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出産直後の食事シーン広告炎上:背景にはマンスプレイニング

バーガーキングの最新広告キャンペーンがイギリスで物議を醸しています。


出産後に病院でハンバーガーを食べている女性と抱かれる新生児


広告炎上理由

OOHとしても掲出
NewYorkPostより

✅病院にファストフードを持ちこむことへの批判
✅不健康な食習慣を助長
✅出産というセンシティブなテーマを扱ったこと
✅出産後の姿を広告にすることへの不快感
✅女性のあらゆる瞬間を消費モメントとみなすことへの嫌悪

広告主の意図

炎上してしまったこちらの広告ですが
この広告では、出産直後の母親たちがバーガーキングの商品を食べる様子が"リアル"に描かれています。メディアに理想ではなくリアルを映す、は西洋社会で大切にされているので、DEIの観点からよい判断だったと言えます。

白人だけでなく黒人の母も起用しているのはRepresentationを大切にしているから


また、広告主は、調査をもとに「こんな瞬間にバーガーを最高に味わえるよね」という消費者調査からでたモーメントを使用して広告をつくったそう。

ターゲット属性のひとつである出産直後の女性に対して、広告主が『出産後にはバーガーが正解!』と決めつけたわけではない。

炎上後の対応

炎上を受けて、広告主バーガーキングの競合であるファストフード大手が、出産後の最初の食事としてハンバーガーを希望する女性が39%いるというデータを発表しています。

議論が巻き起こるとは予想していなかった。出産後の空腹感をリアルに描き、ハンバーガーを通じてその体験を少しでも和らげるという点で、広告が実生活に基づいていると思う。また、出産後のごほうびとしての食べ物の意味が、この広告の背後にある重要なメッセージ。とはいえ、視覚的な強烈さや現実感が一部の人々を不快にさせるだろうと予測しました。今回のバーガーキングの広告は、完璧な母のイメージではなく、出産後の「リアル」な瞬間を切り取っています。完璧さを追い求める従来の母性のイメージとは一線を画し、あえてその飢餓感や疲労感をリアルに伝えています

バーガーキングの広告制作担当者コメント

大切なのは、
広告主が『何を伝えるか』を明確に、
『どういう批判がおこるか』まで予測した上で広告制作に当たっていた
点です。

批判は女性でなく男性の投稿?

炎上させた側の消費者の意見をもう少し探ってみましょう。
炎上を起こしたのはターゲット女性ではなく、男性のマンスプレイニング(話し相手が無知だと決めつけた上で独断的に上から目線で説明するという男性特有のコミュニケーション:mansplaining) によると言われています。
出産や栄養について『自分が知識があること』を見せびらかすための男性の広告批判の投稿が散見されたとのこと。
例えば、この男性マーケターの投稿

新生児の誕生の横で、ガンと肥満の原因となる超加工食品を宣伝する広告だ。

Wioll Poskett、マーケ戦略家&インフルエンサー 

イギリスでは、日本ほど栄養バランスや健康についての意識が高くないので、栄養や健康について語ることは「スマートで意識の高い自分を見せる」演出であるとする風潮もあります(同じ理由でベジタリアンやVeganになる選択をする人が多いとも報告されています)。

女性の意見は?

この男性による広告への反発を「解釈違い」とする女性も多いようです。

快適な食事を楽しんでいる姿を映してるだけ。出産後、何を食べたくなるかってサラダじゃないでしょ!この広告は肥満や不健康な食習慣を助長するものではない。女性を主人公にした、バーガーキングが適切に消費者を捉えたシンプルなコンフォートフードのモーメントのはず。多くの母親にとっては、出産直後に食べる食事は、人生で最も味わえるもの!

オーストラリアの代理店社員、Linkedinのポストより


ターゲット女性や、出産経験のある女性には刺さっていたといえます。
そもそも、イギリスでは食に対してこだわりが強くなく、
日本ほど「栄養バランスの良い食事をしなくては」という意識はありません。つまり、「出産後にバーガーを食べたい」が当事者である女性の本音だった、と伺えます。(健康意識の高い日本で掲載されたら、多くの女性もこの広告に嫌悪感をもったもしれません)

当事者の本音を無視して、出産経験のない男性が「よくない」「女性に不適切だ」として広告批判する事こそが、よくない、として広告は現状、取り下げられていません。

炎上から学ぶ

この広告は、社会(市民)が普段、出産や母性をどう見ているのかを顕在化させた炎上と言えます。広告主が悪い、消費者が悪い、とは一概に言えない事例でした。

炎上は、今まで見えていなかったインサイトの表出なので、次の企業コミュニケーションのリスク管理に繋げられます。

消費者に受け入れられる広告をつくるために

広告炎上や批判可能性を把握すること、メッセージを適切に伝える、適切に市民のリアルな声を聴くには、
社会背景や、ターゲットの傾向、感情など様々な要因を理解する必要があります。
調査会社での広告評価や海外での広告展市民参加型炎上広告のつくり直しプロジェクトを行った経験を活かし、企業向け支援を行っております。
もし自社広告、発信内容に不安がある方はお役に立てますので、ご連絡ください。


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