ルート66
子供の頃…。
某国営局で放送されていた映像ドキュメンタリー番組に衝撃を受けたのを覚えている。
「映像の世紀 20世紀」
加古隆さんが作曲した劇伴音楽。
「パリは燃えているか」
「人間の持つ愚かさと素晴らしさの二面性を表現したかった」
加古さん自身のお言葉で、その言葉通りに20世紀に残された映像達と共に凄まじいインパクトを自分の中で感じた。
20世紀の人類の歩みを表すかのように、重く、厳かに、悲しみや喜びを内包したスケールの大きな楽曲だと思う。
歴史が好きだった自分には見応えのある番組であると同時に、あの曲から受けたインパクトは今でも覚えている。
あれから歳月を経て「映像の世紀」は「バタフライエフェクト」として現在放送されている。
先日放送されたのが「ルート66」。
アメリカ合衆国のイリノイ州シカゴ~西部カリフォルニア州サンタモニカを結ぶ旧国道。
1926年に指定され全長3,755キロにおよぶ。
イリノイ~ミズーリ~カンザス~オクラホマ~テキサス~ニューメキシコ~アリゾナ~カリフォルニア州の8州をまたいだ国道だ。
番組では制定された1926年から1985年に廃線され、その後のことまでを描いていた。
1928年、ルート66を使用したロサンゼルスからニューヨークまでの初のアメリカ横断マラソンから始まり…
ボニーとクライド
世界大恐慌
砂嵐「ダストボウル」
ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」
第二次世界大戦
ロードサイドビジネス
マクドナルド
ヒッピー
カウンターカルチャー
イージー・ライダー
グリーンブック
など多くの出来事がルート66、「マザー・ロード」と関わっているのかが、当時の映像を用いて描かれている。
アメリカが辿った20世紀は「ルート66」といかに密接していたのかが分かるような気がした。
自動車の普及と同時に重宝された66は、それと同時に人々の希望や夢、そして生きる術を見つけるような切実さを運び、やりきれない思いや世知辛い現状を浮き彫りにしていく。
国が歩んできた歴史と歩調を合わせているとも言えよう。
ルート66を渡り、
新天地を求め
自分を探しに
或いは発展を享受し
どんな思いで果てしない道を目指したか。
当時の映像達はリアルに全てを映し出す。
アメリカ中西部「グレート・プレーンズ」を襲った砂嵐「ダストボウル」。
この砂嵐で移動をよぎなくされた人々の様子も映像には残されていた。
当時の記録。
そこには現在の視点や意思で撮ったものではない「リアリズム」が刻まれる。
その顔に映るものはなんなのか。
瞳に浮かぶ憂いの先に一体何を思うのか。
そしてルート66は国の光と影を克明に表していく。
繁栄を享受するものもいれば、逆もしかり。
歴史の歩みとリンクする道
展望を開いていくハイウェイ。
人々が笑い、家族や恋人を同伴し、その道をひたすら走って来た。
こういった人々の悲喜こもごもがその道の上には走っている。
文明の発展や、繁栄の度合いによってハイウェイは「自由」の象徴にもなるんですね。
そして自由の象徴であると同時に、不自由さ映し出す部分も感じられた。
やはり物事は表裏一体。
全てにおいてそうなんでしょうね。
そう、表裏一体。
だが、素晴らしい部分もそこにはある。
全ての価値観を否定し、新しいものを生み出す。
「ラブ&ピース」
「カウンターカルチャー」
歴史と文化はその道と常に密接する。
ルート66はその全てを見てきた。
番組を見終わって思う事はその一点だ。
っと同時に加古さんの言葉にあるように「人間の愚かさと素晴らしさ」を映しだした秀逸な番組だと改めて思った。
今回の「ルート66」で、アメリカ中西部に「ダストボウル」が襲った際、ウディ・ガスリーという「フォーク・ソングの父」とも呼ばれるシンガーが、カリフォルニア州に移住している様子にもふれていた。
その現状の憂いは目を見張るものが多く…
移住した先の苦労や現状を憂いてそのことを歌っている様子を撮った写真や映像も映し出された。
人々のために歌い、励ます。
その様子はまさしく「フォーク・シンガー」だった。
劇中にも紹介されるウディの楽曲
「This Land ⅰs Your Land」(我が祖国)。
苦境を乗り越え、道を歩み続けるその歌はどれほど人々を励ましたであろう。
そんなウディ・ガスリーの演奏に衝撃を受けミュージシャンになった人物がいる。
ボブ・ディラン。
ディランが若い頃に、当時神経症の病で入院していたウディを見舞ったなどエピソードが残っているほか、ボブ・ディランのファースト・アルバムでウディ・ガスリーに捧げた曲が収録されている。
「ウディに捧げる歌」(Song To Woody)
文字通りウディに捧げた歌であり、本人にも歌って聞かせたことがあるとか。
「だってあなたがやったようなことをした人など
ほかにはほとんどいないのだから」
ウディ・ガスリーに対してのリスペクトを感じられる一節も出てくる。
ルート66の歩みから一人のミュージシャンの足跡、そしてそれに追随する偉大な歩みも垣間見れた。
やはり人々のあらゆる側面を浮き彫りにし、描いているのであろう。
番組内だけではない部分も含めて…
全てが深い作品だ。
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