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学習の科学_by Stephen M. Kosslyn

壇上で教授1人が延々喋り、学生はずっとスマホをいじっているような授業に意味はない。では、科学的な学習とはどうあるべきか?についてのメモ。進度に応じたクラス構成、反転学習、教師の役割再定義、学生同士のディスカッションなど、うまくデザインすれば活用できそう。

「学習の科学」筆者は学ぶこと(learning)を情報の獲得と定義し、覚えること(memory)を記憶から取り出して活用するプロセスと位置付ける
また学習には科学的な原則(principals)があり、それをうまく使うことで「学生が意図しなくても学びは生まれる」「経験によってより深く身につけられる」「異なる文脈や場面で使うことができるようになる」と述べる。

科学的な学習の基礎は"Think it through"(考え抜け)と、”Make and use associations”(関連づけて活用せよ)に二分され、それぞれに原則がある。
(計16個)

■Think it through (考え抜け)

(7principals)
1. Evoking deep processing プロセスに深く集中せよ
2. Using desirable difficulty 適切な難易度で
3. Eliciting the generation effect 例示や説明など、情報を使うことで学べ
4. Engaging in deliberate practice 試行と修正のフィードバックが重要
5. Using interleaving 飽きるので他の種類もやれ
6. Inducing dual coding 言語や視覚など複数面から学べ
7.  Evoking emotion 感情を伴うと記憶に残るぞ
 

■Make and use associations(関連づけて活用せよ)

Structure information(情報を構造化せよ)
1. Promoting chunking 意味のあるカタマリをつくって覚えよ
2. Building on prior associations 既に知っているものと関連づけよ
3. Presenting foundational material first 基礎から始めて背骨をつくれ
4. Exploiting appropriate examples 適切な例を活用せよ
5. Relying on principles, not rote 丸暗記でなく原則を使え

Create rich retrieval cues(検索キーをリッチにして情報を呼び出せ)
1. Creating associative chaining ストーリーテリングが有効だ
2. Using spaced practice 忘却曲線があるので間隔を空けて学べ
3. Establishing different contexts 別文脈での学びを大切にせよ
4. Avoiding interference バイアスに邪魔されるな

■反転学習(flipped learning)とアクティブラーニング


反転学習とは、生徒は授業前に動画や教材で知識を習得し、授業の時間を利用して仲間や教師とのやりとりを通して概念やアイデアを実践し適用する。授業後には、授業中に受けたフィードバックを振り返り、さらに学習を進めるためにそれを活用するという形式のこと。

また、アクティブラーニングとは「学生にある物事を行わせ、行っている物事について考えさせること」と定義され(Bonwell & Eison, 1991)、

その中では、以下のような活動があるとされている。
 (a) 学生は、授業を聴く以上の関わりをしていること
 (b) 情報の伝達より学生のスキルの育成に重きが置かれていること
 (c) 学生は高次の思考(分析、総合、評価)に関わっていること
 (d) 学生は活動(例:読む、議論する、書く)に関与していること
 (e) 学生が自分自身の態度や価値観を探究することに重きが置かれていること
 (f) 認知プロセスの外化※を伴うこと
  ※ 問題解決のために知識を使ったり人に話したり書いたり発表すること

反転学習は必然的にアクティブラーニング形式を必要とする。
授業が情報の伝達の場ではなく、事前に学んだ情報に基づいて議論をする場となる。そこでは、必然的に「情報の吸収」ではなくて、「得た情報を使って交流する、そのことで深い学びを得る」ことになる。

ここでは教師の役割は再定義される必要があり、それはTeachingからFacilitaionへの移行である(実務的には、完全な移行ではなく、時と場合に応じて使い分ける)。1コマの中で、教師が話す割合は全体の20%程度という形になるだろう。

必要なのは、スキルというよりマインドセットなのかもしれない。
Teachingのときは、教師がその科目自体のエキスパートである必要があり、学びは個別のもの(教師対各学生)だったのに対して、Facilitaionのときの教師は「学習プロセスのエキスパート」になっていく。必ずしもその科目自体を熟知していなくても、学びを促す場の作り方、科学的な学習を促進させる役割を務めることができる(これはこれで専門職なのだが)。学校における新しい教師の育成にもっと予算があれば、一緒に協働しながら、うまく社会実装できると思うのだが。。

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