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音楽のおかげで思い出の彩度が上がっている気がする


イヤホンをなくしてしまった。

いつも身につけていた相棒みたいなもの。
というか、相棒だったな。
社会人になるタイミングで「せっかくなら」と購入したもので、どこに行く時も何をする時もすべてを共にしてきた。


社会人になった日、4月1日。
初出社の道中で聴いたスピッツの「春の歌」
ビル風で桜の花びらが舞っていた。トレンチコートだとまだ少し寒かった。こんな時にこんな曲なんてドラマの主人公気取りじゃんって、心の中で少し笑った気がする。顔を上げるとスーツを着た大人たちが足早に歩いていた。今日から私も大人だ。置いていかれないようにと、期待と不安を胸に早歩きでオフィス街を歩いた。



営業時代の商談帰りには、
ザ・マスミサイルの「人のため」をよく聴いた。
何が正解かわからない。何のためかわからない。
自分本意になってない?どう頑張るのが正解?わからなくてもやるしかない。
”「頑張れ」とか言わなくても おまえはもう充分頑張ってるよな”
電車に揺られながら、何度も涙を堪えた。


仕事をやめて何もなくなった夏、鎌倉の海沿いを散歩しながらフジファブリックの「若者のすべて」を聴いた。
何も考えられない、何も聴きたくないとさえ思っていた私の耳に優しく響くメロディーと歌声が心地よかった。
これからどうしようね、ぼんやり思いながら何度もリピートした。


前に、大学時代の友人と「あいみょんの『ハルノヒ』を聴くのが辛い」という話で盛り上がったことがある。

ちょうど、就活の時期に流行っていた曲。
あの歌を聴くと、あの頃を嫌でも思い出すのだ。
リクルートスーツで歩き回ったオフィス街の景色。
面接前の時間潰しで入った淀屋橋のスタバの匂い。
夜行バスを降りた早朝の東京駅で食べた朝マックの味。
未来がわからなくて不安だった毎日。

"どんな未来がこちらを覗いてるかな"

妙に自分と重なる歌詞に縋るような思いで聴いていたのは私だけじゃなかったらしく、全然悲しい歌なんかじゃないのになぜか今聴いても辛い…という話で大いに盛り上がった。




なんだかどれもこれも、その時々の自分の主題歌みたいだなって思った。
Love so sweetのイントロが流れれば花男を思い出す、みたいな。

音楽を聴かなくても困ることはないけど、
音楽がある方が思い出の彩度が上がる気がする。
歌ひとつでその当時の気持ちや、景色や、匂いまで
鮮明によみがえるもんだから、不思議だなぁって思う。



今クールの私の主題歌は何になるのか。
数年後、今日の気持ちを思い出しながら聴くのが楽しみだな。

早く新しいイヤホン買わないとね。




p.s. ヘッダーは、紛失した私の相棒です……

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