相沢ユウ

異世界転生モノは基本食わず嫌いです。こんにちは、(相沢)ユウと申します。ベースは物書き…

相沢ユウ

異世界転生モノは基本食わず嫌いです。こんにちは、(相沢)ユウと申します。ベースは物書き。あんまり「◯◯モノ」とか意識しないで書き出すので、ジャンルが決められず、小説投稿サイトの前にこちらから書き始めることにしました。あ、でも『本好きの下剋上』は好きです。よろしくお願い致します。

マガジン

  • 『ほしあいのカニ』いくつかのオマケ

  • 『ほしあいのカニ』After-talk

  • 『ほしあいのカニ』(H先輩に捧ぐ、戯曲的ななにか)

最近の記事

86+2(エッセイ, 650字)

列車の中のほどんどの乗客は、みな一様にスマホをいじっている。 そんな中でアナログの本を手に読書をしている客を見ると、太陽のほうをあえて向かないヒマワリのようで、私は勝手に親近感を抱いてしまう。 その人は私と同じ駅で乗り込んだ兄《あん》ちゃんで、向かいのシートに座り、私より一回り大きな体を小さく縮め、少し窮屈そうに俯いて本を読んでいた。 彼の隣にはスーパーのレジ袋。中身は空っぽの麦茶(2Lのペットボトル)。 靴はホームセンターで買えるようなフリーサイズのスリッポン系スニーカー

    • レキをかさねる(エッセイ,850文字)

      ある休日の深夜、デスク(課長)に電話である事故現場に向かうよう指示された。 それはもう20年近く前――私はソニーのPD170(ビデオカメラ)を持って自宅を飛び出し、言われた場所近く、ある線路脇の広い道路で車を停めた。そこには既に救急車やパトカーたちが列を為し、それぞれに無言で回り続ける赤色灯が、非日常的な物々しさを醸し出している。事故現場はここの近くだとすぐ分かった。 ほどなくして、報道課の先輩が応援にやってきた。結構若人の多いうちの部署にあってその先輩は、白髪が混じるくらい

      • 『ぼくたちのゆううつについてのいくつか』(エッセイ, 作成中)

        「この当時の〇〇では子どもは『子ども』と捉えられていたのでしょうか? それとも『小さな大人』だったのでしょうか?」 卒論の講評中で教授から投げかけられた言葉をまさか20年先にまで考えることになるとは思わなかった。 私の卒論はかつてヨーロッパで流行った小説の形態を通して「ある国(↑の〇〇)」での社会的背景を考察する、みたいな感じだったと記憶している。取り上げた小説の主人公が子どもだったから、こういう質問が出たのだろう。 正直想定外の質問だった。どう答えたか覚えていないが、「

        • 「アメとケ」#20230612(約550文字 )

          夕刻。Y駅で列車が止まる。向かいの席に女の子が座る。 学校帰りのJC(中学生)と思われるその子は背負っていたリュックを手早く前に回してチャックを開き、一冊のノートを取り出した。 そのノートには若い少年のようにみえる絵が描かれていた。写実的ではなくアニメ風の。どこかで見たようなタッチ。 少女がページをめくると横書きで長めの文章のようなものが見えた。 私からは文字までは読みないが、女の子はずり落ちそうなメガネを指で押し上げながらを読み込んでいる様子。 やがて彼女はページをめくっ

        86+2(エッセイ, 650字)

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        • 『ほしあいのカニ』いくつかのオマケ
          1本
        • 『ほしあいのカニ』After-talk
          2本
        • 『ほしあいのカニ』(H先輩に捧ぐ、戯曲的ななにか)
          9本

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          『世界のオワリと砕けたガラス』(エッセイ, 850字)

          天気の悪いある週末、私は死にゲーに興じてました。 「パパがゲームをしてるところを観る」といううちの子のリクエストに応え、ニンテンドースイッチで『エンダー・リリーズ』という硬派なアクションゲームをプレイしていました。 ボスの魔女に戦っては負け、戦っては負け……「ボス戦を30回は挑戦するよ」と子どもには言っていたのですが、10回戦を超えたあたりから彼女はさすがに飽きて、「ゲーム実況」のような「おままごと」を始めました。操作キャラの死を意味する「操作キャラがガラスのように砕け散る」

          『世界のオワリと砕けたガラス』(エッセイ, 850字)

          エコー、A子、ええ子

          懐かしい呼び名でキミがボクを呼ぶ くだらないハナシ、なんてことないコト キミのボケともつかない微妙なボケに ボクはつい気の利いたツッコミを入れようとして きっと 当たり障りのないことを言ってしまう 懐かしい呼び名でキミがボクを呼ぶ声 キミがいなくてもその声は響き 根管治療に失敗した右奥歯のように 一生付き合っていく疼きになんだろう そしてまたきっと つまらないツッコミをしてしまうんだ ねぇ、 「ねぇねぇおねぇ」 「だれがオネエじゃ『おにい』じゃ」 「わたしのほうが上だも

          エコー、A子、ええ子

          『ぼくらが旅に出る理由、ぼくらがタビに出る理由。』[Part 4](第1版, 500字, 私小説ショートショート, W011)

          ――歳ばかり経り不惑なった、まだ雨降らぬ6月の朝。 先輩は口下手な人だから、こういう質の悪いやり方で僕の溶け流れつつある記憶に軛を刺しにきたのだろう。 「わかりました……貴方が主役で何かものを書きますから」 左側に残った皮膚感覚はいよいよかすれ、先に立つものを朝のせいにして、横木のようにベッドに倒れたまま僕は呟いた。 与えられたそのクビキをマストにたて変えて、海を飛ぶ鴎のように帆をひろげ、時の流れに逆らって僕は書かねばならないようだ。 くたびれた寝室のカーテンの隙間から

          『ぼくらが旅に出る理由、ぼくらがタビに出る理由。』[Part 4](第1版, 500字, 私小説ショートショート, W011)

          前回書いたw011の第3パート、本当は「『また別のトラムのある街』で葬儀に出るために駅に向かうのだけれど、慣れない街で袋小路に遭う」のと、それと「僕」の思考の錯綜を連動させるつもりだったのだけど、長くなるし、超読みづらい、いや、テクニックが追いつかないので諦めた。忘れぬうちに。

          前回書いたw011の第3パート、本当は「『また別のトラムのある街』で葬儀に出るために駅に向かうのだけれど、慣れない街で袋小路に遭う」のと、それと「僕」の思考の錯綜を連動させるつもりだったのだけど、長くなるし、超読みづらい、いや、テクニックが追いつかないので諦めた。忘れぬうちに。

          『ぼくらが旅に出る理由、ぼくらがタビに出る理由。』[Part 3](第1版, 900字, 私小説ショートショート, W011)

          彼女の部屋に転がり込んで新しい生活を始めた頃に架かったその決まりの悪い電話は、心の善悪の岸辺に混濁した後悔のさざ波を立たせた―― 善いかどうかはおいといて、あの夜、風俗くらい入ってもよかったんじゃないか? 純情と純潔を誇っていたわけはなく、中高の片思いは地元に置いて特別な女性もなく、下宿のポストに突っ込まれたデリヘルのフライヤーに写る紙切れのハニーたちを部屋のゴミ入れに放るまで視まわす程度に性欲を持て余していたわけで――いや、持て余していたのは薄っぺらなプライドで、ハニーに支

          『ぼくらが旅に出る理由、ぼくらがタビに出る理由。』[Part 3](第1版, 900字, 私小説ショートショート, W011)

          『ぼくらが旅に出る理由、ぼくらがタビに出る理由。』[Part 2](第1版, 1100字, 私小説ショートショート, W011)

          [Part 2] 季節は冬へ秋の只中で既に陽が落ちて肌寒く、自転車を切る風はその鋭利さを増して襲いかかってくる。 先輩と僕は大学前の学南交差点から国道を渡り、総合公園を右手に見ながら南下して吉野家を左へ、さらに進んでは踏切を横切って線路沿いの細い道を駅前通りを行く。 先輩はとにかく付いてくるように言っていたが、道中はほとんど喋らず、ペダルを漕いでは時折こちらの存在を確かめるように振り向くだけだ。 駅東口に着くと、地方都市の駅前らしい再開発で整った広い駅前通りの歩道を西川ま

          『ぼくらが旅に出る理由、ぼくらがタビに出る理由。』[Part 2](第1版, 1100字, 私小説ショートショート, W011)

          『ぼくらが旅に出る理由、ぼくらがタビに出る理由。』[Part 1](第1版, 1100字, 私小説ショートショート, W011)

          [Part 1] 僕は男を抱いていた。 裸で横たわったまま、左腕で誰かを抱いていた。 目もうまく開けられなかったが、左半身から伝わる筋肉質な感触で、それが痩身の男性だということだけは分かった。 彼も裸だった。 男二人くっついて離れず、何も話さなかった……というか、僕は話せなかった。 身体はいうことをきかず、抵抗することもできず、何とかしようという気も起きず、自分はするのかされるのかそれとも事後なのかお尻に異常はないかなどの思考を巡らすことはなく、ただ彼が誰なのか探ろうとする

          『ぼくらが旅に出る理由、ぼくらがタビに出る理由。』[Part 1](第1版, 1100字, 私小説ショートショート, W011)

          『あなたは痛いと知っている』After-talkリンク集(分量が多いのでリストのみにしました)

          さてさて……1か月前に書きました『あなたは痛いと知っている』 それの自主制作的、いや自作自演的あとがきができましてハイ。 いや自分で言うのもなんですが、なかなかいい感じに恥の上塗りしてると思いますハイ。それは善の善なるものなのかと、なかなかの哲学的な問いを発し続けつつお送りしておりますハイ↓ 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 *After-talkで取り上げた楽曲リスト くるり「リバー」 ASIAN KUNG‐FU GENERATION「Re:Re:」 大森

          『あなたは痛いと知っている』After-talkリンク集(分量が多いのでリストのみにしました)

          『優しい嘘とトーキング・モジュレーター』(600字, ショートショート, W015のオマケ)

          噂話や見え透いた嘘は、トーキング・モジュレーターみたいなものだと思うようにしている。 トーキング・モジュレーター――楽器からアンプを介し、細いホースを通ってその奏者本人の口腔へ送り込むその奇異な音は、もちろん人の声ではないのだけれど、口を動かすことで反響の変わるその音色のせいで、まるでその人の喉から発せられる声のようにも見える。 ――その人の声でないものを、その人の言葉と思い込む。 噂話は当人の声を知らないが故の誤解であり、見え透いた嘘は当人を知るが故の思いやりで、それを

          『優しい嘘とトーキング・モジュレーター』(600字, ショートショート, W015のオマケ)

          『あなたは痛いと知っている』(第1版, 6100字, 短編小説(私小説?), W014)

          *()内は前の単語のルビを表します *全角アルファベット大文字A~Hは人名を伏せて記号的に表記したもので、その読み方とその方とは関係はありません。 0.Re:Re:  僕たちが3年生になった4月、学校で僕のトイレに行く回数が増えたけど、それは受験生になってストレスを感じているとか「過活動膀胱」とかそういった病気の類ではないんだ。  いきなり下ネタかって?  いや、そういうことじゃなくて――ちょっと恥ずかしいけれど「むかしむかし」の話を聴いてちょうだいよ。おじさんってのはそ

          『あなたは痛いと知っている』(第1版, 6100字, 短編小説(私小説?), W014)

          【旧版】『たぶん、星がいっぱい』(4100字, ショートショート, W902, 2004年版)

          『たぶん、星がいっぱい』 そう思いながらページをめくったけれど……世の中そんなに甘くなかった。 今日の恋愛運☆☆☆(星0個) ……マチアキだってテンションさがるよ。どんな下手な料理だったんだよ。星ゼロはないでしょ普通。夢も希望もない。 《二人に破局の危機が来るかも……もう1度、お互いでお互いの関係についてよく話し合ってみて。片思いの人は、今は告白しない方がいいかも。運命のように感じる出会いがあるかも。でも、その場の雰囲気に流されないでよく考えてみて》  さっきから「

          【旧版】『たぶん、星がいっぱい』(4100字, ショートショート, W902, 2004年版)

          『たぶん、星がいっぱい』(5300字, ショートショート, W902, 2004→2021年版)

          (*恐らく2004年頃、当時の『作家でごはん』というウェブサイトに投稿したもので「与えられた3つのお題を盛り込んで小説を書く」という課題から創作したもの(お題は「星、百万円、途中で視点が変わる」だと旧版を読んで自分で推察)に2021年の私なりの加筆、修正をしました。『チューボーですよ!』懐かしいですね。本文は以下↓)  ――たぶん、星がいっぱい――  そう思いながら、雑多な雑誌のざらつくページをめくってみたけれど……  世の中そんなに甘くなかった。 9月〇日 あなたの恋愛

          『たぶん、星がいっぱい』(5300字, ショートショート, W902, 2004→2021年版)