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DAY 69:「あなたが、そこにいるだけで」 BLUE NOTE 1569 "BASS ON TOP" PAUL CHAMBERS QUARTET

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職場で、泣いた。

おっさん(私)が。


絵にもならない。恥ずかしい。情けない。

でも目からは、涙があふれてしまったんだ。

復職してから、負担の少ない仕事をさせてもらっている。

それでも上司に対して「報・連・相」はしなくてはならない。

朝、その順番を誤ってしまい、上司に指摘を受けた。

ここまではまだいい。次から直せばいい話だ。問題ない。

しかし、上司に、

「私に相談するつもり、あなた、ないんでしょう」

「私も、私から、あなたには言わないから」

と言われたことが、ショックだった。

言葉にならない、いろんな感情がないまぜになって、こみ上げてくる。

「私は、相談するつもりがない、ということはありません」

「そんな言い方、やめてください」

と私が発した声は、すでに震えるものになっていた。

それに対し、上司は私が声をかけてこなかった場面を羅列する。

あの時も…この時も…

都度、それに対し理由を述べた。が、それは言い訳に過ぎないと上司は感じているのだろう、と反論しながら、わかりはじめていた。

あくまでそれは私の言い分で、やはり報告が足りなかったのだろう。それを怠った自分が悪いのだ。

「すみませんでした。申し訳ありませんでした」

目を開き、瞬きもせず、ただ自然に目から出てくる涙をこぼし、頭を下げた。

朝のミーティングで1日の予定を述べる時には、なかなか声が出なかった。

デスクに戻っても、誰も私に声をかけてくれる人はいなかった。

私の職場は、私以外ほとんど女性である。

朝から泣いた、中年のおっさんに声をかける人などいない。

私は孤独だった。

涙の乾きを頬で感じながら、いつものようにパソコンにデータ入力を始めた。

その日、上長は遅れて出勤する日だった。

コトの顛末を知った上長は私のところに来て、話をしてくれた。

「その一言はショックだったな」と言ってくれた。

私の気持ちがちょっとでも理解してもらえただけで、

もう十分な気がした。

仕事は定時までやり遂げた。

仕事が終わるや否や、職場から逃げるように家に帰った。

食事をし、子どもたちが寝た後、音楽のかかっていない静かな部屋で

妻にその日、1日のことを話した。

仕事でもあまり役に立っていない。家事も、育児もうまくできていない。

こんな私で申し訳ないと。

妻も、ショックだった気持ちを理解してくれた。

また、いま職場でもできていることがあるから出勤しているし、

家事も育児も、できることをじゅうぶんにやってくれているとも、言ってくれた。


「なによりも、あなたが元気で…元気がなくても、そこにいてくれるだけで、それでいい」


その言葉に、落ち込んだ気持ちが、楽になっていくのを感じた。

仕事を辞めることをいくら考えたかわからない。

妻からも、いつでも辞めていい、と言われている。

ただ私の働く業態ではかなりホワイトであることも、現実だ。

実際に、仕事内容についても、かなり配慮してもらっている。

妻とも、何度も話し合っている。

私は、私の意志で、出来る限りは今の仕事を続けようと思っている。

妻は寝室へ行った。

私はひとり、一枚のレコードをターンテーブルに載せる。

「BLUE NOTE 1569 "BASS ON TOP" PAUL CHAMBERS QUARTET 」

目を閉じて、「YESTERDAYS」のBASSの弦の響きに身を委ね、思いを巡らす。

そこにいるだけで、いい。

そこにいるだけで、いいんだな。ありがとう。

私には、このBASEがある。

朝とは違う、暖かい涙が頬を伝うのを感じながら、

そのまま眠りについた。

ここまでお読みくださり、
ありがとうございます。

今後も、
あなたのちょっとした読み物に、
私のnoteが加われば、
とても嬉しいです。


あなたが、いま、どういう状況にあろうとも、

どこにいようとも、

そこにいてくれるだけで、いい。

私はそう、おもいます。


きょうが、あなたにとって
かけがえのない、いちにちでありますように。

アイ



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