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"新自由主義"導入のメリットを考える

まず、新自由主義と言えば、"貧富の格差を拡大させる"とか、"財政赤字を悪化させる"というような、悪い側面のみが、一方的に語られがちです。

しかし、物事には、必ず良い側面と悪い側面の両面があり、新自由主義にも、"何か、国家にとって良い面があるのではないか?"と思い至ったため、本noteにおいては、"新自由主義を導入する事のメリット"について、考えていきたいと思います。


1.大企業を強くする事で外貨を稼げる

まず、日本は、未だに"主幹産業は、輸出企業である"と言われている程、他国に比べ、輸出企業が強く、例えば、トヨタ等の自動車メーカーや、東京エレクトロン等の半導体製造装置メーカー等、優秀な輸出産業が存在しております。

そして、GAFAM等のビッグ・テックも、世界中のITプラットフォームを支配しており、世界中から利用手数料を搔き集めている事から、アメリカにとっては、重要な輸出企業であるという事が出来ます。

ですので、そういった大企業を優遇する事により、そういった輸出企業の力を底上げする事ができ、"輸出企業を介して、外貨を稼ぎやすくなる"と言えるでしょう。

今の日本は、内需が十分にあるため、あまり当てはまるとは言えませんが、一般的な国家は、"外貨を稼がなければ、国家を存続出来ない"という法則のようなものがありますので、日本にとっても、外貨を稼ぎ、貿易黒字を目指すという事は、重要な事であると言えるでしょう。


また、日本の大企業やそのグループは、アメリカの大企業と違い、雇用を大量に産み出している事から、大企業を優遇する事は、国民の雇用情勢を向上させるという効果は見込めるでしょう。


2.投資家を富ませる事で外貨を稼げる

前章の内容と同様に、国内の富裕層に余力を持たせる事で、海外投資を促進させ、国家全体として見た時に、"債権国家"としての流れを加速させる事が出来ると思っております。

また、"日本政府の発行した国債を、日銀や民間銀行が購入すると言う行為は、日本企業や国民の預貯金を元手として、投資を行っている"と見なす事が出来るので、日本国内の富裕層の資産が増える事は、国債の流動性や、安定性の向上に直結すると言えるでしょう。


3.何故、新自由主義は導入されたのか?

まず、アメリカにおいて、自由主義が導入された背景として、1970年代前半に、労働組合等、反資本主義的な団体の発言力や影響力が高まりすぎた事を受け、資本家達が、それに脅威を覚えたため、政治に裏から手を回し、"新自由主義"という概念を作り、その思想を広めたとされています。


具体的に、レーガン政権誕生前夜のアメリカでは、高福祉政策を実施し過ぎた事に起因する、市場のインフレと不況が同時に発生するようなスタグフレーションや、失業率の上昇等、経済の停滞が起きておりました。

そして、そういった経済の停滞を打開するための施策として、レーガン政権は、"新自由主義"を掲げ、その政策を実施していったのです。

同様に、"イギリス病"に罹ったと称されるような、高福祉政策による経済停滞が起きていたイギリスを立て直すため、マーガレット・サッチャーも、レーガンの行った新自由主義政策を真似、実施いたしました。


やはり、労働者階級のような、資本家ではない人々が、あまりに強すぎる力を持ってしまう事は、共産主義革命と同義であると言えますので、資本家としては、それを阻む必要があります。

しかし、その資本家達の反撃が、余りにも行き過ぎてしまった事から、1970年代以降のアメリカでは、新自由主義が優勢であり続け、簡単に覆す事の出来ない富の格差が出来てしまったのであろうと思います。


一方、私の知る限り、日本における新自由主義導入の背景や度合いは、アメリカは大分異なるのではないかと考えております。

まず、小泉内閣の郵政民営化は、国家の歳出改革の一環として行われたものであり、同時に、天下りの防止等、官僚組織の腐敗を正す側面もあったと考えられます。

そして、解雇規制の緩和派遣労働の規制緩和は、バブル崩壊後の1990年代頃から、日本の景気が停滞し始めてしまった事から、その実施は、不可欠であったと考えられます。

特に、派遣労働の規制緩和については、様々な日本企業が、"偽装請負"という違法行為を平気で行うようになってしまったため、仕方なく、日本政府は、それを合法化出来るような手段を用意したという背景がございます。


つまり、日本において実施されてきた新自由主義的政策を見てみると、"アメリカ程過剰ではなく、一応は合理性に基いている"と言う事が出来ます。

更に、日本においては、現在においても、アメリカ程貧富の格差は拡大していない事から、日本の労働者階級の人々が、アメリカ人程、行き過ぎた権利主張をしていなかったため、日本においては、新自由主義的政策の実施は、最小限に抑えられた可能性も考えられます。


4.資本主義政策と社会主義政策は交互に行うべき

やはり、人間と言うのは、常に変化を与えなければ、必ず堕落してしまう生き物であると思います。

そして、政府や企業と言うのも、人間が動かしておりますので、政府や企業も、同様の性質を持っていると思っております。

ですから、大企業や資本家が得するような、新自由主義的な政策を実施するターンと、中小零細企業と一般庶民が得するような、社会主義的な政策を実施するターンを交互に入れ替えるのが、ベストなのではないかと思っております。

そうする事で、今後、新自由主義国家と社会資本主義国家のいずれかが上手く行き、いずれかが失敗したとしても、日本は、特に影響を受ける事が無くなるので、国家体制のリスク分散としても有効であると考えております。


また、外的要因(海外情勢)金融危機や震災等の内的要因によって、日本国家に影響を及ぼす事態が生じた場合、資本主義体制を強化する攻めの体制(新自由主義等)社会主義体制を強化する守りの体制(社会資本主義)という、言わば、国家のフォーメーションを、適切に切り替える事によって、利益を最大化させ、損失を最小限に抑える事が可能となると考えております。


まとめ.

以上の総括として、やはり、一概に、"新自由主義は間違っている"とは、言い切れないのでは無いかと思っております。

やはり、"新自由主義"の本質としては、行き過ぎた社会主義や共産主義を抑止するためのカウンター的な志向と考える事が出来ます。

ですから、社会主義的な政策が行われ過ぎてしまったり、共産主義勢力の勢いが強まり過ぎてしまった場合は、資本主義を維持するため、有効な一手になり得ると言えます。

なので、国家としては、資本主義に偏り過ぎたり、社会主義に偏り過ぎないような体制を維持する事が求められると思っております。


無論、8年にも及ぶ安倍政権は、"新自由主義"に基づく政策を実施してきた事から、今の日本に必要とされるのは、新自由主義へのカウンターと呼べるような政策であり、つまりは、中小零細企業や一般庶民が良い思いを出来るような、社会資本主義的な政策である事は、間違いありません

ですから、アメリカのように、行き過ぎた資本主義への傾倒を阻むため、現状においては、"資本家のための政党"である自民党の議席を減らす事が、重要なのではないかと思っております。


参考文献.

・新自由主義の帰結-なぜ世界経済は停滞するのか (岩波新書)

・反資本主義: 新自由主義の危機から〈真の自由〉へ

・グローバリズムという病


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