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短歌

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【短歌】愁恋歌

【短歌】愁恋歌

遥か遠くに見える空は
どこまでも高く青いはずなのに

彼女の踏みしめる土は
水を含んでしっとりと柔らかい。

しとしとと降り止まぬ霧雨は
艶やかな黒髪をさらに深く濃く沈めてゆく。

漆黒の髪に包まれた、雪のように白い肌。

紅色のもみじや山吹色の銀杏が鮮やかな木々の中に
彩を失った世界がひとつ。

頬を伝う雫は
鮮やかな風景を反射するばかりで
決して彼女を同じ色に染めてはくれない。

彼女の頬を紅

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【短歌】夏の想ひ出

【短歌】夏の想ひ出

灯火か 儚い夜に 散る蛍
火照る頬にも 夏はありけり

先日友人たちと箱根温泉へ訪れた時に、詠んだものです。

ちょうど前日から蛍の鑑賞会が開催されているとのことだったので、温泉を楽しんだ後、鑑賞会に参加することに。

会場の門をくぐると明かりは殆どなく、
蛍の光だけが闇夜を照らす。

暗闇の中で、たくさんの蛍がぼうっと光っている様は
とても美しく、また灯火のように儚いものでした。

そして美しい

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【短歌】ハレトケ

【短歌】ハレトケ

デパートの地下一階には、所狭しと華やかなお菓子たちが立ち並ぶ。

クリームたっぷりのケーキにカラフルなマカロン、キラキラのゼリーに様々な形のチョコレート。

どのお菓子も極彩色の包みを身にまとい、私を選んでちょうだいとばかりにショーケースに肩を並べる。

ハレの日にぴったりの、甘くて可愛い贈り物。

そんなお菓子たちに目移りしながらフロアをぐるぐると周り、三周目に差し掛かろうとしたその時。

レジ

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【短歌】月の短歌 / セーラームーンのダンス 〜ダンスにおけるフォーメーションの重要性〜

【短歌】月の短歌 / セーラームーンのダンス 〜ダンスにおけるフォーメーションの重要性〜

十五夜の夜をイメージした短歌です。

月の真ん中(十五夜)には、月に住むうさぎたちが、皆が食べるお餅を懸命についている姿を見ることができます。

ただ新月や三日月、半月など月が欠けている時というのは、うさぎの姿が完全には見えていません。

そういったときには、実は皆が見ていないところで、こっそり隠れて自分がついたお餅を食べているのかしら?なんて考えてみたり。

***

月と聞いてふと思い出したの

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【短歌】えんとつ町のプペル

【短歌】えんとつ町のプペル

七夕の 見上げる空に 厚い雲
無煙火薬が 欲しくなる夜

今月7日は七夕でしたね。
七夕といえば天の川ですが、毎年七夕の夜は空が曇っていて、天の川を見ることができないような気がします。

今年も案の定曇り空を見上げるばかりの夜でしたが、
そのときふと、ミュージカル「えんとつ町のプペル」に登場していた無煙火薬を思い出し、それで厚い雲を吹き飛ばして、美しい天の川が見られたら良いのになあ、と思ったのでし

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