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あの子も私も、あの人も。誰もがみんな主人公。

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あの子も私も、あの人も。誰もがみんな主人公。

マガジン

  • doramatic

    何気ない日常も、当たり前みたいな日常も、どんな瞬間だって、きっとドラマチックなんだろう。

  • ベルベット・ヘイズ

    心地よくて、形が無くて、それでもいいと思ってた。

  • envy

    誰もが羨む気持ちをお腹の奥底にしまい込んでいる。

最近の記事

blue sky,fresh

・・・ 眩しい青い空の下、体中に日差しを浴びる。初夏のからりとした爽やかな風がTシャツの隙間を吹き抜けていく。 大袈裟かもしれないけれど、 ああ生きている、そんな心地がした。 うっすらと滲む汗でさえ、 なんだか今日だけは、綺麗に見えた。 太陽の眩しさに目を細め、新緑を視界の隅で捉える。梅雨明けはまだしていないはずだけれど、夏のシーズン到来、そんな言葉が似合う陽気だった。今すぐ駆け出して海に飛び込みたい。思いっきり水を浴びたい。そんな気分だった。 手の中で水滴だらけと

    • ▪️chapter.5

      ・・・ 『ごめん、仕事まだかかりそう』と、流れるようにフリック入力をする。仕事の忙しさのせいだと思いたいが、若干の面倒臭さを感じる。仕事が終わったら少し時間ある?と来たのは今日の昼頃だった。 『大丈夫!仕事終わったら連絡して!』と数秒後に返事が来て、なんとなく気持ちが滅入った。どう考えても優しい相手の思いやりを、どうしてストレートに受け入れられないのだろう。私の言う『仕事まだかかりそう』は、だからもう今日はやめておこうの返事を期待しているものだった。 けれど彼は、私が仕

      • good bye,baby

        「引越しするんだよね、俺」 ふーん、とハゲたネイルを塗り直しながら、短く返事する。相手の顔は見ていない。真っ黒なネイルカラーが爪の上で鈍く光っているのを、ただ見つめていた。顔なんて、見れなかった。 「どこ引っ越すの?」 ようやく視線を向けた頃、その人はスマホをいじっていて、いつものことだというのに、酷く距離を感じてしまう。同じ沿線上にない駅名にある新居は、今の家よりさらに広いらしい。 それって新しい女ができたから?とか、真剣に付き合う女ができたから?とか、嫌なことばか

        • ▪️chapter.4

          ・・・ 「記念に撮影しておこうよ」 彼は、脇腹のタトゥーをなぞりながら、名案だとでも言うようにパッとベッドから身体を起こしてフィルムカメラを手に取った。 「いや、恥ずかしいからいいって」 「ファーストタトゥーだよ?思い出に残しておこうよ」 はい、そこ立って。と、裸の私を鏡の前に導いた。画角を確認する様子は、至って真剣で、恥ずかしがっている私の方が恥ずかしくなってきた。 作品として撮影をしようとする彼に失礼に思えて、胸を隠していた手を退けた。 「うん、良い感じ」

        blue sky,fresh

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        記事

          ▪️chapter.3

          ・・・ 何かが変わるかと思った。 きっと私の母が知ったら、怒るというよりショックを受けてしまうんじゃないだろうかと考えると、なかなか決断するまでに堂々巡りを繰り返した。けれど、これは自分へのケジメでもあり、決意でもあった。 私の人生は私のもの。 主役になるのも脇役になるのも自分次第。  そう言われてハッとしたあの時。 自分は自分で脇役に徹していたけれど、私を主役にしたストーリーがあってもといいかもしれないと思えたその瞬間。 「じゃあ行きますね〜」 前髪だけは金髪で

          ▪️chapter.3

          ▪️chapter.2

          ・・・ 気がつけば3年という月日が経っていた。 知り合った頃のあの人はギリギリ20代で、私はギリギリ20代前半だった。こんなにも一年経つのって早いんだね、と1ヶ月振りの背中に問うた。 コーヒー豆を挽きながら、確かにね、と言ったあの人の気持ちというのは、私には怖くて聞けないままだった。 マップを見なくても覚えたこの家と、緊張することなく玄関の扉を開けられるようになって、おかえりと言われるこの空気感を、私はまだ手放したくなかった。私はこうしてまた一年を過ごしてしまうんだろ

          ▪️chapter.2

          ■chapter.???

          ・・・ 輪郭のない、 掴めそうで指の間からすり抜けていくそれは、 あまりにも淡くて悲しい。 それでもいいと思ったのも私で、 それ以上を望んでしまったのも私だ。 何もかもが、 いつか幻のように突然消えてなくなってしまうのも時間の問題なんだろう。 紫煙のように、 ゆらゆらと甘美なそれは。 今だけは何もかも、 煙のような幻の中にいたい。 ありがとう。ごめんね。 愛って何なのか、私には分からない。 #創作大賞2023 #恋愛小説部門 #小説 #創作小説

          ■chapter.???

          ■chapter.1

          ・・・ 華やかな余韻が残る夜道は、対照的に私をひどく感傷的にさせた。 孤独な夜とは裏腹に、今日も眠らない街の明かりは、私を安心させる。けれど、何故か一層寂しく思わせた。 久しぶりに履いたルブタンのヒールのせいか、脚はとっくに悲鳴をあげていて、ガードレールに腰掛けながら、脱ぎ捨てるみたいに圧迫されていた脚を解放する。 12センチ上だった視界は、ストンと12センチ下へと落ちる。ストッキング越しに感じるアスファルトから、ゴツゴツとした感触が痛い程伝わってきて、地面を踏み締め

          ■chapter.1

          master and apprentice

          圧倒的な世界観に、誰もが息を呑んだ。 全てがスローモーションのようで、なんなら時が止まったかのような錯覚に陥る。超満員の会場の中にいるはずなのに、わたしだけが会場にいるかのような、爆音のBGMの中にいるのに、全てが無音のような、まるでそんな様。 誰よりも美を求め、ストイックに美しさとは何かを追求してきた貴方。美しさに性別はないと身をもって体現してくれている貴方。女性的な美的感覚と、男性的な美的感覚。それは、似て非なるものであって、けれど感覚は限りなく近しいものだと思う。

          master and apprentice

          sweet,and sweet

          「僕に手作りチョコレートとかやめてよね?」 マロンベージュの髪色に肌荒れ一つない端正な顔を持つ男が、至極当然のことのようにさらりと言い放つ。それに対して腹を立てる気も起こらないのは、この男が世界でも注目される若手ショコラティエだからだった。そう言われたってぐうの音も出ない。当たり前だ。 男の人特有の節くれだった指ではなく、細くて繊細な指先で作り出されるチョコレートは、単に美味しいと味わうためだけではなく、まるで宝石のように鑑賞すらも楽しめる一級品となる。 「とはいえ、こ

          sweet,and sweet

          not/good

           きっと大嫌いと大好きは紙一重なんだろう。  最低で、クズで、どこまでも自分勝手なその人は、どうしようもなく私を振り回す。その度に裏切られて、傷ついて、大嫌いだと何度も思うのに、その人があまりにも優しく抱きしめてくれるものだから、それだけでまた、私はあなたに期待してしまう大馬鹿者になってしまった。  指先を絡めて、互いの視線が絡んで、その先にある感情は一体何なんだろう。まつ毛が触れ合う距離で小さく心の中で問うた。  答えは、何度考えたって分からない。そうやって今日もまた

          not/good

          night escape

          逃げよ?  緩くパーマのかかった黒髪の隙間から、いたずらっ子みたいな目を覗かせた君が笑って言った。まるでそれが当たり前みたいに、ごく自然に手を取って、ハリボテのお城みたいな店内を駆け出した。  積み上がるシャンパンタワーを崩し、各テーブルに置かれた鮮やかなフルーツの盛り合わせから一つずつフルーツを摘む。  jimmychooのピンヒールが照明に乱反射する。馬鹿みたいに大きいシャンデリアには別れを告げ、滑らかなマットブラックのソファには、アイスピックを突き刺した。全部大っ嫌

          night escape

          tightrope

           目に見えない透明なロープの上を、恐る恐るバランスを崩さないように進む。誰に渡されているのかも分からないまま、振り返ることのできない綱渡りをしている。ただひたすらに。我武者羅に。  この先に一体何が待ち受けているのかも、一体何から追われているのかも分からないまま。  少しでも立ち止まってしまえば、底の見えない闇の中へと、あっという間に吸い込まれてしまいそうで。  ゆらゆらと右に左に揺れながら、どうにかここまでやってきたけれど、ここが真ん中なのか、まだスタートから数メートルな

          tightrope