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Adecco Groupが地域社会貢献を通じた人財育成で形にしたい未来とは?

Adecco Groupにおいて、約8,400名のエンジニアとコンサルタントを擁し、テクノロジーソリューション事業を展開するModis株式会社。ITとエンジニアリングにおける最先端のテクノロジー領域において、「Tech Consulting」、「Tech Talent Services」、「Tech Academy」の3つのサービスを提供しています。そのうちTech Consultingの中核をなす「バリューチェーン・イノベーター(VI)」は、高い技術力を持つエンジニアによる問題解決サービスで、多くの顧客企業に受け入れられています。

そのVIから2019年に生まれたのが「地方創生VI」プロジェクトです。テクノロジーと課題解決力を備えたエンジニアが地方自治体に赴き、地域住民や自治体職員の方々と対話しながら、地域の課題を解決へ導くという取り組みです。この取り組みは現在では「地方創生人財育成」プログラムとして、企業向けの研修サービスとしても提供されています。

今回は、起案者で運営メンバーの一人でもある種畑恵治さんにうかがいました。

社会課題解決への取り組みでエンジニアの成長を促す

——VIから地方創生VIが生まれた経緯について教えてください。

バリューチェーン・イノベーター(VI)は、Modisのエンジニアが行う課題解決やコンサルティングのサービスです。
 
Modisのエンジニアは、顧客企業においてIT・情報システム、メカトロニクス、あるいはエレクトロニクス等の分野で開発業務や設計業務などに携わっています。

エンジニアは顧客企業の事業成長を実現することを目的に、日々現場の業務と並行してVIプロジェクト(課題解決活動)を遂行していますが、民間企業に対する課題解決は売上や利益の向上、業務効率化などある程度決まったテーマに向き合うことがほとんどです。

課題を解決するためには広い視野を持つことが重要ですが、それ以上に、視野が広がったり視座が高まったりする機会をなかなか持てないという課題を抱えていました。

エンジニアが日常業務の枠に留まらず、より幅広い課題に接し課題解決能力と人間性を成長させる機会を作り出せないか。それが、視野の広がりや視座の高まりにも繋がるのではないかと考えたのです。
 
そこで注目したのが、社会課題です。「パートナー企業が抱える課題と社会課題とでは、解決方法も必要な能力もまるで異なっている。だからこそ、社会課題に取り組むことによって、エンジニアの更なる成長の機会があるのではないか。」と。

そう思っていたときに出会ったのが、多くの自治体や企業とともに社会課題解決につながる取組みを推進しているボノ株式会社の谷津孝啓さんでした。2018年11月に初めてお会いし、互いのビジョンや構想を共有したところ、一瞬で意気投合しまして3カ月後の2019年2月に一緒にプロジェクトをスタートさせたのです。

——2019年の5地域7市町村から始まり、2021年は16カ所で実施されたということですが、対象となる自治体はどのように決まるのでしょうか?

ボノさんの協力のもと、自治体へアプローチし、手を挙げてくれた自治体と直接話をして、熱意を持ってくれている自治体と一緒に始めることにしたのです。これまでに、人口5000人から16万人ほどの規模の自治体と取り組みを実施しました。
 
地方創生VIプロジェクトの参加者は、社内公募で募ります。参加した社員には、最初の1年目は運営側が用意したプログラムを実施してもらい、2年目以降、独自に動ける体制が整えば、プロジェクトチームとして自走していきます。現在は、新型コロナウイルス感染症の対応のため活動を休止している自治体もありますが、活動自体は休止していても、コミュニティとして、講演会や交流会なども開催しています。

——地域創生VIは、金銭的対価を求めずに行われている取り組みだそうですが、なぜそんなことが可能なのでしょうか?

この取り組みを社員の能力開発を目的として行っているというのが、大きな理由のひとつです。プロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)、つまり実践型の教育プログラムとして運営しています。
 
自ら課題を見つけて、解決のための提案や合意を行うという経験が社員の能力開発につながります。高い能力が身につけば、それがいずれ本業に反映されると考えます。
 
これまで参加した社員は、通常業務を行いながら、1カ月あたり平均10時間ほどを地方創生VIに費やしており、業務の一環として取り組んでいます。主業務を抱えながらの活動のため、通常業務外の時間に地方創生VIの業務を行っている社員も多いようです。

 プロジェクトへの新規参加者は事前研修を受講。
現地へ入るための作法や基礎知識を習得します。

——メンバーは現地に何度ぐらい行くのでしょうか?

初年度に地域を訪れる機会を2回設けています。1泊2日の視察と2泊3日のフィールドワークという2つのプログラムです。それ以外はリモートで対応しています。
 
フィールドワークでは、地域の方々にインタビューをして、その内容を記事化します。インタビューで話してもらう内容は、あらかじめ決めているわけではなくて、その地域で育った住民の方々の目線を通した地域の良さや将来像など、ネガティブな問題や課題より、目指すべき未来にむけたポジティブな想いを、自由に話してもらうのです。
 
その活動を通して地域を理解したり、課題を見出したりして、どんな未来をつくっていきたいのかを、役所の方や地域住民の方と一緒に考えながら、ビジョンを作っています。最後に最終報告書も作成します。
 
この期間で経験するビジョン構築力、地域の方との信頼関係構築力、ファシリテーション能力といったことは、通常業務の中ではなかなか学べません。視座が高められていくことも期待されています。

視察の様子。
行政職員や地域のキーパーソンの方々へのご挨拶、本取組みの説明などを行います。
(鹿児島県薩摩川内市)
現地でのフィールドワークでは、インタビューを通して地域の方々の目線から見える地域特性や
目指すべき未来を把握、記事化していきます。


信頼を勝ち取るまでには地道な活動も。それによって、急速に見えてくる地域の課題

——種畑さんも実際に地域でのプロジェクトに参加されたとうかがいました。地域を理解し、問題を解決するためにどんな工夫をなさったのでしょうか?

2019年に茨城県鉾田市で商工会の青年部の皆さんといろんな取り組みを行ったことが特に印象に残っています。
 
2泊3日のフィールドワークで現地に行ったときに、商工会の方がやっているお店で懇親会をしました。その中で「今度のお祭りで子供向けのプログラミングの授業をやったらどうでしょう」という話になり、すぐに「面白い、やろう」ということになったんです。
 
当日はパソコンやロボットを使って、子どもたちにプログラミングを教えていたのですが、そこに、市の職員の方もお子さんと一緒に来てくれました。これを境に、コミュニケーションが、とてもスムーズになったんです。「この人たちは地域に入って一緒に汗をかいて、活動してくれる」と信頼してもらえたのだと思います。このお祭りが鉾田市の地方創生VIにとって、ターニングポイントになりましたね。
 
その後も、商工会青年部の方が営む店先での立ち話の中から、ゲームをしながら街を巡るアプリの制作を依頼されることになったり、精肉店へのウェブ決済システムの導入支援をすることになったりと、次々と事業につながっていきました。
 
デジタルやITの用語に馴染みのない人たちからは、最初は「横文字を使わないでくれ」と言われるようなこともありましたが、最近では、「Zoomで飲み会をしよう」と誘ってくれるまでになったんです。一度打ち解けることができると一気に会話がスムーズになり、困っていることを話してくれるようになるということを、身をもって体験することができました。
 
取り組みを続けるうちに、ちょっと相談してくれたらすぐに解決できるような困りごとを、実はいろいろ抱え込んでいるということも分かってきました。企業同士の話しであれば、効率が重要なので、どんな問題でも直線的に話が進みます。ところが地域の人たちにしてみれば、東京のよく知らない会社の人が横文字混ざりで話しているという印象なのだと思います。会社のことをうまく説明するだけでは、信頼を得ることはできません。関係を構築するためにはお互いを知り合うための時間が必要になるのだと思います。

——地方創生VIでは、地道なコミュニケーションも求められるのですね。エンジニアが日常的に求められる能力とは異なるものではないでしょうか。

約8割のメンバーがそのギャップに戸惑ったり、悩んだりということを経験します。1年に渡る実践の中で、それまでの考え方が地域では通用しないということを理解しながら、徐々にマインドチェンジできるようになっていきますね。
 
困りごとや課題があると話すチームには、他の地域でうまくいった具体例を紹介して参考にしてもらうこともあります。
 
日本のIT企業が海外でプロジェクトを行うと、文化や商習慣や考え方の違いのためにうまく進まないとよく言われますが、国内でも文化も考え方も違う人と一緒にプロジェクトを行うと、同じような問題が起こります。地方創生VIは、そういったシーンでも柔軟に対応できる能力を養う訓練になりますね。

——地方創生VIから事業に繋がっている例にはどんなものがありますか?

2021年9月にデジタル庁が発足し、市町村にとってもデジタルがテーマになってきていることもあって、地方創生VIとして関わった市町村からエンジニアを派遣してほしいという要請が増えました。主には、総務省が主導する、都市部から地方への人流を促す地域おこし協力隊や文科省が主導して子供たちに1人1台端末を配るGIGAスクール構想に関わる事業、地域活性化起業人を活用した地域のデジタル化推進などです。
 
例えば福島県矢祭町では、GIGAスクール構想の一環でタブレット400台の導入とあわせて、地域企業が主体となり維持管理ができるように、技術支援や育成を行っています。また、端末導入だけでなく、教職員や親世代へのデジタル教育を実施していきます。直近では2021年11月に北海道東神楽町と包括連携協定を結び、地域おこし協力隊の制度を活用した、デジタル人財の育成と地域社会への定着を支援する取り組みも開始する予定です。

地方創生VIの目標は、2025年デジタル人財1万人の創出。日本全体の生産性向上につなげていきたい

——地方創生VIも3年目を迎えました。社内やグループ内での反応はいかがでしょうか?

地方創生VIが志望動機のひとつで入社してくれた人も出てきました。
特に若い人たちはSDGsなど、社会的意義のある活動へのアンテナを高く張っていて、「この会社でどんな意義のあることができるのか」を重視する傾向があるようです。
 
また、エンジニアに限らず、越境体験によるさまざまな学びが得られることから、Adecco Group Japan全体で取り組んでいこうという活動になっています。

——種畑さんの地方創生VIに対する熱意はどこからくるのでしょうか?

もともとは、高年次エンジニアのキャリアパスを用意したいという気持ちが原点にあります。地方創生VIはエンジニアと課題解決者、ふたつのキャリアを積み上げた経験や能力を必要とする仕事でもあるし、成長のための道標でもあるだろうと考えています。
 
日本は高齢化社会であり、現在約8,400名のエンジニア社員を抱える当社においても、社員が高齢化していきます。ゆくゆくは70歳ぐらいまで働きたいという人も出てくるでしょう。そのときに、どんなキャリアパスを示せるだろうかと考えたんです。
 
また2025年には1万人のデジタル人財を地域に生み出すという目標も掲げています。移住や地域の方への教育も含めて実現したいと考えていますが、1社の企業だけでは実現し得ることではないため、社会的な意義のある活動を重視しているほかの企業と協働して進めていきたいと考えています。
 
地域の中でデジタルを使いこなせる人財を増やすことは、日本全体の課題解決や生産性向上につながるとともに、少子高齢化や生産年齢人口の減少に対応し、市民の安全・安心な暮らしや豊かな地域社会と次世代を見据え、将来にわたり持続可能なまちづくりを実現することができるはずです。今までITとの結びつきが少なかった産業や行政にとって、デジタルツールをうまく活用した業務プロセスへ移行していくことで、その地域に住む方々が主体的にイノベーションを起こす未来が訪れることを期待しています。

地方創生VIは、社員の人財育成やキャリア支援、日本の地方が抱えるデジタル化や生産性向上、少子高齢化への問題など、いくつもの課題を解決に向かわせるための施策と言えます。

これからもAdecco Groupのさまざまな取り組みをご紹介します。次回もお楽しみに!
 


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