスはもうボロボロでした。着任会見で高い志を披露して記者共に馬鹿にされ、密造酒の取り締まりも市警に内通者が居て不発でした。

 カナディアンウイスキーの箱を開けてみれば中身はなんと日本の番傘。しかもそのシーンを記者にすっぱ抜かれて記事にされて赤っ恥です。

 しかも新聞の見出しが「哀れな蝶々さん」です。これは明らかに蝶々夫人を意識して書かれたものです。

 あるいは、ネスは着任前にシカゴのゲイタウンで男を買ったのではないでしょうか?だとすればそんな美味しいネタをカポネ達が見逃すはずがなく、当然警察やマスコミにも筒抜けです。

 当然その夜のピンカートン大尉からネスの蝶々夫人ぶりはリサーチ済みです。「あのホモ野郎、偉そうな事を言ってたが男の前ではまるでゲイシャだぜ」というわけです。そういう点でもネスは受けです。

 奥さんのくれた激励のメモを不貞腐れて川に捨てたのを見咎めたのが通りがかったマローンでした。

 ネスは「もっと大きな事件を取り締まれ」と居直りますが、マローンはそんな居直りに動じるようなタマではなく、警棒でネスの懐をまさぐって拳銃を持っていることも看過します。

 そしてマローンは法執行官の心得として「毎日生きて家に帰る事」というなかなかアナーキーかつ反論の出来ない心得「講習」と称して残して去っていきます。

 ネスはマローンに並々ならぬ執着をして、わざわざマローンの家に押しかけます。マローンはここへきてもショットガンを持ってお出迎えですが、ネスはマローンをチームにスカウトします。

 マローンは有能である反面、シカゴ市警という組織の中では自分があまりに無力である事も知っているので最初は断ります。しかし、ネスは「あんたは良い警官だ。見ればわかる」と知ったような事を言って褒め殺し戦術で責めます。

 まあ、そういう趣味のゲイならコネリーとお近付きになるために手段など選んでいられません。

 マローンもマローンで自分がずっとパトロール警官なのは「この街で唯一腐っていない警官だからだ」と自己分析します。間違っていませんが、腐った目で私は当然見ちゃうわけです。

 しかし、マローンはあまりに危険なこの誘いを断りつつも、ネスの「俺と一緒にヤってくれないか」という熱意にほだされて揺らいでしまうのです。愛のシーソーが揺れ始めました。

 「あと十年若くて10キロ痩せてた頃ならな」と言って断ったのが決め手です。太っているので愛のシーソーはマローンに傾いたのです。翌朝、教会デートにネスを誘ってネスの熱意とカポネと戦う事の危険性を再確認して「最後までヤれるか?」と訊ね、「血の誓い」と称する熱い握手を交わして二人は一つになるのです。

 信心深いマローン曰く、「神様は臆病者が嫌い」だそうです。これがどういう事か?そりゃあそういう趣味のゲイならコスナーとお近付きになるために手段など選んでいられませんよね?

 そう、マローンはネスを懺悔室に引きずり込み、ピンカートン大尉に変身するのです。悪徳と頽廃に満ちたシカゴには硫黄の雨の代わりにカポネが血の雨を降らせているわけです。

 他人ではなくなったネスにマローンは捜査官としての心得を軽く説き、メンバーに警官は不味いと警告し、「腐ったリンゴが嫌なら樽の中を探らず木からもげ」と言って警察学校に赴くのです。

 リンゴとは意味深な例えです。アダムとアダムの失楽園というわけです。しかも、「既婚者はダメだ」とネスは特に理由は説明せず青リンゴに注文を付けます。

 若後家さんを作ってはいけないという普通の解釈はこの字の「ブルーオイスター」では通じません。ネスはカポネ逮捕のついでに大奥を作ろうとしているのです。リンゴに悪い虫が付いていたら都合が悪いというわけです。

 果たしてストーンという極上のリンゴを仕入れた一行はマローン独自のルートでウォレスも連れて密造酒の押収に赴きます。

 マローンの情報は確かで、大量の密造酒を押収し、マローンはギャングをぶん殴ってすごく楽しそうです。モリコーネもその辺の機微はレオーネとしっかり学んでいるからか、BGMもご機嫌そのものです。

 そして四人はレストランで葉巻でお祝いしちゃいます。同じロウソクで火をつけるというのが実にホモです。

 そしてネスはマローンが持っていたユダのメダルに目を付けます。このメダルはBL的にも真面目にも最重要アイテムなので覚えておいてください。

 イエスを売ったあのユダとはユダ違いです。敗北者と警察官の守護聖人という事になっており、特にシカゴ警察では篤く信仰されているそうです。

 余談ではありますが、ユダはイエスに恋するヤンホモである事は『ジーザスクライストスーパースター』を見るまでもなく聖書だけで一目瞭然です。聖書は読みにくいですがその反面上質な短編BL集でもあるので、興味のある方はそこらで配っているのを貰って読んでみましょう。

 そして四人で新聞記者に記念写真を撮ってもらいます。このイカ臭い記念写真もマストアイテムです。一応ネスと妻子との癒しシーンも入りますが、こんなシーンは私がテレビマンなら再放送でカットです。

 ネス達がカポネを脱税でパクろうと躍起になっていると、市会議員が賄賂を手にやって来ますが、ネスはこんな賄賂を受け取るような安い男ではありません。叩き返して「地獄で会おう」とカポネに伝言を言づけて追い返してしまいます。

 キリスト教ではやっぱり同性愛は地獄に落ちることになるのを知っているのです。しかし、それでも人は男同士で愛し合うのを辞めません。

 露骨な嫌がらせがスタートし、妻子に脅しがかかってネスは二人を逃がして退場させます。完全に男だけの世界にネスは漬かってしまうのです。

 そしてマローンの情報でカナダ国境で酒の密輸があると聞き、仲良く現場へ向かいます。

 どこでそんな重大情報を掴んだのかネスは不思議がりますが、マローン「上司に秘密は打ち明けるな」と捜査官の心得その2をレクチャーします。

 まるでNCISのギブスです。まあ、私の中ではギブスは相手がアビーだろうがジヴァだろうが総受けなのですが、こういうルールをいっぱい持ってる奴はホモだという証明にはなります。

 拠点の小屋でそわそわするネスをマローンは「落ち着け」と窘めます。ネスは「あんたは俺の先生か?」と言いますが、マローンは「そうだよ」と即答です。何のことはありません。ネスの誘導尋問です。そういうプレイです。

 やがて国境の橋の上で取引が始まりますが、協力したカナダ側が先走ってしまい、捕り物は泥試合の様相になります。四人とも馬に上手に乗れるのが笑いどころです。マローンは乗れるかもしれませんが、もうアメリカはとっくに車社会なのですから。

 マローンはチンピラ時代から顔見知りの幹部をとっ捕まえ、ネスは命知らずのチンピラを撃ち殺して「命を粗末にするな」と複雑で歪んだ心理を覗かせます。

 多分初めて人を殺したのでしょう。マローンはそんなネスを「心が傷むか?」と心配しますが、ネスは強がっています。それでいいのです。マローンは強がる若者が好きなのです。

 マローンが捕まえてきた幹部に帳簿を解読しろと激しく尋問しますが、この幹部が中々強情で簡単に口を割りません。

 そこでマローンは庭先に放り出しておいたネスの「初めての男」の死体を利用し、銃で頭をぶち抜くという石原軍団もびっくりのワイルドな心理攻撃で口を割らせます。

 これにはカナダ騎馬警察もドン引きです。しかしネスは「シカゴじゃ当たり前なんだがな」とさっきまで殺しにビビってたとは思えないイキりっぷりです。そして見つめ合うマローンとネス。カナダの田舎者は黙ってろというわけです。

 カポネを裁判に引きずり出すことに成功したネスはマローンと葉巻を吸いながらいちゃつき、いつの間にやら生まれた長男のミドルネームをマローンから取って「ジェームズ」にしてご機嫌です。これは実質ホモセックスです。産んだ奥さんの立場がありません。

 そしてウォレスが証人と一緒に殺されてカポネの元へ殴り込んだネスを慌てて止めたのマローンでした。ネスがカポネと刺し違える事は十分可能ですが、それではマローンには割に合わないのです。

 証人が殺されたので告訴を取り下げると言われてネスは弱腰になってしまいます。マローンは「途中で投げ出すのか」と怒りますが、ネスは「ウォレスが殺されたんだぞ」ハーレムの崩壊を嘆きます。

 しかし、これはマローンを余計に怒らせるのは言うまでもありません。ネスが弱腰になるのも気にくわないし、ウォレスの名前を出すのも気にくわないのです。総攻めなのでケツの穴が小さいのです。

 そして、マローンは「俺の為に告訴の取り下げを阻止しろ」と言い残し、カポネの帳簿係のウォルター・ペイン(ジャック・キーホー)を直接捕まえるという大胆な戦術を考えます。

 署長と殴り合いの末ペインの居場所を聞き出したマローンですが、ニッティ達に家を襲撃されて撃たれてしまいます。

 しかし、死んだのを確認しなかったニッティの黒星でした。愛の力でマローンはネスとストーンが駆けつけて来るまで生き延びます。

 駆けつけた時のネスの慌てよう。やはり一番はマローンだったという事です。

 ネスは虫の息のマローンに例のユダのメダルを持たせてやり、マローンは最後に駅の時刻表を手にペインが列車で逃げる事を知らせ、「覚悟はできてるんだろう」と言い残して息絶えます。

 マローンが遺したネスとストーンの頑張りでペインは無事に証人席に立ちますが、なんと法廷にはニッティが銃を持って控えています。ペインを消す気満々です。

 俺たちのマローンやウォレスを犬死にするわけにいかないネスはマローン魂でこれを察知し、ニッティを法廷から連れ出して銃を没収しようとします。

 そして、ニッティの持っていたマッチにマローンの住所が書いてあったので事態がややこしくなります。

 ネスは全てを察します。ニッティは悪あがきの逃走を企てますが、裁判所の屋上でのメインテーマに乗せてのデ・パルマ入魂の銃撃戦の末に捕らえられます。

 法の番人であるネスには自分を殺せないと高をくくってイキるニッティですが、ネスは「奴は豚野郎だぜ」というニッティの一言についにキレ、屋上から突き落とされてニッティは殺されてしまうのです。わざわざ車の上に落とすのがデ・パルマです。

 ニッティはネスのマローンへの愛を計算に入れていなかったのです。そう、愛は超法規なのですから。

 『脱獄広島殺人囚』でも説明しましたが、刑務所ではホモ同士の痴情のもつれで殺し合いが起きるなど日常茶飯事なのです。ニッティは刑務所が嫌で自殺したくらいなので、その辺の機微に暗かったのでしょう。

 おまけにニッティは上着のポケットに陪審員のリストを持っていました。カポネは陪審員まで買収していたのです。しかし、結局マローンへのネスの愛がこの陰謀を事前に阻止させ、陪審員を隣の法廷と入れ替えるという荒業でカポネに有罪判決が下りるのです。

 暴れるカポネにネスは「勝負は終わってみないと分からない」と決め台詞を残して退廷し、オフィスで写真立てに飾った四人の記念写真を眺めてどこか悲しそうに微笑みます。

 シカゴを去るネス。しかし、魂はシカゴに置いたまま生涯離れられなかったろうと思います。

ウォレス×ネス
 ウォレスは唐突にネスの前に現れました。マローンにフラれた翌日、オフィスに居ると勝手にネスの椅子に座って仕事をしていたのです。

 かようにウォレスはウザキャラですが有能ですので、カポネがずっと税金を納めていないのを見抜き、この線から攻めようとネスに持ち掛けますがネスは本気にしません。

 そんな事で捕まえられるくらいならとっくにカポネは刑務所にいるだろというわけです。しかし、ウォレスはあれでなかなか熱い男であり、有能なのでこの可能性に勝算を見ています。

 ネスに放置プレイを食らってもウォレスは粘り、金の流れにパターンがあるのを突き止めます。

 そんなさなかにマローンにショットガンを渡されて密造酒の押収に駆り出された事でウォレスは一気に男の園に引き込まれます。専門外の銃を手に複雑そうな表情ですが、この件でウォレスは間違いなくチームの一員になったのです。

 ウォレスはネスより早く出勤して金の動きの調査に余念がありません。そこへネスが満面の笑みで自分達の手柄が一面の新聞を手にやって来て二人で笑うのです。

 アメリカンポリスなのでオフィスがガラス張りなのが残念です。これが密室なら皆ではおっぱじめているところです。ウォレスの股間のバランスシートは膨らむ一方で、ネスの奥さんとチームとの夜の複式簿記は愛は計算できない事を証明するのです。

 ネスが妻子を逃がす時も最初に駆けつけてくれたのはウォレスでした。ネスはウォレスのこういう情熱的な所がだんだん好きになってしまうのです。

 それが証拠に、カナダ国境に飛ぶ飛行機ではウォレスがネスの隣です。機上でも帳簿に目を通すウォレスをネスは労い、「もう寝ろよ」と優しい言葉をかけます。完全にデキてます。

 そして捕り物でウォレスは本性を現してしまいます。撃たれて脱落したストーンの代わりに大暴れして見事に車が逃げるのを阻止します。弾切れでピンチになったり、酒を盗み飲みしたりとギャグが入るのがスミス流です。

 しかも押収品から暗号の帳簿を発見し、カポネ脱税の足掛かりと掴んでまさに大活躍です。ウォレスの脱税で捕まえようという作戦に乗り気でなかったネスは完全にウォレスのテクニックに落ちるのです。

 ウォレスは大暴れとネスとのプレイにのめり込んですっかり捜査官の仕事も気に入り、証人の幹部を連れて隠れ家へと身柄をかわそうとします。

 しかし、エレベーターでカポネの差し向けた警官のコスプレのニッティに幹部諸共射殺されます。

 ウォレスはエレベーターの壁に「TOUCGABLE」(届く)と血文字を書き残して息絶えます。心の奥底に情熱を持ったウォレスらしい見事な死にざまです。

 愛するものを殺されて激怒したネスはカポネの住んでいるホテルに殴り込み、ホテルマンに掴みかかり、チンピラを殴り倒して「この場で俺と勝負しろ」と無茶苦茶言います。

 完全に健さんモードです。カポネもカポネで応じようとするのですからやっぱりギャングはホモに明るいのです。

 しかし、ウォレスの功績は無駄ではなく、ネス達のペイン強奪で身を結び、カポネは刑務所に送られるのです。

 ウォレス亡くしてカポネの逮捕はなかったのです。それをネスは一番よく知っています。


ストーン×ネス
 ストーンは銃の天才という触れ込みで、しかもイタリア系である事にコンプレックスを抱えた生意気系イケメンと来ています。BL的には属性の過積載と言わざるを得ません。

 ストーンはマローン相手に生意気を爆発させ、ネスもマローンもこのイタリア産青リンゴを一発で気に入ってしまうのです。

 カナダでの捕り物でも先頭に立ったのはストーンでした。先頭に立ったので肩を撃たれてしまい、美味しい所はウォレスに取られてしまいますが、名誉の負傷という物です。

 そのウォレスが殺されてもあきらめないという姿勢を最も明確に打ち出したのはストーンでした。「俺はボスにどこまでもついて行く」と忠犬アピールです。このギャップに傷心の上奥さんとも離れ離れのネスはたちまちやられてしまいます。

 そしてマローンが殺され、二人きりになってしまい二人の仲は決定的な物になります。生き残った者が勝ちです。

 駅で待ち伏せするストーンとネス。ベビーカーで階段を上がろうと四苦八苦している若奥様を見かねてベビーカーを上げるのを手伝ってあげたところへペインが来たものだから大変です。この映画最大の見せ場の銃撃戦の始まりです。

 ベビーカーが階段を一段一段落ちていく中、ネスとストーンは居合わせた駅の利用客を巻き添えにしながら盛大にドンパチやります。

 ベビーカーは階段を下りで走り出すところをストーンが銃の弾が切れたネスに予備の拳銃を投げ渡しながらスライディングで受けとめて事なきを得ます。

 格好良すぎるぜストーン。こんな物見せられたら若奥様の股間の五大湖は氾濫寸前です。ハーレクインな事態が起こらぬか心配です。

 そしてそのまま一人残ったペイント護衛に銃を向けます。ペインを人質に逃れようとする護衛に狙いを定める二人。「狙えるか?」「ばっちりです」というやり取りをしてストーンがばっちり護衛を撃ち殺すのはもう実質セックスです。若奥様が腐女子に目覚めないかも心配になってきます。

 半泣きのペインにストーンが狙いを定めて銃の撃鉄を起こすのもセクシーです。何でも言う事を聞くと言っちゃいましたので、この後二人にペインは頂かれても文句は言えません。

 どうにかカポネを刑務所に送り込んだネスはシカゴを去る事になります。オフィスを片付けるネスにストーンは未練たらたらです。

 そして、ネスはマローンの形見のユダのメダルをストーンに手渡します。「警官が持つ方が喜ぶ」と言い残して。ストーンもネスも、あの輝かしい四人の愛と情熱の日々を生涯忘れることができないのです。


マローン×ストーン
 マローンはパトロール警官の割に顔が広く、警察学校に顔が利きます。案外ちょくちょく青リンゴをつまみ食いしに来ているのかもしれません。しかも、教官はちゃんと見込みのある若者を紹介してくれるのです。

 マローンはストーンが下町の生まれである事からあたりを付け、イタリア系である事を見抜き、本名はジュゼッペ・ペトリであるという事実を聞き出してしまうのです。

 「手癖の悪いイタリア人など必要ない」とマローンはいきなりカマします。向こう気の強いストーンは怒りますが、「大嘘付きのイタリア人」と一気に畳みかけます。

 ストーンはブチ切れて銃をマローンに突き付け、「豚の臭いがするアイルランド人よりましだぜ」と逆にマローンがアイルランド系である事を見抜いて勘の鋭い所を無意識にアピールします。

 マローンはこれを聞いて「気に入った」と採用決定です。それを知らされたストーンの嬉しそうな顔。二人はもう目と目でデキています。

 男の取り合いでチーム崩壊の危険がありますが、まあそこは男なので便利です。前にはネス、後ろにはマローンの三連ケツで三人とも幸せです。ウォレスも仲間入りすれば酒はなくとも「オリーブの首飾り」が響きます。

 チームの初陣を飾ってお祝いする四人。ストーンはマローンのユダのメダルを「負け犬の守護聖人」だと冷やかしますが、これは重要な伏線ですので覚えておいてください。

 そしてマローンに「負け犬と警察官どっちになりたい?」と聞かれ、「警官」とストーンは即答します。こういうストーンがマローンは好きなのです。

 カナダでの捕り物でネス同様そわそわするストーンにやっぱりマローンは優しい言葉をかけ、「お前は良い警官だ」と褒めるのです。ストーンの嬉しそうな事。完全にメスの表情です。このままトロントで結婚式をあげそうな勢いです。

 マローン襲撃さるの報にもネスと一緒に駆けつけました。ネスと一緒に泣いていましたが、駅へ向かう時には気丈ないつものストーンに戻っています。

 そんなストーンをマローンは愛していたのです。草葉の陰で喜んでいることでしょう。

 「帳簿係を殺すなよ」とネスが釘をさすのがポイントです。マローンの仇だと勢い余ってやりかねないのがストーンです。

 ストーンの大活躍によりペインは無事確保され、ネスはシカゴを去り、マローンの形見のメダルだけがストーンの手に残りました。

 ストーンはもうネスとマローンに後ろから前から教えられた男の快感を忘れられません。

 間もなく禁酒法は廃止になります。カポネを刑務所に送り込んだ男として一躍シカゴ市警の顔になったストーンは警察学校に赴き、生意気な候補生を捕まえて言うのです。

 「飲みに行こうぜ。『ブルーオイスター』って店だ」

 いやあ、映画って本当に素晴らしいものですね。


マローン×署長

 マローンはキャリアは長いので署長とも知った仲です。しかし、署長はマローンと違ってポネとズボズボなので、マローンがネスといちゃいちゃしながら取り締まりに精を出すのが面白くありません。

 ニッティを警察署に潜入させたのも明らかに署長の手引きです。しかも、そのせいでの巡査一人が無駄に殺されてしまうのです。

 しかし、そんな事までしたくなかったのは署長の複雑そうな表情から読み取れます。つまり、署長は心の芯までは腐りきっていないという事です。

 署長にとって、こんな世紀末なシカゴに居ても何物にも染まらないマローンはまぶしすぎる存在なのです。これは完全にBLです。

 そして「若い者が死ぬといたたまれん」とマローンに漏らし、事件から身を引くように警告したのが全てです。一矢報いたんだからいいじゃないか。無駄死にしないでくれという署長の愛のメッセージです。しかし、そんな渓谷に耳を貸さないからこそマローンは眩しすぎるのです。

 マローンも署長が芯まで腐っていないのを見抜いています。第一、マローンは署長から酒の取り締まりの為の情報を得ていたのです。

 そしてマローンはペインの居場所を聞き出そうとします。危険すぎるので署長は嫌がり、マローンと痴話喧嘩をおっぱじます。

 明らかに署長はマローンが好きです。「役人なんかとつるみやがって」という言葉にホモのジェラシーがにじみ出ています。シカゴ市警の良心として俺のマローンでいて欲しいというわけです。

 マローンは「お前が今までやってきたことをばらす」と脅しをかけます。カポネとの癒着の事ですが、マローンとの過去を織り込むなら、夜の署長の勤務態度も勿論込みです。

 だとすれば「刑務所にぶち込んでやる」という次の言葉はご褒美で逆効果ですが、嫉妬に狂った署長は脅しに屈さずマローンに殴り掛かります。

 そして殴り合いの末拳銃を突き付けてマローンはペインの所在を吐かせるのです。しかし、BL的映画鑑賞です。カットされたシーンがあるのです。こういう時は下の口に聞くものと決まっています。

 「ケツの穴まで腐ってやがるな。ぐしょぐしょだぜ」

 「覚えてるか?警察学校を抜け出して『ブルーオイスター』で飲んだ時の事?」

 とか言ってマローンの股間の拳銃が署長に向くのです。愛するマローンに身も心も滅茶苦茶にされれ署長は何だって吐いちゃいます。カポネとどんな風にヤったのかさえ。

BL的に解説(ナマモノ注意)

カポネバイ説
 アウトローにゲイが多い根拠は散々説明してきました。となれば、カポネが男もイケる口である可能性は十二分にあり得るわけですし、むしろ一回も男とやらずに死んだとは考えにくいのです。

 本作のカポネは特にホモ臭い仕上がりになっています。何しろBL力抜群のデ・ニーロです。NYへ行けば長じてバイセクシャルのマーロン・ブランドになるのです。

 マスコミの差し向けた番記者を侍らせていたというのは本物と同様ですが、これもなかなかホモ臭い行為です。

 当時のアメリカでは女性記者はもう珍しい物ではありませんでしたが、カポネの番記者は若い男ばかりです。これはもうカポネ好みの男を各社が差し向けているとしか思えません。

 カポネがシカゴの権力という権力を買収したのも、金の力だけとはどうも思えません。ホモには自らのケツという山吹色のお菓子を差し出していたとしても驚きません。

 ネスが殴り込んできた時に応戦する構えも見せたのもだとすれば納得です。マローンとネスがデキているのは当然知っているのです。ニッティと違って愛する男を殺された男の恐ろしさをカポネは知っているのです。

 結局ニッティがアホノンケだった事が裁判の敗因となりました。陪審員を入れ替えられ、司法取引をするべく有罪を自ら認めた弁護士に殴り掛かるカポネ。

 これ自体が痴情のもつれなのです。彼は顧問弁護士であると同時に肛門弁護士だったのです。裏切られたからカポネは殴ったのです。

 刑務所でのカポネはすっかり落ち目になり、他の囚人にいじめを受ける日々を過ごしました。どんなに落ち目でもカポネは大物ですし、やはり大物を抱くというのは快感なので、牢名主に掘られることは避けられません。

 あるいは梅毒を悪くしたのはそのせいでさえないかと思えます。梅毒は男同士でもかかるのですから。

 カポネはアルカトラズで起きた囚人のストライキに参加できないほどに衰え、そのことをなじられて泣くばかりだったそうです。まさに『カポネ大いに泣く』というわけです。

 あの映画は主演がショーケンなので実質ホモ映画です。まあ、これ以上はいくら何でも怖いので、この辺で筆を置いて飲みに行こうと思います。

お勧めの映画

 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介します

ショーン・コネリー追悼特集
『レッドオクトーバーを追え!』
『007 ドクター・ノオ』

エンニオ・モリコーネ追悼特集
『ニューシネマ・パラダイス』

『夕陽のガンマン』
『ミスターノーボディ』
『さすらいの用心棒/暁のガンマン』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』

『ゴッドファーザー』(★★★★★)(二本目のギャング映画に)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(★★★★★)(三本目)

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 葉巻を思う様に買えない私に愛の手を


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