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『ほしあいのカニ』(H先輩に捧ぐ、戯曲的ななにか)

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『ほしあいのカニ』第0章(H先輩に捧ぐ、戯曲的ななにか)

『ほしあいのカニ』第0章(H先輩に捧ぐ、戯曲的ななにか)

第0章:彼女と彼 そこは屋上と呼ばれる空間だった。
地表とソラを隔てるそこで、
女はその夜、夢見心地で歩いていた。

そして欄干までたどり着いた。
建物の境界線にあり鉄格子に似たそれは作り物の光を浴びて、
星の見えない虚ろなソラに都会の檻を写しているよう。

やがて彼女はそれの向こう側に渡り、体重もその向こう側に預けた。
軋む欄干を握る右手だけが、そこに彼女をつなぎとめているようだ。

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『ほしあいのカニ』第1章前半(H先輩に捧ぐ戯曲的ななにか)

『ほしあいのカニ』第1章前半(H先輩に捧ぐ戯曲的ななにか)

第1章1-1:「異世界転生しなかったので、もう少し現世でなんとかしようと思います」
1-2:The other side of……
1-3:その・ドス・取れっ?
1-4:カニとゴミ
1-5:トリのクチ、その先にあるウシのオシリ
1-6:夢から醒めて

1-1:「異世界転生しなかったので、もう少し現世でなんとかしようと思います」 そこは独り暮らしには少し広く見える彼のアパートの一室。
いまは真っ

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『ほしあいのカニ』第1章後半(H先輩に捧ぐ、戯曲的ななにか)

『ほしあいのカニ』第1章後半(H先輩に捧ぐ、戯曲的ななにか)

1-4:カニとゴミ女1「……死ぬかと思った」
男1「えっ? いやいやいや、そんなつもりは――」
女1「じゃなくて、屋上で」
男1「ああ……(ボソッと)でもそのつもりだったんじゃ――」
女1「手を離すから」
男1「えっ?」
女1「手を放すから」
男1「……あ、あれは、ごめんなさい……でもほら、急に変なこと言うから」
女1「……変なことですか?」
男1「え、あ……まぁ」
女1「オンナから言うの変ですか

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『ほしあいのカニ』第2章前半~中盤


第2章2-1:夜に聴いたバッハの旋律のせいで、
2-2:マイ・ブロークン・バレンタイン
2-3:コーヒーと(シロップ、と)ハチミツ
2-4:二十四の瞳と祈り
2-5:『ドイルとトリニーの事件簿』
2-6:We seem to be crazy?

2-1:夜に聴いたバッハの旋律のせいで、 その夜はまだ仄暗い。
暗がりの中、窓の近くに液晶の僅かな灯りが見える。
彼はスマホを眺めていた。
透か

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『ほしあいのカニ』第2章後半

『ほしあいのカニ』第2章後半

2-5:『ドイルとトリニーの事件簿』女1「あ~あ、私の人間観察力ダメダメだな~」
男1「それって大事?」
女1「大事だよ~! 演技のお仕事だよ? 人間観察キホンだよ分かる?」
男1「なんかイラっと来たけど分かった」
女1「童貞くんでもなかったもんな~」
男1「(咳払い)なしてそう思ったの?」
女1「コンドーム、使用済みだった」
男1「言い方――」
女1「箱が空いてた」
男1「……はい」
女1「別に

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『ほしあいのカニ』第3章・第1パート

『ほしあいのカニ』第3章・第1パート

第3章3-1:その海を渡るためのSextantをさがして
3-2:His Letter
3-3:乳とハチミツ(リプライズ)

3-1:その海を渡るためのSextantをさがして男1「ねぇ、どうしてもやらなくちゃダメ?」
女1「いいじゃんやろうよ、良いモノもあるしさ。気持ちいいよ?」
男1「もう一気に入れちゃおうよ」
女1「ダメよ、そんな急いで入れちゃあ……」

何か機械が動く音がする。ブィーンと

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『ほしあいのカニ』第3章・第2パート

『ほしあいのカニ』第3章・第2パート

3-2:His Letter『君がこの手紙を読んでいる頃、たぶん僕はもういなくなってると思う』

彼は急いで自分のコートを手に取って、しかし少し考えて窓際のほうに歩いていった。

『あの事は秘密にしておいてほしい』

そうして歩いている間に、ポケットからメガネを取り出し、かけた。

『その函にしまっておいてほしい。いつか君の人生が終わる時まで』

窓から降り注ぐネオンサインは次第に暖かい

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『ほしあいのカニ』第3章・第3パート

『ほしあいのカニ』第3章・第3パート

3-3:乳とハチミツ(リプライズ) 一方で彼は歩いて欄干の前にたどり着く。
その頃には、世界は12月の夜――満天の星に覆われていた。

女1「あをいめだまの 小いぬ、
   ひかりのへびの とぐろ
   オリオンは高く うたひ」(*)

彼女が暗がりで歌っていた。
歌いながら、コートとメガネを着て明るいところへと戻ってきた。
右手にビール缶、左手にマグカップを持って。
少し幼い雰囲気と、

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『ほしあいのカニ』最終章

『ほしあいのカニ』最終章

0-1:センとレイと僕らのシャレード 彼は思い出のその歌を歌う。

男1「あかいめだまの さそり」

『先輩はおじさんには何も言わなかったようだ』

男1「ひろげた鷲の つばさ」

『翌朝、みんなで帰り道を探して見つかったのは』

男1「あをいめだまの 小いぬ」

『茂みの奥にあった壊れた原付と』

男1「ひかりのへびの とぐろ」

『その原付で山を下りる不審な女性の目撃情報だけだった』

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