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3度目のソロキャンプ③ 孤独で平和な夜 無になる焚火とテントで読書編


ひとりきりのキャンプサイトに夜のとばりが下り、薄く残っていた日の光も木々の間に消えていった。

幻想的な空の色

そうなると、益々映えるのは焚き火の炎。

焚き火が映える時間帯

まだ昼の暑気の残るサイトには、更けゆく夜の中にもほんのり明るさがあるような気がされて、孤独なキャンプにも何故か寂しさのようなものは差し込んでこない。

更けゆく夜

夏の〝陽の気〟に包まれているせいだろうか、全く夜が来たという感じがしないのだ。
気持ちは益々昂揚し、「キャンプはこれからだ」と意気込む自分がいる。

「初めて自分で火を起こしているのだ」
という興奮

家の庭木から分けて持ってきた枝は、まだたくさん残っていた。
最初は食事の時の炭の焚き付けにだけ使うつもりだったその枝を
「もう全部燃やしちまおうか」
と思い始める。

焚火から視線を外せば
暗闇にひとりぼっち

このサイトは家族連れの多いオートサイトからも離れていて隔離感MAXだ。
なのでひとり黙って焚火の前に座っていると、完全な静寂を得ることが出来た。

時々どこかで鳴く鳥の鳴き声と小さな虫の声、耳をすませていなければほとんど気にならない木々が風にそよぐ音。

それだけだった。

人里から遠く離れた標高1200mの高地でのソロキャンプ。
しかもサイトには自分だけしかおらず、突然与えられたアブソリュートなぼっち時間。
正直言うと、どうなることかと思わないでもなかった。

だが、

孤独な夜は思いがけずどこまでも静かで平和だった。


ただひたすらに
火を燃やした

火を見つめていると、自然と黙ってしまう。
食事の用を終えたb6君に、私は黙ったままひたすら小枝を加え、
火を燃やし続けた。

その間、心は全く「無」になっていた。
日常の様々な雑事、予定、人間関係のあれやこれ、ぐるぐると休みなく回っている頭の中の景色が、ゆらめく炎に乗っ取られ、「無」が全てを占めていた。

こんなに何も考えない時間は、いつぶりだろう。

思い出せなかった。


気温は下がり
湿度は増し増し
よく見ると温湿計が結露している

気温は下がったが20℃台をキープしており全く寒くはない。
湿度は益々上がってきて、100%に近づこうとしている。

日が暮れた後から徐々に皮膚にしっとり感を感じ始めた。

その時突如、
夜の訪問者が現れた。

闇夜に現れた
ヤモリ
……安心してください、
私物です(ガチャ)

……と言いつつ、実はこれ
自分で連れてきたガチャの「ニホンヤモリ ライトカラー」だ。
焚き火の灯りに思った以上によく似合う
と思った。

バンダイの「いきもの大図鑑レプティ」シリーズは、爬虫類をちょうどいい感じに可愛らしくデフォルメしたデザインが気に入っている。
リアルを追求しながら愛嬌も忘れない。表情に愛らしさを持たせているところが秀逸だと思う。

ダークカラーも欲しい気がしているが
まだ思案中

うちのコはガチャを回さずメルカリでゲットしたものだ。

人気カラーらしく正規値段より高く買うことになった。


名前はつけていないけど
楽しそう
ヤモリは夜が似合うなあ

ヤモリ君も、この夜を楽しんでいるみたいで……。
連れてきてあげて良かった。


ランタンとウイスキー
キャンプの雰囲気がぐっと深まる

ウイスキーも少し。
ビールに日本酒もあれだけ飲んだというのに。

どこまでも欲張るキャンプの夜。


燠火

枝は全部燃やし尽くした。

炎がだいぶ下火になって、灰とおきを残すだけになった。

熾火とはこんなに美しいものなのか。
初めて知った。


テントが一番可愛く見えるのは
何といっても夜だと思う

焚火が完全に消えてしまったので、
テント内にベースを移した。

ランタンを灯して外側から見ると、テントって可愛い。
テント自体が間接照明のようだ
と思う。


寝袋広げて
夜伽のセッティング

テントの中に入った。
テントにしろ寝袋にしろ、何度やっても上手く畳めたためしがないので、
広げるとシワシワなのは仕方がない……と溜め息をつく。


テント内は涼しく
湿度も低かった
快適 ♡

テントの中は快適だった。
屋外よりも更に涼しく、湿度は何と47%。

今夜はよく眠れそうな予感がする。


高村薫の
囚人とヤモリの
物語を読む

おもむろに、携えてきた文学雑誌を広げる。
新しいものではなく、2020年の『群像』1月号。

高村 薫の『星を送る』という小説が強く印象に残っていて、キャンプの夜にもう一度ゆっくり読みたいと思い荷物に入れていた。

この小説には、ヤモリが出てくる。
なのでヤモリ君と一緒に読んだ。

独房に棲む囚人のもの言わぬ相棒(ヤモリ)は、長い時を供に過ごし過ぎて囚人の思考に共鳴する。ふたりの静かな日々は、ベテルギウスの超新星爆発によってその様相を変える。

超簡単に要約すると、このような話だ。
全くドラマティックでもなければしみじみといい話、というわけでもないのだけれど、これを読んだ後、何故か私には強い印象が残った。
雑誌に載っている他の小説も面白く読んだには相違ないのだけれど、他の小説はもう記憶に残っていないのに、この小説だけは、何故かいつまでも記憶に残り続けている。

そういう小説ってあるものだ。

2020年の『群像』1月号

ヤモリ君もわかってくれたかな、この感覚。


ブルーノの赤いランタン
がお気に入り

夜のしじま。お気に入りの赤いランタンだけが明るく微笑んでいる。

いつも思うのだが、夜テントに入ってからの時間というものは、
あっという間に過ぎてしまう気がする。


テントのベンチレーション
それにしても虫がいない

テントの換気構造、ベンチレーション部分を見上げる。

それにしても今回は本当に虫がいない。
真夏の夜、辺りには光度控えめな常夜灯の外灯があるきりで
他の光源といえばこのテントだけなのに……。

以前、9月の上旬に標高600mのキャンプ場でソロキャンプをした時は
このベンチレーション部分の網に割とたくさんの虫がついていて、朝の撤収作業の時に難儀したものだった。

標高1200mには虫がいない(皆無というわけではないが)!
そのことを確認した瞬間だった(^_^)。


小説を読み終えた後、寝袋のファスナーを閉じ、寝支度を整えた。

長距離ドライブとサイトの設営、雷雲との闘いに初めての焚火経験(からの心ゆくまでの酒盛り)など
盛りだくさんの内容で、充分過ぎるほど密度の濃いソロキャンを楽しめた一日だった。

外気温が下がっているのだろう、テントの内側に細かな水滴がついている。この現象はいつものことで、避けようがないしもう慣れっこになっているので、濡れないようにテントの壁からそっと身を離す。

時計を見なかったのだけれど、ちょうど真夜中を過ぎた頃だったかと思う。ランタンの灯りを消し、目を閉じた。

そしてちょうどいい〝寝ポジ〟を探り、心地よい疲れと共にまどろみに漕ぎ出していった。


3度目のソロキャンプ④ 
ジェネロスな雲海と朝ごはん 撤収編

に続きます。

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