ぶっちゃけ妊活日記 vol.2 / 妊活ってなに?
旦那さんはお風呂大好きで、放っておくと3時間くらい長風呂をしている。どおりでいつも笑うと、ほっぺの高いところが丸くツヤツヤ輝くわけだ。湯船の中からYoutubeを見ている音がダイニングにも響いてきた。それをBGM代わりにキッチンで朝食の準備を始める。
トントン…
まな板の上でリズミカルな音がする。なぜか昔からこの音を聞くと安心するのは、おばあちゃんや母親の台所風景を思い出すからかもしれない。
トントン…
Youtubeの音とまな板の音のハーモニーがいつもの朝を運んでくる。次はお湯を沸かすためにヤカンにペットボトルのお水を投入。カチッとコンロの火を入れた。少ししてカタカタとヤカンの蓋が鳴り出す。軽快なモーニングオーケストラの中、もやもやと考え事を始めた。
…いよいよちゃんと子どものことを考えよう。
えーと、それで…妊活をするってことだよね?
よし、妊活だ!えーと、妊活妊活…えーと…
ハッとして手が止まったと同時に、ピュ〜!っと小さくヤカンが鳴き出した。
そもそも論なのだが…わたしたち夫婦は1年の間で一緒にいる時間が年の半分くらいしかない。もっと最悪な時は4ヶ月程度でしかない。別居婚でもなく、週末婚でもない。周囲が羨むラブラブ夫婦である。しかし!一緒にいる時間は年の半分…なぜなら、旦那さんの仕事はバイヤーで、ベースが海外だからだ。
… 海外。人は皆、その言葉を聞いただけで、キラキラ輝く街並み、全員9頭身モデル並みのイケメン外国人、インスタ映えする食事たち…全てがバラ色に見える…そう!それが、海外マジック!
しかし、蓋を開けてみるとわたしは寂しさに苛まれるし、旦那さんは長期移動で万年腰痛&偏った食事で太る一方だ。
ピーーー!っとヤカンがいよいよ本領発揮をし出した。
今まで旦那さん、ベストタイミングにジャパンにいたことあったっけ?
答えはNOだった。
長い時は1ヶ月、短くても10日間は海外へ行き、ジャパン帰国して最短5日間〜長くて2、3週間の滞在後、再び海外へ出発する。その間、夫婦の愛は遠距離の会えない時間にみるみる育ち、拍車がかかって燃え上がる訳だが、その想いとは裏腹にちょうど月イチ生理ちゃんがやってきている期間だったりする。
なんてことだ…そもそも2人のタイミングが合わない…
ってことは、このままだと妊活、無理じゃない!??
ピュアァーーーーー!!!とヤカンが大音量で叫び出した途端に、旦那さんがカチッと火を止めた。グルグルと考えている間に、いつの間にかお風呂から上がって冷蔵庫から冷たいドリンクを取り出した。
旦那さん 「何か悩み事?」
やっぱりあのラッコは旦那さんだったんだな…その言葉を聞いてクスリと笑った。
わたし 「…思ったんだけど、普通の妊活は難しいよね。だって、ジャパンにいないもん」
旦那さん 「確かにそうだね!きちんとクリニック探して相談しに行こうね。会社の人が通っていたところがあるから聞いてみるね!」
旦那さんはドリンクを一気飲みした。
わたし 「会社の人はどういう風に妊活したの?」
旦那さん 「妊活というか、不妊治療だったかな。体外受精したんだよ。」
わたし 「え?不妊治療?あれ、妊活と不妊治療って一緒?体外受精って、えーと、体外で受精するんだよね…?」
ザザァーーーー!!!
あれ?テレビの調子が悪くなったかな、おかしいな〜。ふとダイニングへ駆け寄ると、一面がキレイな白い砂浜に覆われ、スカイブルーの美しい海が広がっていた。
…ここはどこ?
「やぁ、また君か」
声のする方を振り向くと、今朝会ったばかりのラッコが砂浜で寛いでいた。
「あれ…ラッコさん?」
「何か悩んでいることはお見通しさ。」
わたしはラッコが寛いでる隣へ駆け寄った。靴と靴下を脱いで、砂浜に座って話しかけた。
「ねえ、ラッコさん。…あ!ラッコさんは知らないよね。」
「もちろん知っている」被り気味でラッコは答えた。
妊活とは…
妊娠についての知識を身に付けたり、妊娠にあたって自身の身体の現状を把握するなどといった活動。
不妊治療とは…
避妊していないにもかかわらず2年たっても妊娠しない不妊状態を治療すること。
ラッコはスラスラと落ちていた木の枝を使って、砂に書き出した。
「ということで、君はどっちも該当するだろう」
「なるほど!ってことはまずは検査からかな?」
「そうだね、身体の状態を知ることが大事だよ。そして不妊治療は一般的にまずはタイミング法というのがある。次に、人工授精。そしてさらに体外受精、顕微受精だね。」
「内容はなんとなくわかるけど…きっとタイミング法は無理そうだな」
「君たちはきっと体外受精まで一気にステップするしかないだろうね」
「ラッコさんはいろんなことを知っているね」
「もちろん、全て知ってるよ」
パチン!という音で、目を見開いた。ふと見上げると、旦那さんがわたしの目の前で両手を合わせていた。
旦那さん 「ボーッとして大丈夫?」
わたし 「大丈夫!病院のこと調べなきゃね。」
旦那さん 「…やっぱり精神的にキツイかな?」
結婚した当初、わたしの選択肢の中では自然妊娠以外は考えられないと旦那さんと話していたことがあった。「自然の理」の中で生きていきたいと思っていたからだ。
わたし 「全然平気!」
旦那さん 「そっか。じゃ、会社行ってくるね!」
わたし 「行ってらっしゃい!会社の人に聞いてみてね。」
旦那さん 「うん!また連絡するね。…あれ?足、どうしたの?」
ふと足元を見てみると、サラサラの白い砂が散らばっていた。
いよいよ本格的に不妊治療を始めることになったので、
記録として不定期でエッセイ的妊活話をしたいと思います。
妊活ってどうしてもデリケートな話になりがちだけれど、
同じことで悩み考えているnoterさんと、
繋がるきっかけになれたらいいなと思っています。
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