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LIFULL HOME’S ACTION FOR ALL note1周年企画 今こそ読んでほしい記事5選

社会課題を住宅の領域から解決していこうというLIFULLの活動「LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL」。活動や事業のレポートや、住まい探しが困難な人たちに向けての情報提供のほか、より幅広い人たちに“住まいに関わる社会課題”を知ってもらいたいという想いから、インタビュー記事の掲載を開始しました。

開設から1年以上が経過し、住宅弱者の人たちに寄り添い、尽力する人たちの現場の声をお伝えしてきた記事は2022年9月末時点で全55本となりました(翻訳版記事等を含む)。この中から、編集長の山口が今あらためてみなさんに読んでもらいたい記事を5つピックアップ。振り返りと合わせてご紹介します。


『同性カップルが賃貸物件を借りにくいのはなぜ?課題とこれから』

編集長山口のコメント
「当事者であり、支援者でもある須藤さんの『見えない差別』と『無関心』いう言葉は、まさにこの問題を物語っていると思います。自分自身も、この記事を通して初めてLGBTQカップルが直面する課題について知り、考えさせられました。」

お話を伺ったのは株式会社IRIS代表・須藤啓光さん。株式会社IRISは、LGBTQフレンドリーを掲げ、5000件以上のお部屋をご紹介してきた実績のある不動産会社です。
当事者でもある須藤さんは、代表取締役CEO業務と並行してTV番組の出演、ラジオMCや学校や企業での講演などLGBTQをめぐる課題の啓蒙のため、幅広く活動されています。

本記事では、不動産賃貸でLGBTQ当事者が直面する“お部屋が借りにくい”という問題を切り口に、その背景について伺いました。
異性のカップルなら何の問題もなく借りられるところ、同性というだけで不動産会社で門前払いをされたり、不快な思いにさせられたり、審査に通らなかったりというトラブルがあるそうです。そしてそれらは往々にして誤解や偏見によるものだと実例とともに解説していただきました。
“男性同士はダメだけど女性同士はOK”といったジェンダー差がある実情もあるとのお話もあり、問題の根が深いことが感じられました。

記事内では紹介できませんでしたが、須藤さんは借りやすさのカギともいえるパートナーシップ制度をとりまく問題にも触れていました。
パートナーシップ制度で承認されているカップルならお部屋の貸し出しは可能、という物件はあっても、この制度はカップル同士が同じ自治体に住んでいないと申請できない自治体が多いそうです。そのため、他自治体からの転入の場合には卵が先か鶏が先かといった状況に陥りやすく、その点にも難しさがあるといいます。

また、須藤さんによると、LGBTQ当事者のお部屋探しで問題になりやすい状況は2つあり、ひとつがこの“同性カップル”、もうひとつが“トランスジェンダー”なのだそうです。
トランスジェンダーのお部屋探しの問題については、こちらの記事でご紹介しています。

▼トランスジェンダーをめぐる不動産問題ー見た目と性別欄のズレがもたらす壁


『身体障害者の一人暮らしとは? 入院や施設とは違う「自立生活」という選択』

編集長山口のコメント
「身体障害者の方が一人暮らし用の住まいを探すことへのハードルの高さを感じたのはもちろんですが、自立して一人で暮らせるようになるまでに様々なサポートが必要になることも大きな気づきでした。障害者の方が住める物件が増えるだけでなく、『障害者が生活しやすい、理想の暮らしを探せる選択肢が増えてほしい』という土屋さんの言葉も印象的です。」

インタビュイーは、障害者の自立生活を支援するNPO法人STEPえどがわの事務局長・土屋峰和さん。ご自身も車いすユーザーで、ご出身の静岡県から約20年前に単身江戸川区にお引越しされ、以来自立生活をされています。

2006年の調査によると、身体障害者、特に肢体不自由な方で施設以外の場所で暮らす人のうち、家族の元に身を置く人は約8割。調査から10年以上経過はしていますが、2022年の今となっても、“肢体不自由な方の一人暮らし”というと驚かれる方も多いかもしれません。
しかし、当事者の中には、「いつまでも親に頼れない」「一人暮らしをしたい」と、自立生活を望む方が少なくないのです。

本記事では、身体障害のある方の一人暮らしや自立に向けての現状や課題について取り上げました。
STEPえどがわの事務所にお邪魔し、直接土屋さんにお話を伺ったところ、身体障害者が自立生活をするために協力的な不動産会社と、身体障害者が入居できる物件が極端に少ない切実な状況が分かりました。
選択肢があまりにも少ないことから、お部屋探しに際して抱いていた希望や条件があっても「入居できるだけマシ、仕方ない」と飲み込むことも多いのだそうです。

STEPえどがわでは、自立生活を目指す障害者が実生活体験を通してイメージを固める施設「Yattemi~Na!(やってみ~な)」を、集合住宅の一室を借りて運営されていますが、せっかくのそこで得られた知見も、入居先が見つからなければ元の木阿弥です。
Yattemi~Na!の存在は、一般的な賃貸住宅もリフトや手すりなどの設置で肢体障害のある方に貸し出せる良い例でもあると感じました。
今後、より障害のある方が安心して相談のできる不動産会社や不動産オーナーが増え、当事者の選択肢が増えることを願ってやみません。


『子どもシェルターが守る 帰る家のない子どもたちの今』

編集長山口のコメント
「なかなか表に出てこない貴重なお話をまとめています。特に、追い詰められて行き場のなくなった子どもたちの現状は取材時から胸が痛むお話ばかりでした。コタンとして長年子どもたちのサポートに尽力してきた坪井さんの活動や信念にも頭が下がる思いです。」

第2回えらんでエールの寄付先としてLIFULLとご縁がつながった、社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事の坪井節子さんにお話を伺った、こちらの記事。
カリヨン子どもセンターは、日本初となった民間の子どもシェルター「カリヨン子どもの家」を運営しています。
子どもシェルターとは、虐待やネグレクトにより家庭に居場所のない子どもたちを一時保護する施設。奪回しようとする親権者などから子どもを保護するため所在地などは非公開にせざるを得ず、それゆえ一般認知が少ない場所です。

児童養護施設とはまた異なる子どもシェルターの性質、子どもシェルター設置のあらまし、虐げられてきた子どもの心の傷の深さに向き合うことの壮絶さなどを、現場の声としてお聞きしました。

編集長山口が触れている“コタン”とは、子ども担当弁護士のこと。カリヨン子どもの家やカリヨンで受け持つ子どもたちには、東京弁護士会と連携して、専任の弁護士が付くのだそう。
“子ども”というだけで虐げられることの多い立場でも、きちんと人権があり、尊ぶべき存在であることを、法の力をもって坪井さんをはじめとする弁護士の方々が伝え、彼らを支えています。

夜に浮浪する子どもたちを目の当たりにして「素行が良くない」「風紀が乱れている」と感じるというのは、バイアスがかかった見方かもしれません。
なぜそうした行動を取っているのか、行き場を求める子どもたちの背景には、複雑な家庭環境やさまざまな事情を抱えてそうせざるを得ない、という可能性にも思いを巡らせてみてほしいと思います。


『シングルマザーの住まい探しのリアルって? 幸せになるために離婚を選んだ女性の座談会』

編集長山口のコメント
「『離婚は大変だったけれど、得られるものも大きい』『子どもがいいパートナーになってくれた』など、離婚という選択を前向きにとらえて進んでこられたお二人の姿が印象的な座談会でした。離婚に悩む女性の参考になればと思います。」

これまでのインタビューではNPOや業界の専門分野の方にお話を伺ってきましたが、この記事では、離婚経験のある女性2名を迎えて座談会を実施。お二人が実際に体験したことをざっくばらんにお話しいただきました。

ひとり親、特にジェンダーイコーリティの観点で困難がつきまといやすいシングルマザー。
シングルマザーに関する支援情報はさまざまな情報サイトで取り上げられてはいますが、環境や背景など、人によって離婚の状況は千差万別です。
にもかかわらず、プライバシーの観点から、実際にどんなことに困るのかが共有される体験談は少なく、今回座談会にご協力いただいたお二人も「離婚を考えていたときに経験者の話を聞きたかった」とおっしゃっていました。
その想いから、離婚を考える人の参考なればとこの座談会に参加してくださり、勇気を出して体験談を語っていただいたお二人には感謝でいっぱいです。

記事では、シングルマザーとして家探しや保育園探しをするときに大変だったこと、生活費をどう工面したか、親御さんとの関係、お子さんの反応など、経験者ならではのリアルな声をまとめています。


『命に関わることだから誰でも分かるように LIFULLデザイナーが語る色のバリアフリー』

編集長山口のコメント
「“色のバリアフリー”という新たな視点を得られただけでなく、限られた時間の中で、地道に検証を重ねてベストな色と柄を導き出すというデザイナー2人の熱意と努力が伝わる記事でした。同じ社員として個人的にもとても刺激を受けました。」

LIFULLのデザイナー長谷部志保さんと上垣陽和さんに、デザインの観点におけるアクセシビリティについて伺ったインタビュー。
これまでのインタビューとはまた毛色の違う内容となりました。

住宅情報ポータルサイトであるLIFULL HOME'Sの新築一戸建て検索のサービスで地図検索をした際に表示される「洪水・土砂災害・地震ハザードマップ」のバリアフリー対応を考案、実装させたデザイナーお二人の制作の裏側を語っていただいた、本記事。
色覚障害のある人にも表示地域の自然災害による危険度が分かりやすくするための必要性に気づいたこと、それをかなえるためのデザイン面での試行錯誤があったことを紹介しています。

ウェブサイトを制作するうえで、“見栄え”だけでなく“伝えるべき情報を正しく伝えること”は重要な使命です。特に人の生活の安全地帯となるべき“家”の情報を扱う住宅情報ポータルサイトでは、その真価が問われます。
またポータルサイトが正しく伝えるべき情報は、テキストの内容だけでなく、画面に表示されるすべての事柄が対象です。

デザイナーお二人の“命に関わる情報だからこそ取りこぼす人がないように”という着眼点と、色覚に難のある方も一般の方も見やすいバランスを見出したこだわりは、クリエイターの神髄のようにも思えました。

またこの記事は、note編集部のおすすめやデザイン関連のまとめにも取り上げていただきました。色覚に障害のある当事者の方や支援者だけでなく、たくさんのクリエイターの方々にも注目していただき、最も反響が大きかった記事でもあります。


おわりに

多忙な中でも時間を割いていただいたり、オンライン等で不便な中でもご対応いただいたりと、このnoteにご協力いただいたインタビュイーの皆さんにこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
また、フォローや“スキ”を送って関心を寄せてくださる読者の方々も、いつもありがとうございます。お話を聞いてみたいトピックや団体がありましたら、お気軽にコメントにお寄せください。
今後もLIFULL HOME’S ACTION FOR ALL noteでは、社会的な弱者をめぐる問題と当事者を支える人たち、LIFULLが社会問題に取り組む様子をお伝えしていきます。

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