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#11 山梨県にある「ややこしい市」の見分けかた

はじめに


『J NOTE』第11回は、山梨県を取り上げます。

山梨県は甲信越地方に属する、人口およそ80万人の県です。果物の生産量は全国トップクラスであり、ぶどうや桃は全国一の生産量を誇っています。

また首都圏に近い立地から、富士五湖周辺や清里などには別荘地が広がっており、近年はグランピング施設が県内各地で整備されているなど、リゾート開発も盛んに行われている県であるといえます。

そんな山梨県にはあまり良くない特徴があります。それは、私のように山梨に土地勘がない人間からすると、市名をみても県のどの辺りにあるのかが見当が付きにくいことです。

下の図1は、山梨県の大まかな位置関係を表したものです。

図1:山梨県の大まかな位置関係
(白地図は白地図専門店のフリー素材を使用し、鉄道や高速道路などは筆者が加筆したもの。)
黒線は鉄道、橙線は高速道路、黄緑線は県境を表している。

図1をみると、山梨県には「甲府市」「甲州市」「甲斐市」など似たような市名が多いことがわかります。また、県名と同じ山梨市があることで、山梨県の県庁所在地を山梨市だと勘違いしてしまう人も一定数います。

それらに加えて、

・方角を名前に冠した市町村が、南アルプス市と北杜市しかない
10万人を超える大きな街がない
駅名やインター名が、市の名前と一致しない所が多い
多くの市町村の名産品が「ぶどう」と「桃」なので、街ごとの特色が分かりにくい

(山梨県民の方々、少々キツい言い方をしてしまい大変申し訳ございません・・・)

なども、山梨県内の市町村が分かりにくい原因なのではないかと私は考えています。

表1:山梨県に所在するJRの駅・高速道路のインターチェンジ一覧
スマートは、スマートインターチェンジのことをさす。

そこで今回の『J NOTE』では、山梨県の中でも分かりにくいであろう市をピックアップします。そして、それぞれの市の特徴について詳しく見ていきたいと思います。

山梨県にある「市」の見分けかた

①甲府市 ―光り輝く宝石の街―

まずは、山梨県の県庁所在地である甲府市について見ていきます。

甲府市は人口18.8万人の市です。おおよそ山梨県の真ん中にあり、名実ともに山梨県の経済や物流の中心地となっています。

そんな甲府市は、日本随一の宝石の街としても知られています。市の北部にある金峰山(きんぷさん)では昔から水晶が採れることから、宝石を加工販売する業者や宝石販売店が市内に数多く立地しています。そのため、甲府市は採掘から販売までジュエリー作りの工程すべてが市内で完結するという珍しい街であるといえます。

また、宝石の加工について学ぶことができる日本唯一の学校「山梨県立宝石美術専門学校」が市内に所在し、付属の施設として「山梨ジュエリーミュージアム」が設置されています。そのため、甲府は名実ともに宝石の街であるといえます。

甲府市では宝石を生かした観光振興に取り組んでおり、「こうふジュエリーマップ」の配布や、ふるさと納税返礼品にダイヤのネックレスのリストアップするなど、様々な事業に取り組んでいます。

このように、甲府市では宝石を用いた観光振興に取り組んでおり、他の市町村と差別化した観光に挑戦しているといえます。

②山梨市 ―数多くの名山を抱える街―

山梨市は人口3.2万人の市です。甲府市の東側に隣接しています。

山梨市は景勝地として知られる「西沢渓谷」や、日の出を見ながら入浴できる「ほったらかし温泉」、ピクニックやバーベキューを楽しむことができる「山梨県笛吹川フルーツ公園」など、多数の観光スポットを有しています。

そんな山梨市には、多くの名山が市内に立地しています。埼玉県と長野県にまたがっている「甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)」や、標高2,592mと高い山ながら初心者でも登りやすい「国師ヶ岳」、奥秩父最高峰の「北奥千丈岳」などの山々が市内北部を連なっています。

山梨市観光協会では、ホームページやSNS、YouTubeを用いて観光情報を積極的に配信しています。観光に関するコンテンツは非常に充実しており、ホームページやSNSを見るだけでも山梨市の魅力を存分に感じることができます。

このように、山梨市は数々のアウトドアを楽しむことができる市であり、観光振興活動にも積極的に力を入れているといえます。

③甲州市 ―日本一のワインの聖地―

甲州市は人口2.8万人の市です。甲府市には隣接しておらず、甲府盆地の東端にある市です。東京方面から来ると、笹子トンネルを抜けて甲府盆地に出た最初の街が甲州市となります。

そんな甲州市は、日本一のワイナリーの街として知られています。1877年、勝沼地区に日本で初めてワインを取り扱う「大日本山梨葡萄酒会社」が設立され、以来145年間この地でワインが作られ続けています。現在では甲州市内に、45のワイナリーが所在しています。

甲州市では、ワインを用いた観光振興にかねてから力を入れています。1975年に当時の勝沼町がレストランや宿泊施設を完備した「ぶどうの丘センター」をオープンさせると、1981年に当時のJR勝沼駅にアンテナショップの開設、1985年にはぶどうの丘センター内にワインの地下貯蔵庫と試飲施設を開設など、様々なワインに関する施設をオープンさせてきました。

そして1993年には、JR勝沼駅を勝沼ぶどう郷駅に改称するなど、先進的な地域活性化事業に街を挙げて取り組んできました。

現在も甲州市ではワインを用いた地域振興が続けられており、ふるさと納税の返礼品事業やイベント事業などでワインが活用されています。

④甲斐市 ―甲州ワインビーフの街―

甲斐市は人口7.5万人の市です。甲府市の西側に隣接しており、県内でも2番目に人口が多い県内有数のベッドタウンです。

山梨県では近年、畜産物の生産量が減少傾向となっており、ブランドマーケティングによって畜産業の振興に力を入れています。そこで、甲斐市では現在「甲州ワインビーフ」を売り出しています。

甲州ワインビーフは、市内北部の山あいに所在する小林牧場で育てられています。小林牧場では、ワインの絞り粕を使った飼料を牛に与えており、その飼料の効果によって牛肉の臭みを抑えてかつ赤身が柔らかい牛が育っています。

甲州ワインビーフは、甲斐市のふるさと納税の返礼品にも選ばれており、JA全農やまなしでも県のブランド牛として紹介されています。また、小林牧場の直売センター美郷では精肉のほかにも、「甲州ワインビーフカレー」や「甲州ワインビーフシチュー」のレトルトが販売されています。

⑤中央市 ―子育てしやすい福祉の街―

中央市は人口3.1万人の市です。甲府市の南側に隣接しています。

中央市内には、洋菓子メーカーのシャトレーゼ豊富工場や、「よっちゃんイカ」で有名なよっちゃん食品工業の本社工場など、多くの製造メーカーが拠点を置いています。また、山梨大学医学部のキャンパスが立地していることから、学生の流入も多い市となっています。

そんな中央市は、子育て政策に力を入れています。中央市では「ちゅうおうし子育てアプリ」をリリースし、子育て支援情報や健康診断の情報などを配信しています。また、市による子ども医療費の助成は18歳まで対象であり、英語検定料の助成制度やベビークーポンの配布などの事業を行っています。

さらに、2022年4月には玉穂地区に「中央市子育て支援センター」が新たにオープンしました。子供が遊ぶことができるプレイルームやおやつタイムに利用できるランチコーナーなどが完備されています。

このように、中央市は子育てに関する環境が整備されていることから、県内でもトップクラスに住みやすい街として認知されています。そのため街の人気も高く、今後も発展が期待される街であるといえます。

おわりに

ここまで、山梨県にある市の中から5市をピックアップして取り上げました。山梨県には似たような市がたくさん所在していますが、それぞれの市に個性があり、その地域の特性を生かした様々な地域振興に取り組んでいることが分かりました。

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