[小説] 記し #13
「佐伯さん、よくここで、私と会いませんでしたか?」
彼女は、俺に向かって問いかけた。突然の問いかけに面食らう。十年も前の話だ。正直、どこで何の会話をしていたかなんて覚えていない。そんな俺の思考を知ってか知らずか、彼女は話を続けた。
「今日、案内してもらって分かりました。ここ、佐伯さんが言ったように私のクラスからだと移動教室の遠回りなんですよ」
突然の告白に俺は顔をしかめる。さっき、俺が言ったことを、わざわざ繰り返す意味も分からない。
「先ほどの地学室、日本史の授業の教室だっ