記事一覧
どうしてか、悲しい歌ばかり綺麗に聴こえるの。
空に打ち上げられた淋しい球体。
夜になって白く光って、けれど本当のとこ、明るさは変わってないんだって。
なら、私の瞳にどう映るかが問題で。どんな色なのかが大事でしょう?
****号室、16:47
壁。壁にひたすら書かれた羅列。羅列というのは、文字が並んでいる。縦に、縦に、横糸はない。壁にびっしりと。最小限の隙間だけが許された。壁は斜めに立っていない。壁は斜めに聳えていない。90度に囲まれた四角の空間。90度。壁は文字が書かれていることを知らない。人間は壁が無くては生きていけない。そのことを壁は知らない。生かすものは大抵殺すことが出来る。壁。襞。波打つ壁。襞。酸素も同じ、人間も同じ、関係も
もっとみる****号室、16:47
屋上は存在しなかった。屋上には存在出来なかった、というのが正しかった。3091号室を出て、長い廊下の先にあったエレベーター。二人同時には乗れない。一人きり。狭かった。壁一面にボタンがあった。気味が悪かった。私はどうしてここにいて、どうしてここから出られないのか。意味が分からなかった。
せめて認識出来る情報を増やしたかったから、一番大きな数字の書かれたボタンを押した。考えたくもない数字だった。3
******号室、16:47
何か理由があるだろう、とか。誰かの思惑があるはずだ、とか。冬に雪が降るメカニズムが解明されたとして、雪の理由が分かったとして、雪が雪であることに何の揺らぎもない。人間の感情と自然現象は全く別の話をしている。意味は見出すもの。理由は付けるもの。本当のところ、そんなものは無い。頭の中だけ。もちろん、それはとても重要なことだ。人間にとって重要なことだ。
統合失調症、という言葉を見て思ったのは。
完
****号室、16:47
格子 細胞 団地 集合 停止 夕暮 無音 密閉 閉塞 階層 積載 安楽 呼吸 切断 不全 静脈 静寂 卒倒 眩暈 白昼 夢遊 蠕動
低空 存在 加熱 監視 天国 人工 直線 劣化 間隔 天井 落下 諦観 連続 焦燥 接続 唐突 椅子 点滅 壁面 不能 上下 警報
既存 偶然 断念 緩衝 足音 薄目 病的 曲解 真綿 表裏 液面 計算 徐行 天命 縮小 猛毒 駐車 四角 空缶 廊下 速度 言外
プロローグ、*****号室、16:47
団地の一室で、男は窓の開いた部屋に寝転がっていた。扇風機が送る風を浴びながら、方向性を持たずテレビのリモコンを弄っていた。部屋の電気は点けていない。気怠くて仕方がない。カレンダーを捲らない。男は大きく欠伸をして、やりもしない料理の番組をぼんやりと聞く。
「──ここに筋があるでしょう。包丁でスッと線を引くように切って、はい、これで取れました。それから次に──」
右腕の筋肉に力を入れる。弛緩させる