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番外編:「あしたは、はれるよ」

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休職、半日勤務、時短勤務を経て、

仕事は、フルタイムに戻った。


業務内容をかなり軽くしてもらい、
なんとか今のところ、勤務できている。
周りの配慮には、ほんとうに感謝しかない。

しかし以前のようには、まだ働けていない。

その配慮に甘えて、仕事をさせてもらっている。

上長は甘えてもいいと言ってくれていて、
それは本当にありがたいことだが、
やはり周りに対する罪悪感で、
いっぱいになることもある。

周りが忙しく電話をかけ、
また電話を取り、仕事を行なっている中、

簡易な事務作業を、黙々と行なっている、私。

同じ事務所の中にいるのに、
なんだか取り残されたような気持ちだ。

電話の音と、
その会話の喧騒からひとり隔絶されている、
この感覚。

集団の中に孤独はある、とは
誰が言った言葉だろうか。

その言葉を、噛み締めながら、
デスクに座り、パソコンの画面を見つめる。


自分に価値はあるのだろうか。

あるとしたら、自分の価値はなんなのだろうか。


以前には仕事で
「これができる」
と思っていたことも、
いろいろあった中で、
自信が持てなくなってしまった。


また、失敗を恐れずに
ぶつかっていければいいのだ。

その中で学び、
経験として次に活かし、
成功体験を積んで、
成長すればいいのだ。

…頭ではわかっちゃいるけど、
今はもうぶつかっていくこと、
それこそが難しい。

失敗が怖い。周りからまた、
否定されるのが怖い。

正直、そんな気持ち。

自分に価値はあるのか。
ないのではないか、と
また、自問自答する。

これからもやっていけるだろうか。

未来が暗い。
不安だ。


宙に浮かんだデスクで、

ひとりそう考えて、

仕事中に泣きそうになってしまった。




その時、ふと、思い出した言葉があった。



「あしたは、はれるよ」



今年の私の誕生日、まだ休職になる前、
息子がくれたバースデーカード。

その封筒に、ひとこと書かれていた、
そのことば。


息子はなにをおもって、
そう書いたのだろう。

息子はそのことばに、
どんなおもいを、込めたのだろう。


「あしたは、はれるよ」


胸の奥から、
あたたかいものが、こみ上げてくるのを感じた。

小さな希望があれば、
それだけできっと、人は前を向ける。


そうだね。

おとうさんのあしたは、はれるよ。

今はできることは少なくても、
また少しずつ、一歩ずつ。

おとうさんは、きみのことばを胸に、
進んでいく。

不安はいつのまにか、なくなっていた。



私はそして、目を閉じる。


私の誕生日。

「おとうさん、
 すきなレコードをかけていいよ」って

息子が言ってくれた。

私は笑顔で、このレコードをかけた。



もういちど、息子がくれた、ことばの宝物を

閉じたまぶたの裏で、取り出して眺める。


「あしたは、はれるよ」


そう、あしたは、はれる。

きみからもらった、たいようが
おとうさんのあしたを、てらしてくれるよ。 

いつもほんとうに、ありがとう。


ここまでお読みくださり、
ありがとうございます。


今後も、
あなたのちょっとした読み物に、
私のnoteが加われば、
とても嬉しいです。


きょうも、はれます。

そして、「あしたは、はれるよ」。


きょうも、あしたも、
あさってもこれからも、
いい、いちにちがつづきますように。

アイ


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