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「重いなあその愛情は」のお話

「付き合ってほしいです…」

高校を卒業した後の学生時代、2人きりになった放課後の教室には西陽が綺麗に差し込んで君の表情を映してくれた。

こんな僕の一言がどれくらい迷惑を掛けるかは知らない。それでもただ想いを伝えたかった。相手の同意を得た上でこの子のことを今以上にもっと知りたくて、ただ触れたかった。僕が幸せに出来る自信なんてない。ただ、付き合うからにはこの告白をした責任を持つ気持ちでいた。

それもそうだ。相手の思考に僕みたいな人間を入れること、相手の時間に僕が関わるからだ。

「いいよ、私でいいなら」

僕は重たいくらいの愛情を持っているのか分からない。いや、多分持っている。どこかの噂で

「あいつは尻軽」

と言われていた人間が実は尻5トンだったら誰かが笑ってくれそうだと思う。

僕らはLINEを交換して沢山の時間を使い通話をした。どうでもいい話でも僕には全く関係のない話でもいい。僕はただこの子のことが大好きで、ひたすら笑顔で話を聞く。画像を送り合う。僕の送る画像の大半が犬の写真やラーメンの写真だったという事実は客観的に見れば僕自身の自己肯定感の低さだと思う。

そういえば、

「浮気したことある?」

いつものようにLINE通話をしている際に、そんな言葉をふと放り投げられた時に、僕は過去を辿ってみては変えられない事実はあった。

「浮気してそうな顔してる?」

僕はわざとそう聞いた。質問に対して質問で返すという方法は僕が逃げたい時に良く使う技そのものだ。

「斎藤くん…顔薄いもんね…」

僕は嘘をついていない。ここでやったことはただの誘導だ。

コインは表と裏しかないけれど、

嘘の反対は本当ではない

「告白したなら責任とってね」

と、契約書を書かされている気がする言葉を投げかけられた。

この子を良く見ていると意外性が見えて来る。世間でよく言う「ギャップ萌え」と言う言葉は、きっと最初にその対象者に対して理想化がなされる。

初めに「普段ヤンキーなのに実はいいやつだった」みたいな僕が一番嫌いなパターンの一つではあるが、これはきっと理想が最悪なのに対して、後は上昇したものだと考えている。

では逆に一目惚れをした相手と付き合った場合に、別れる理由は何だったのか。

僕はこの子に対しては全て受け入れていた気がする。「恋は盲目」という言葉を作った人に手作りの賞状をあげたくなる。

「浮気をしないこと、報告連絡相談をすること」

これが僕らのルールだった。

報連相なんて…会社かよと言いたくなるが、浮気予防のためだったと考えるとなるほどと思う。

この子に男友達ができるときどうしても嫉妬してしまったことがある。

ひたすら謝りながら、何度も脱がせればキスマークが付いているという状態。流石に怒られた。

でも何故かいつもより優しく頭を撫でてくれて笑ってくれた。後にそれが、僕自身が嫉妬しない人間だと思わなかったからという理由だった。

「ねえ、僕って実はめちゃくちゃ重たいかもよ?」

僕はこの子に敢えてそう言った。

「遊び人の噂が互いに流れてるからね。でも私も重いんだよ?」

重たいカップル爆誕

ただ一つ、お互いに束縛はしなかった。きっとそこは最低限の信頼だった。スマホも見なかった。

好きに触れられるのは恋人の特権の一つでセフレにないものは心まで触れられないことだと思っていた

僕は何度も抱いた。顔も声も体も、抱いている途中に自分の名前を呼ばれて「大好き」と言われるのは僕にとって恋人関係のみ許されるものだと思った。

何回も何回もこの子の好きなお菓子を作っては食べてもらっていた。

この子となら…

そう思ってはいたけど、どうも互いに賞味期限が切れたらしい。相手は僕の愛情の重さに胃もたれを起こしていた。

いつの間にか自然崩壊により破局した。

それ以降の恋愛で僕自身が嫉妬することに対してトラウマを持っては

「斎藤くんは嫉妬してくれないんだね」

を理由に愛情を欲しがった人達にフラれていくのだ。

恋愛下手だねえ。

#忘れられない恋物語



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