見出し画像

酷くわかりやすくて酷く頼もしくて酷く嬉しい嘘:先生、知ってたでしょう?

小・中・高の児童・生徒時代の記憶が断片的だ

強烈な感情を伴った時・人・場面の記憶しか残っていない

あの先生の怒鳴り声

あの先生の吐き捨てた言葉

あの先生の優しい嘘

校門の前で竹刀を持って遅刻を監視していた、小3の時の女性の担任の先生

確か運動会の出し物の練習で私が何か勘違いして(整列する順番?)何か滞って

もう、私が何をやらかしたか忘れたが「お前かー!!!」と私に怒鳴った声が記憶に残っている

今でも疲れ過ぎると左右の認識さえ曖昧になるのだから、当時は指示を上手く理解してなかったんだろうな

中学3年間の社会科担当の先生

怒る理由を探している人だった

平安時代は12~13歳くらいで元服して大人なのに、お前らは常識が無い!お前らの常識は社会の非常識だ!ってさ

何年前と比べてるんだろう

始業チャイムが鳴る前に「俺の機嫌が悪いんだ!早く座れ!」と怒鳴って

その機嫌が悪い理由が「前の授業クラスの生徒がみんな答えない!」だった

自分の機嫌の悪さを理由に、なんで生徒の休憩時間を削るんだ?

間違える度に「バカ!」と怒鳴られるから、みんなそりゃ黙るよね

チョークの粉が舞うのが嫌で、黒板が汚くて見えにくいのが嫌で

休憩時間、毎回のように黒板消しと黒板を綺麗にしていた私の

「偽善者」と吐き捨てられた時の感情は

哀しさだったかな、虚しさだったかな

中学の国語科の先生

複数人居たはず

その中の一人の先生

いつも化粧をバッチリして、いつもキッチリとしたスーツを着て

「凛とした」「飄々とした」という形容詞が相応しい

無表情とは思わなかったけど、あまり笑う印象は無くて

その時々見せる笑顔も「爽やかな」って感じで

「授業の時だけ」って人だった

高校生になって自宅の最寄り駅で偶然会った

どっちが先に気付いたか、どっちから話しかけたかも覚えていない

何を話したかさえ覚えていないが

私が何かを話していて、先生は「ふんふん」と相槌を打ちながら聞いていた

鮮明に覚えているのは、その後で

中学生の時には見た事が無い

穏やかな、柔らかい笑みを浮かべて

いつかは確実にバレる嘘を私に贈ってくれた

まあ、貴女なら何処でもやっていけるわよ


拝啓   先生

御無沙汰しております

学生身分を卒業して、仕事がどうしても出来なくて

発達障害の診断を受けました

色々と見聞きしていく内に痛感したのは「何処でもやっていける人は居ない」という事です

先生、知ってたでしょう?

まして、私みたいな少数派は尚更です

先生が駅で私に伝えた言葉は

嘘だとわかりました

ですが

先生が付いた嘘の中身は

本物だと思っています

酷くわかりやすくて

酷く頼もしくて

酷く嬉しい

私の宝物です

そう、信じてくださり心から感謝いたします

敬具


酷く具合が悪い時

何かの不安で一杯な時

目を閉じ眠りに堕ちれずに

頭の中で走馬灯のように

強烈な感情を伴った時・人・場面の記憶が繰り返される

失敗や後悔や失望の渦中の中に

あの優しい嘘が混じっている

先生、本当にありがとうございます

少し怖い始めの1歩を踏み出す時

貴女の想いが私の味方

あとがき


先生の名前は伏せましたが、今でも覚えています

本当にね

「ふわっ」って笑ってくださってね

言われた瞬間はポカーンとしてしまって、言葉を飲み込んで意味が身体に入ってきて

去っていく後ろ姿に、慌てて「ありがとうございます!」って言葉を投げました

片手を挙げて答えてくださいました

「どんな人と出逢えるか」ってのは凄く大切だなあ、と思います

それが少しでも伝える事が出来たなら本望です


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?