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現地観戦からのテレビ観戦で思うこと

セレッソ大阪のゴールキーパーであるキム・ジンヒョン選手が韓国代表に選ばれているのもあり、試合には出られてないけれど、ドイツvs韓国の試合ではなんとなく韓国を応援しながらテレビ観戦。
後半になり実況アナウンサーの「ドイツサポーター席の空気が重苦しくなってきている感じがします」のようなニュアンスの実況を聞いた瞬間、現地観戦してきた試合のそれぞれの空気感を思い出した。

完全アウェイの日本戦@サランスク

正直、初戦のサランスクにおける日本vsコロンビアの一戦は、スタジアムに向かう道中も含めアウェイ感満載だった。どこを見渡しても黄色・黄色・黄色。サムライブルーを見つけるのが困難な状態。

ロシアW杯直前にハリルホジッチ監督の解任、西野監督の就任。そして選ばれたメンバーは若手ではなくほぼ4年前のブラジルW杯と変わってないのでは、と言われ、日本中のサッカーファンがため息をついていたし、希望が見えない状態だったのは言わずもがなである。

そんな中の更なるアウェイ感漂うサランスクのモルドヴィア・アリーナは、モスクワの中心地から約650kmも離れた場所にある。

そんな雰囲気の中始まった、日本初戦。開始早々、コロンビアの選手が故意のハンドを取られレッドカード一発退場となり、PKで香川真司がいきなりゴールを決める。「まさか!」の始まりだった。

個人的に、香川真司は元セレッソ大阪の8番を背負った選手ということで注目はしていたが、ドルトムント等のチームでは活躍するものの、こういったW杯のときに限って本番に弱いイメージを持っていた(勝手ながら)。
なので、正直このPKは決められると思っていなかったところもあったりする。なので、貴重なこのチャンスをものにした日本代表を見たとき、一縷の望みを感じたのも事実だ。

おそらくこの試合を現場で見た日本人サポーターの大半は、直前のガーナ戦を見るまで「無理」と思っていた人が多いと思うのだ。そして、ガーナ戦での香川・乾コンビ(両方とも元セレッソ大阪)の活躍を目の当たりにし、「ひょっとしたら、いやでもまさか」という想いのまま集まっていたに違いない。

この状況というのは、実は選手にとってものすごく孤独な状況なのである。違う意味でのプレッシャー、何が何でもいい意味で期待を裏切らねばならない状況にあり、その初戦の相手がハメス・ロドリゲス有するコロンビアという強豪、スタジアムの雰囲気も日本人サポーターが声を上げてもかき消されるほどの完全アウェイ、この3拍子がそろった中でのあの劇的勝利なのである。

観衆8万人のポルトガル戦@モスクワ

ポルトガルvsモロッコを観戦したのは、モスクワの中心地に近い、ルジニキスタジアム。地図上は「小体育館」と書いてあったのだが、嘘つけというほどにでかいスタジアムだった。

収容人数はどれぐらいかは分からないが、試合の途中に発表された観客数は8万人超え。両方ともユニフォームが赤いため、どちらの応援か分からないぐらい、スタジアムは真っ赤に埋め尽くされる。

初戦のスペインvsポルトガルは、今回のW杯で最もおもしろい試合だったと称される程に打ち合いの末ドローとなった試合。クリスチアーノ・ロナウドのハットトリックがポルトガルの3得点だった。

そのポルトガルの第2戦でもある。
当然のことながら、Cロナウドの得点に関しては期待される。道中はCロナウドのチャントを歌うポルトガルサポーターがあちこちいたし、それをなんとしても防ぎたいモロッコサポーターは、そろって足踏みをしスタジアム中がゆれるんじゃないかと思うほどの音を立てて制しようとする。

だが、そんな中でもあのCロナウドは、すばらしきヘディングシュートで早々に先制点を決めてしまうのだ。
セレッソ大阪での得点シーンでもあまり席を立つことはないこのわたしでも、思わず席を立って叫んでしまうほどに、すごいゴールシーンだった。

ハズしプレイにブーイングのブラジル戦@サンクトペテルブルグ

これほどまでに試合の最中に選手に対してブーイングをするのか、と驚いた試合、ブラジルvsコスタリカ。もちろんブーイングはブラジルサポーターによるブラジル選手のプレーに対するものである。
この試合は、モスクワからこれまた約700km程離れたサンクトペテルブルグというロシアの中で一番有名な観光地にある別名クレストフスキースタジアムで行われた。

ブラジルの初戦はわたしは見ていなかったのだが、噂によるとネイマールの動きがあまりよくなかったらしい。結果スイス相手に引き分けた。
ブラジルサポーターとしては、「ネイマール、お前が頑張らなくてどうするんだ、走れ」という怒りがあったのだろう。
如何せん、試合の最中、ネイマールのシュートが枠の外や枠外に行くたびに、スタジアムのブラジルサポーター(わたしの周りはブラジルサポーターだらけだった)がものすごい勢いでブーイングをする。

おそらくそのサポーターの想い然り、本人としても何か思うことがあったのだろう。そして常勝国ブラジルのプライド、様々なプレッシャーがネイマールを襲っていたに違いない。
前の試合での噂は本当なのかというほど、この試合でのネイマールは身体を張って守備をし、チャンスがあれば攻撃を行っていた。

ただ、5-4-1で守備を固くカウンターを狙うコスタリカ相手になかなかゴールをこじあけられない。そのまま試合はアディショナルタイムに突入、そのアディショナルタイムでの劇的2得点、そのうちの1得点はネイマールだった。

試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、スタジアムのブラジルサポーターの大観衆の歓喜の声が湧き上がると同時に、その場で泣き崩れたネイマールの姿を見たとき、この選手たちの背負っている「モノ」の大きさをものすごく痛感したのだった。

「これがW杯」

先に書いた方の名言だなと思った言葉。
わたしが現地観戦した試合もだし、帰国後テレビで見た試合もそうだ。書いている間に、ドイツvs韓国もこれまたアディショナルタイムに韓国の2得点があり、なんとドイツはGroup F最下位での予選敗退となってしまっている。

単にテレビ観戦だけではおそらく「へぇ、そんなこともあるんだねぇ」で終わっていたような気がする(大変失礼ながら)。
確かに日本のリーグ戦でも感動のドラマは多々ある。だが、現地観戦をしてしまうと、どうしたってレベルが違いすぎることを痛感する。そのうえでこの繰り広げられるドラマ、どうしたってグッと来るものがある。

現地観戦したからだと思うが、帰国後にテレビで見る試合は、選手たちの背負う「モノ」の大きさを、テレビ越しでも妄想してしまう。なので「サポーター席の空気が重苦しい」という実況は、とても身にしみる。そしてざわざわと胸騒ぎがするのだ。

※ちなみにこの先に文章はありません。投げ銭制です。

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