エコノミークラスの中のファーストクラス
我々がオランダに移住するフライトではエコノミークラスにプラス7千円を支払って、普通のエコノミーよりも10センチ前後に広い席を確保した。
それでも狭い。
ましてやオランダ人にとってはかなり狭い。
そんな中で13時間という長い時間を3歳に満たない娘が泣き出したりしないように、我々はあらかじめスマホにKindleで絵本をダウンロードしたり、ラップトップにAmazon primeの動画を保存したり、好きなお菓子を用意するなどの準備を整えていた。
右斜め前には身長190センチ、体重120キロはあるだろうというかなり恵まれた体格のオランダ人男性が前席に挟まれるように座っていた。身体が大きいというのもスポーツでなどでは有利だがデメリットもあるものだ。
また我々の真横には50代のオランダ人夫婦と思われるカップルが真ん中のシートを空ける形で並んで座っていた。
このカップルについて、我々は終始妄想を巡らせる事となった。
何故かというと、食事の際にはシャンパンボトルが運ばれ、CAさんがサーブする。食事後にはハーゲンダッツが提供される。
ん?我々はせいぜいビールかコーラかオレンジジュースなのに何故シャンパン?ハーゲンダッツなんて勿論出てこない。
ここはあくまでエコノミークラスだ。
なぜそんなラグジュアリーなサービスが。。。
おまけに高級感ある陶器のようなものまでプレゼントとして受け取ってる。
私と妻の妄想は止まらない。
「皇族かなー?」
「いや、皇族はそもそもファーストクラスに乗るやろ」
「監査機関の職員かな〜?」
「シャンパン飲んで監査しないだろうし、それ賄賂やろ」
「本当はファーストクラスかビジネスに席を予約してたけど、他の乗客が具合わるくなって席を譲ったとか?」
「あり得るけど2人とも席ゆずるかな?」
そんな話をしている最中も取っ替え引っ替えCAさんが挨拶に来る。
どんなVIPというのか。
ついにはCAのボスみたいな貫禄あるおじさんまで挨拶にきた。
いったいどういう事なのだ。
更には2人揃って3時間くらい席を離れたこともあった。
どこで何してるのだろう。
トイレにしては長いではないか。
それは着陸前のことだった。ついに謎は解けた。
妻がこう言った、「あのCAさんのご両親なのね、あのCAさん何度も席にきてるし、お父さんだからあんなに親しく喋ってるんでしょ。それにお顔が似てる」。
なるほど。ガッテン。
だから仲間のCAも挨拶に来てたって訳か。
3時間くらい席を離れていた間はコクピットでも案内してもらっていたのかもしれない。
シャンパンや陶器は娘やその同僚からの差し入れだろう。
KLMで日本に旅行にきて、実際に娘が乗務員として搭乗するフライトで帰路に着く。
なんかいい話じゃないか。
自分達の娘のアテンドで空の旅。
たまたま隣にすわっだけのこちらも胸熱の展開だ。
まさにあのご両親にとっては最高のファーストクラスクラスでの旅だったに違いない。
あー、お仕事したい。