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[小説] 記し

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自作小説その① お楽しみいただければ幸いです。
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#追憶

[小説] 記し

10年ぶりに高校の先生と再会する話。作中の沖田とokitaは無関係です。公開してから気づく。ど…

okita
2年前
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[小説] 記し #1

 こんなことで泣くな。泣く資格なんて、ない。 「走ってきます。」 負けた方はペナルティ…

okita
3年前
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[小説] 記し #2

 七月も終盤に差し掛かった土曜日の朝、スマホが鳴動した。画面には、見覚えのない番号が表示…

okita
3年前

[小説] 記し #3

 しばらく、背中を眺めていると、話を終えた彼は私のところに戻ってきた。振り向きざまに目が…

okita
3年前
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[小説] 記し #4

 まどろみから目を覚ます。正面に見える部屋の扉をただ見つめる。頭の中は、もやがかかったよ…

okita
3年前
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[小説] 記し #5

 八月十日がやってきた。今日は沖田を駅まで迎えに行くことになっている。沖田は、歩いて向か…

okita
3年前
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[小説] 記し #6

 もう着く、と言った彼の言葉通り、最後の会話から数分で学校に到着した。職員用の玄関で待っていると来客用のスリッパを持ってきてくれる。彼の案内に従って、職員室に入る。教員の数はまばらで、体育館や校庭からは、運動部が活動しているのであろう声が聞こえてくる。上の階からは、吹奏楽部の演奏も聞こえる。世間は夏休みだ。  「ここ、座ってて。」と言われるがままに、案内された椅子に腰かける。生徒との相談スペースのようだ。パーテーション等の仕切りはなく、長い机を挟んで椅子が数個並んでいる。

[小説] 記し #7

 一番後ろの席、問題を解いているはずの時間に、ぼーっとしている生徒が一人。視線を感じたの…

okita
3年前
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[小説] 記し #8

二〇X二年十二月二十日  昨日の放課後、先生に会った。さようならって挨拶して前を通り過ぎ…

okita
2年前

[小説] 記し #9

 沖田と共に、視聴覚室へと向かう。先ほどから感じる沖田への違和感。出会ったときから、かす…

okita
2年前
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[小説] 記し #10

「借りてきた猫でしたっけ?」 今日、職員室で沖田にかけた言葉だ。 「他は何か思いました?よ…

okita
2年前

[小説] 記し #11

 テニスコートは、校舎から少し離れた位置にある。今日も暑い。病的に肌の白い彼女を見ている…

okita
2年前

[小説] 記し #12

倒れこんで、どのくらい経ったのだろうか。今日はよく蒸す。佐伯さんをつき合わせていることが…

okita
2年前

[小説] 記し #13

 「佐伯さん、よくここで、私と会いませんでしたか?」 彼女は、俺に向かって問いかけた。突然の問いかけに面食らう。十年も前の話だ。正直、どこで何の会話をしていたかなんて覚えていない。そんな俺の思考を知ってか知らずか、彼女は話を続けた。 「今日、案内してもらって分かりました。ここ、佐伯さんが言ったように私のクラスからだと移動教室の遠回りなんですよ」 突然の告白に俺は顔をしかめる。さっき、俺が言ったことを、わざわざ繰り返す意味も分からない。 「先ほどの地学室、日本史の授業の教室だっ